東邦ガス環境写真展
2015年6月17日〜23日
ラシック
暮らし<コウちゃんのクラス 特別支援教育を考える> (中)連携
曇り空の朝。特別支援教育支援員の鎮目圭美(しずめたまみ)さん(30)が、車いすを押して富士松東小学校(愛知県刈谷市)の校庭に出てきた。 「コウちゃん、今日の天気はどうかな」 鎮目さんは、反応のない松本康汰君(11)の手のひらを、太陽(晴れ)、雲(曇り)、傘(雨)をかたどった三種類のクッションに押し当てた。「そう、曇りだねー、正解でーす」と大きな声でほめた。 触感を通してコミュニケーションの力を伸ばそうとする息の長い指導。支援員は、日常生活の介助や学習活動のサポートをする職員で、担任の深谷ひろみ教諭(57)との二人三脚で取り組んでいる。 日めくりカレンダーをはがすのもコウちゃんの役目だ。腕を引っ込める癖を利用して、手でカレンダーの端を握らせてはがす。コウちゃんは指示を理解してはいないが、「よくできたねー」とほめられる体験を重ねるうち、「アー」と返事をしたり、声をかけた人に目を向けるなど、周囲への関心が高まってきた。 コウちゃんとの学校生活は六年目となったが、「最初は途方にくれました」と深谷教諭は振り返る。重い脳性まひの子を指導するのは初めて。助けになったのは、肢体不自由の子の療育、教育のノウハウを持つひいらぎ特別支援学校(同県半田市)との連携だった。深谷教諭は三年間、毎月一回ずつコウちゃんと一緒に同校に通い、勉強してきた。同校の教師にもコウちゃんのクラスに来てもらい、かかわり方などのアドバイスをしてもらった。 脳性まひの子の運動機能を伸ばすには、正しい姿勢が重要だ。一年生のころから、首が傾かないようにするために、クッションや枕を使って練習。余計な力が入って体がそらないように、マットの上にうつぶせになって力を抜くリラクセーションに取り組んだ。 硬直していた手も、マッサージを続けるうちに、ボタンを押す動作が可能になった。三年生の時には、おもちゃに手を伸ばして触る行動が出た。食事では、固形物をかまずにのみ込む癖があったが、細かく切ったパンを奥歯の上に置くなどして、かむことを覚えた。 成長を土台に、他学級との交流も広がった。 今年二月の社会見学では、同級生たちと一緒に中日新聞社(名古屋市中区)を訪れ、新聞製作の現場を見て回った。この秋には京都・奈良への一泊の修学旅行がある。 深谷教諭は、特別支援校のサポートを受けることで、孤立感を持つことなく指導に取り組めたという。「この子は分かっている、できると信じることで、コウちゃんの反応を待ち、気持ちを受け止められるようになりました」 (編集委員・安藤明夫) <特別支援学校と小中学校との連携> 2007年施行の改正学校教育法で、従来の養護学校、盲学校、聾(ろう)学校が特別支援学校に名称変更されたことに伴い、地域の幼稚園、小中学校などにおけるセンター的な役割を持つことが定められた。 具体的には▽要請に応じて障害のある子どもの個別指導計画や、教育支援計画の策定に協力▽教師への支援、研修協力▽福祉・医療など関係機関との連絡調整−など。 PR情報
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