2015年5月30日01時56分
鹿児島県屋久島町口永良部(くちのえらぶ)島の新岳(しんだけ)(標高626メートル)で29日午前に起きた爆発的な噴火で、島にいた住民ら137人はフェリーや防災ヘリ、海上保安庁の巡視船などで東に約12キロ離れた屋久島に全員避難した。気象庁は「今後も爆発力が強く、規模の大きい噴火の可能性はある」としており、先行きは見通せない。同日午後の政府の災害対策会議では、避難生活の長期化も念頭に置いた対策を確認した。
噴火が起きたのは29日午前9時59分。気象庁によると、爆発的噴火は約5分間続いた。新岳の火口から火砕流がほぼ全方位に流れ、北西の斜面では火砕流の勢いで木がなぎ倒されていた。谷筋を伝って、火口から北西に約2キロ離れた向江浜(むかえはま)地区の海岸まで一気に達したと見られる。火口付近では火山灰が降り積もり、直径50センチから1メートルほどの噴石が確認された。噴煙は一時高さ9千メートル以上まであがった。同日夜も噴火が続いており、噴煙が火口から1千メートルほどの高さまで上がっている。
屋久島町は噴火から約20分後の午前10時20分、口永良部島全島に島外避難を指示した。島は面積約36平方キロメートルの火山島。爆発的な噴火があった当時、島内にいたのは住民ら137人。総務省消防庁のまとめでは、125人が町営フェリーで、6人が海上保安庁の巡視船で、やけどを負った70代の男性ら3人が鹿児島県防災ヘリで、3人が自分の船で、それぞれ屋久島に向かった。午後5時半すぎ、町営フェリーが屋久島に到着、住民らは車やバスで公民館など3カ所の避難所に向かった。
口永良部島最大集落の本村地区に住む日高由美さん(36)は、必要な荷物をリュックに詰めフェリーに乗った。「いつ戻れるか心配。電気は2日間ぐらいもつと聞いたが、冷凍庫に食べ物もまだ残っている。家や、お墓のことも気がかりです」と話した。
気象庁は爆発的な噴火があったとして、新岳の噴火警報を発表。噴火警戒レベルを5段階のうち「レベル3」(入山規制)から「レベル5」(避難)に引き上げた。5への引き上げは、2007年12月にレベルが導入されて以来初めて。
警察庁などによると家屋の被害は確認されていない。新岳は昨夏34年ぶりに噴火し、気象庁は警戒レベルを1(平常)から3に引き上げた。島の約半数の住民が一時、島外に自主避難した。今年に入り、新岳から放出される火山ガスが急増。福岡管区気象台は2月、火口から半径2キロへの噴石の飛散や火砕流が発生する可能性があるとし、注意を呼びかけていた。
気象庁によると、今回の噴火の前兆について、顕著な火山活動の高まりは観測されていなかったという。23日に火山性地震が一時的に増え、震度3の有感地震を1度観測したが、警戒レベルの引き上げは見送っていた。
29日午後開かれた政府の災害対策会議では、避難所の環境整備や仮設住宅の準備も含め、長期の避難生活に支障が出ないよう対応することを申し合わせた。
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