安保論戦:重要影響事態 「経済」のみで判断せず

毎日新聞 2015年05月29日 00時35分(最終更新 05月29日 01時43分)

衆院平和安全法制特別委員会で質問する公明党の北側一雄副代表=国会内で2015年5月28日午前9時43分、梅村直承撮影
衆院平和安全法制特別委員会で質問する公明党の北側一雄副代表=国会内で2015年5月28日午前9時43分、梅村直承撮影

 公明党の北側一雄副代表は28日の平和安全法制特別委員会で、戦争中の米軍など他国軍への後方支援が可能になる「重要影響事態」を、どういう基準で判断するか問いただした。

 政府は、朝鮮半島有事で米軍を後方支援するための周辺事態法を改正し、重要影響事態法案にすることを提案した。条文から「我が国周辺の地域」の文言が削除され、日本に重要な影響があれば、地理的制約なく世界中どこにでも自衛隊を派遣し、燃料補給や弾薬を提供することが可能になる。周辺事態法では支援対象は米軍だけだったが、重要影響事態法案では、米軍以外の他国軍への後方支援も可能とした。北側氏が、重要影響事態の適用基準を示すように求めたのは、条文に具体的な規定がなく、適用範囲が際限なく拡大することへの懸念が残るからだ。

 安倍晋三首相は、武力紛争の当事国の意思・能力や日本に戦禍が及ぶ可能性などを「総合して客観的、合理的に判断する」と答弁した。ただ、答弁が具体性に乏しかったことから、野党は重要影響事態にあたる局面をより具体的に説明するよう求めた。

 民主党の後藤祐一氏は、中東の産油国で軍事衝突が発生した場合が該当するかをたずねた。岸田文雄外相は「軍事的な観点がまったくなく、経済面のみの影響が存在することは想定していない」と答弁し、日本に与える影響が経済的なものにとどまる場合は、重要影響事態にあたらないとの見解を示した。

 維新の党の江田憲司氏は「具体的な事例で説明してほしい。(想定しているのは)マラッカ海峡か、南シナ海か、インド洋か」と重要影響事態の発生場所を問い詰めた。首相は、名指しこそ避けたものの「南シナ海においてある国が埋め立てをしている」と南シナ海に軍事施設を建設している中国に言及。「いざということに備えることは重要だ」と語り、南シナ海有事が適用対象になりうるとの考えを示した。【飼手勇介】

 ◇北側一雄氏(公明)

 「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態」(重要影響事態法案1条)とあるのは大事な要素だ。重要影響事態が際限なく広がることにはならないと理解している。どういう基準で判断するのか。

 ◇安倍晋三首相

 一概に述べることは困難だが判断要素について具体的に言えば、当事者の意思・能力、事態の発生場所、規模、米軍その他の外国軍隊の活動内容、我が国に戦禍が及ぶ可能性などから客観的、合理的に判断する。

 ◇周辺事態に関する政府統一見解(1999年)

 (1)日本周辺の地域において、武力紛争の発生が差し迫っている(2)武力紛争が発生した(3)停止したが秩序の回復・維持が達成されていない(4)ある国で内乱、内戦が発生し、国際的に拡大している(5)ある国で大量の避難民が発生し日本への流入の可能性が高まっている(6)ある国の行動が、国連安全保障理事会で侵略行為などと決定され、安保理決議で経済制裁の対象となる−−場合の6類型。

 周辺事態の原因となる具体例として示されたが、政府は重要影響事態にも、そのまま適用するとしている。

最新写真特集