工藤泰志 言論のNPO 「東京-北京フォーラム」は何を果たそうとしているのか?

2013年11月12日(火)
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この政府間外交のジレンマの根本には国民感情のナショナリズムに火がついてしまっている状況があるわけです。そのため、この状況を克服するためには民間の中から動きを始めなければならない、と思っているわけです。

それは、日中間の対立を軍事的なものにしない、平和というものを守り抜く、どんなことがあっても戦争を起こさない、というような冷静な議論が民間レベルで始まるということです。この議論が、目に見える形で動き出す必要があります。非常に不安定な状況の中で、民間レベルでこの状況をなんとかコントロールしようという冷静な議論が始まると、次にはアクションが始まります。

私は、今、そのようなアクションを起こす非常に大きな局面に来ているのではないかと思っていますし、世界もそれに注目していると実感しています。今回の対話の意味は、そのための冷静な議論をどうつくっていけばいいのか、ということなのだと思います。

しかし、言葉で言うのは簡単ですが、これが意外に難しいものです。私たちが今回やる両国の民間の対話は、「安全保障」「政治」「メディア」「経済」の4つのセッションを行い、それぞれの対話には各分野を代表する識者が参加します。

例えば、安全保障対話には人民解放軍の関係者、日本の自衛隊OB、政治家や、実際に外交を手掛けている人たちが、また、メディア対話では、日中両国のメディアの編集幹部がラウンドテーブル方式で本気で議論するわけです。

このフォーラムで議論を行う際、中国側と合意した3つの原則があります。1つ目は、「批判するための議論はしない」、次に、「政府の立場をただ反芻するような議論はしない」、最後に、「あくまでも課題解決に真剣に向かい合う」という3つの原則です。この合意があるからこそ、本音の真剣な議論ができるのではないか、と期待しているのです。

さまざまな困難を相対化し、冷静に考えるところから議論が始まる

特にメディア対話では、「ジャーナリズム・メディアは戦争というものを止めることができるのか」という究極の問いかけを、日本と中国のメディア関係者に問おうと思っています。

やはり、メディアの報道が過熱しすぎて、中国ではどうすれば相手に勝てるのか、というような軍事シミュレーションの企画などが当たり前のように放映されているようなこともあるようです。日中関係が不安定で、非常に緊張感ある状況の中で、どのような報道をすればいいのか、ということが問われている局面だと私は思います。この問いかけに対する答えを、メディア対話で議論します。

政治対話では日中両国の政治家が参加し、議論を行います。

今年は日中平和友好条約35周年ですが、その条約の第一条には、「どんな対立や紛争も軍事的な手段はとらず、平和的に解決する」と書かれています。第一条を現在の日中関係に照らし合わせると、今起こっている現象には疑問を感じざるを得ません。東シナ海での双方の威嚇が続く中、日中友好条約第一条の今日的意味を、もっと冷静になって問うていかなければいけないと思っています。

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