「地響き、足震えた」島民の声 口永良部島噴火 【夕刊記事】
西日本新聞 5月29日(金)13時4分配信
地響きを伴うごう音の直後、黒い噴煙が青空をみるみる覆い、高さ9千メートルにも達した。29日午前、鹿児島県屋久島町の口永(くちのえ)良部(らぶ)島の新岳で発生した爆発的噴火。「いつかくると思っていた」。全島避難の指示を受けた島民たちは空を見上げながら、屋久島に向かうフェリーを待つ避難場所に急いだ。全員の生存が確認された島民の救援に向け、自治体や海上保安庁、自衛隊などは対応に追われた。
【西日本新聞号外PDFあり】迫り来る噴煙画像
「『ドーン』という爆発音とともに地響きがした。地震かとも思ったが、短い時間だったのですぐに噴火とわかった」。火口から約3キロ、島中心部の本村にいた口永良部島漁業組合「漁振会」会長の峯苫(みねとま)健(たけし)さん(38)が外に出ると、噴煙が上空にたちこめ、影が広がっていったという。峯苫さんは消防車に乗り、町民に避難を呼び掛けた。
島内でガソリンスタンドを経営する畠豊二さん(66)は「本村の出張所で仕事をしていた。『ドーン』という爆発音とともに地響きがした。これまで聞いたことがないほどの音だった。村まで煙が来るのではないかと足が震えた」。
島内の防災放送は「町民全員、大至急避難してください」と繰り返しアナウンス。島民たちは車に相乗りし、島西部の番屋ケ峰の避難所などに向かった。
火口から約2キロに自宅がある自営業の関口浩さん(49)は、外で大工仕事をしていた時に噴火が起こり、慌てて自宅に戻った。「自宅に着いた時には庭や屋根は火山灰で真っ白になっていて、2ミリくらいの小さな石がひっきりなしに落ちてきた」という。窓ガラスなどは割れていなかった。
避難所に着くと、島民たちは比較的冷静だったが、断続的に噴火するたびに外に出て山の様子をうかがっているという。関口さんは「ついに噴火したと思った。いつ帰島できるか分からないが、(火砕流が向かったのが)人家の少ない南側でよかったと、みんなで話している」と語った。
本村地区の集落にいた消防団の久木山栄一さんは「風向きでこちらには火山灰は飛んできていない。噴火当時、畑にいたがバリバリとすごい音がし、一瞬でモクモクと煙が上がった」と話した。
島で漁師をしている阿部乃輔さん(36)は県外にいて難を逃れたが、「漁具も家財道具もすべて島に残したまま。(伊豆諸島の)三宅島のように何年も島に帰れなくなるのではないか。今後の生活がどうなるのか心配だ」。
海上保安庁は船艇約20隻を派遣した。午後1時現在、巡視船「さつま」など2隻が島に到着。搭載艇で島東部に避難している島民8人の救助に向かうという。県が災害派遣を要請した陸上自衛隊の西部方面総監部(熊本市)の幹部は「大型ヘリなどが救援活動に備えて行動している」と話した。
=2015/05/29付 西日本新聞夕刊=
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