Updated: Tokyo  2015/05/29 11:30  |  New York  2015/05/28 22:30  |  London  2015/05/29 03:30
 

アベノミクスの先に潜む財政危機のリスク-量的緩和に批判の声強まる

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  (ブルームバーグ):日本銀行による量的・質的緩和の導入から2年が経ち、黒田東彦総裁をはじめリフレ派が主張する「マネタリーベース・コントロール」の効果に批判的な声が強まっている。

5月16日に都内の大学で開かれた日本金融学会の春季大会。収容人数300人以上の教室で開かれた「中央銀行パネル」は、土曜日にもかかわらず学会員で埋まった。壇上には量的緩和を支持する日銀の原田泰審議委員ら2人と、その副作用を懸念する2人が並んだ。

パネルでは、2%の物価目標の達成に自信を見せた原田氏に対し、異次元緩和下の日銀による国債の大量購入が、1000兆円を超える債務を抱える日本の財政規律の弛緩につながると批判が上がった。

「両方の立場で白熱した議論が交わされた」。約2時間の学会員以外非公開の議論を傍聴した日銀出身の横浜国立大学の高橋正彦教授は「量的・質的緩和の導入から2年余りが経ち、金融政策とその効果に対する関心が高まっている。参加者も去年に比べて多かった」と語った。

黒田総裁は一昨年の4月、金融調節の操作目標を金利からマネタリーベースに変更し、2年で2%の物価目標を達成するとした異次元緩和を導入。円安・株高を誘発したが、反リフレ派の間では経済成長は引き続き弱いとの見方が強く、先行き不安が広がっている。

パネリストの1人として登壇したBNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは4月3日、ブルームバーグとのインタビューで「これだけ極端な公的債務を持っている国で財政規律の弛緩につながる政策をやっていいのかという懸念があった」と語っていた。

その上で、「議会制民主主義の下で、財政膨張の唯一の歯止めは長期金利の上昇だ。政府は金利を抑制している日銀の国債購入に頼り、財政健全化が進められない」と強調。結果的に、消費増税10%への引き上げの先送りにもつながったとの見方を示していた。

同じくパネリストを務めた元日銀理事で富士通総研エグゼクティブ・フェローの早川英男氏はインフレが加速した際の金利急騰の可能性に触れ、「日本の財政の健全性を非常に懸念している。多くの人が注目していない中、我々が強く主張する必要がある」とインタビューで3月に語っていた。  

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記事についての記者への問い合わせ先:東京 下土井京子 kshimodoi@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Brett Miller bmiller30@bloomberg.net;大久保義人 yokubo1@bloomberg.net 上野英治郎, 谷合謙三

更新日時: 2015/05/29 08:46 JST

 
 
 
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