口永良部島噴火:全島民の生存を確認 70代男性やけど

毎日新聞 2015年05月29日 13時12分(最終更新 05月29日 13時27分)

新岳が噴火した口永良部島からヘリコプターで搬送される島民=鹿児島県屋久島町の口永良部島で2015年5月29日午後0時44分、本社ヘリから須賀川理撮影
新岳が噴火した口永良部島からヘリコプターで搬送される島民=鹿児島県屋久島町の口永良部島で2015年5月29日午後0時44分、本社ヘリから須賀川理撮影

 気象庁は29日、鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)(屋久島町)の新岳(しんだけ)(標高626メートル)が同日午前9時59分に爆発的噴火をしたと発表した。噴火に伴って火砕流が発生し、一部が海岸まで到達。気象庁は午前10時7分、同島に噴火警報を発令し、火山の活動状況を5段階で表す噴火警戒レベルを3(入山規制)から5(避難)に引き上げた。屋久島町は同10時20分、82世帯137人の全島民に島外への避難指示を出し、町によると、島民全員の生存が確認された。海上保安庁によると、70代の男性がやけどをした。

 気象庁によると、噴火警戒レベルで最高の5が発令されたのは、気象庁が2007年12月に制度を導入して以来初めて。

 火砕流は新岳の南西側から北西側の向江浜地区にかけての海岸に達した。噴煙は火口から9000メートル以上上がり、周辺に噴石が飛散。火山灰は屋久島がある南東方向に流れ、降灰予報では口永良部島で多量(厚さ1ミリ以上)、屋久島でやや多量(0.1ミリ以上1ミリ未満)と予想されている。

 噴火の種類などについて、同庁火山課の北川貞之課長は記者会見で、詳細は不明としつつ「規模の大きさから言って(マグマの熱で温められた地下水が気化して噴き出す)水蒸気噴火ではなく、1966年の噴火(マグマ噴火)と同じ程度」と説明。今後については「直ちに大規模な噴火が起こる兆候はないが、爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火が今後発生する可能性はある。厳重に警戒してほしい」と述べた。

 政府は午前10時7分、首相官邸内危機管理センターに官邸対策室を設置した。安倍晋三首相は、早急に被害状況を把握▽地方自治体と連携し、早急な避難住民らの安全確保▽火山の観測を強化し、住民らへ適時的確な情報を提供−−を指示。首相官邸で記者団に対し「海上保安庁の船舶と自衛隊のヘリが島に向かっている。全ての力を総動員して島民の安全確保に全力を挙げる」と述べ、赤沢亮正副内閣相を長とする政府調査団を現地に派遣することを明らかにした。

 また、菅義偉官房長官は記者団に「10時35分現在、人的被害がないことを確認した。住民137人のうち120人が避難所に既に避難している」と語った。

 口永良部島は約12キロ離れた屋久島との間に町営のフェリーが就航しており、屋久島町が住民の避難準備を進めている。フェリーには150人程度乗船できる。町と鹿児島県はそれぞれ災害対策本部を設置した。

 また、海上保安庁は巡視船など19隻を島周辺に派遣しており、午前11時50分ごろに測量船「(拓洋たくよう」が島の本村港沖に到着した。直接接岸できないため、小型船を港に向かわせて島民を拓洋まで運び、避難させる。午後0時半ごろには大型巡視船「さつま」も島の付近に到着した。また正午過ぎ、ヘリコプターから海保の機動救難士2人が、島の北西部の高台に設けられた一時避難所付近に降下。被害状況などを確認している。

 一方、国土交通省は、噴煙が1万メートル近くに達することから、付近を飛行する航空機に航空情報を流し、注意を促した。

 島では3月末に、夜間に高温のガスなどが噴煙や雲に映って赤く光っているように見える「火映現象」が観測された。火山性地震も時折発生し、今月23日には震度3を観測する地震があった。【内田久光、狩野智彦、松本惇】

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