(2015年5月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
5月27日、スイス・チューリヒにある国際サッカー連盟(FIFA)本部で、記者会見の準備を進めるスタッフ〔AFPBB News〕
スイスの司法長官がニューヨーク市警に対し、パークアベニューへ行ってメジャーリーグベースボール(MLB)の幹部数人を逮捕するよう要請したらどうなるか考えてみてほしい。
身柄引き渡しの令状が適切に書かれていたら、警官たちは恐らくやるだろうが、何人かのニューヨーク市民は、一体何の関係があってスイスが伝統的な米国の娯楽に介入するのかと詰問するかもしれない。
27日午前6時にチューリヒ州警察が高級ホテル「ボウ・オウ・ラク」で行った強制捜査について最も際立つことは、それを求めた人物が誰かという点だ。
ロレッタ・リンチ米司法長官はスイスのチューリヒ州警察に対し、国際サッカー連盟(FIFA)の関係者7人の身柄を拘束し、訴追のために米国に身柄を引き渡すことを求めた。またしても、米国が国際法において一番長い司直の手を誇示した格好だ。
米国の司直の「長い手」
ああ、ありがたい――というのが筆者の反応だ。深刻化するスキャンダルを何とか乗り切ろうとするゼップ・プラッターFIFA会長の努力にもかかわらず、誰かがFIFAの汚職を一掃する決意と意志を見せなければならない。
起訴状が出されたブルックリンでは、サッカーは主に公園や学校で行われるスポーツだが、リンチ長官はいみじくもこれを、自制して手を緩める理由とは見なさなかった。
米国の法執行機関と裁判所が、狙った人間を捕まえるために海外に手を伸ばす伝統は、よく人を苛立たせる。
だが、FIFAの場合、あるいはもっと広範な汚職の取り締まりについては、米国は正しい。国際機関が――MLBとは異なり――、賄賂とキックバックの温床となった時には、単に司法の執行が難しいという理由で腐敗するに任せてはならない。