鹿児島 口永良部島で爆発的噴火 全島避難へ 警戒レベル初の「5」 [鹿児島県]
29日午前9時59分ごろ、鹿児島県屋久島町の口永良部(くちのえらぶ)島にある新岳(626メートル)で爆発的噴火があった。気象庁は、噴火警報を発表し、噴火警戒レベルを3(入山規制)から最も高い5(避難)に引き上げ、火砕流が新岳の南西側から北西側にかけての海岸に到達したのを確認した。町は午前10時20分、島の82世帯137人全員に島外への避難指示を出した。地元消防団によると、住民は火口から北西に約4・5キロ離れた番屋ケ峰の避難所に一時避難している。鹿児島県などによると、島民全員の命に別条はないが、70代男性が顔にやけどを負った。新岳の噴火は昨年8月3日以来。
(噴火の動画は気象庁提供)
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気象庁によると、噴火警戒レベルが5(避難)まで引き上げられたのは、レベルの運用を始めた2007年以来全国で初めて。
福岡管区気象台は、噴煙は火口から高さ9千メートル以上まで上がり、火口付近で直径50センチ以上の噴石が飛散しているのを確認した。その後も連続的な噴火が起きた。噴火の勢いが強いことから、マグマ水蒸気噴火かマグマ噴火とみられる。今後も爆発力が強い噴火や規模の大きな噴火が発生する可能性があるという。
鹿児島県や屋久島町によると、住民の大半は番屋ケ峰に避難。町がフェリーを準備しており、29日午後に船で東に約12キロ離れた屋久島に移動し、公民館などに避難する計画という。海上保安庁も大型巡視船艇を派遣。自衛隊もヘリコプターや哨戒機などを現地に向かわせた。
鹿児島県は災害対策本部を設置し、自衛隊に災害派遣を要請した。政府は首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置した。
近接する屋久島町と鹿児島市などを結ぶ航空便や船便に影響はない。
口永良部島は昨年8月に34年ぶりに噴火。噴火警戒レベルが1(平常)から3(入山規制)に引き上げられ、火口から2キロが立ち入り禁止となった。噴火後に多量の火山ガスの放出が続き、火山性地震や山体膨張が観測されるなど、活動が活発化していた。
今年3月には04年3月の遠望カメラの観測開始以降で初めて、高温の溶岩や火山ガスなどが噴煙や雲に映って明るく見える「火映」も観測、「いつ噴火してもおかしくない状態」(同気象台)だった。今月23日には、震度3の有感地震があり、警戒していた。昨年の噴火で、山頂付近9地点の観測機器が故障していたが、同気象台は「予測に影響はなかった」としている。
気象庁が24時間監視する全国47火山のうち噴火警戒レベル4(避難準備)が出されている火山はなく、レベル3は御嶽(おんたけ)山(長野、岐阜県)と桜島(鹿児島県)。
=2015/05/29付 西日本新聞夕刊=