今回のEngadget 電子工作部 konashiハッカソンでは、エンジニア・デザイナー・プランナーなど、もの作りに興味のある18人が集まり、5月9日と5月23日の2日間で健康ガジェットを作ります。場所はDMM.com AKIBA。まずはDay1の5月9日、アイデアソンの様子を紹介します。なお成果物は5月30日に開催するEngadget例大祭のドコモ・ヘルスケアブースにて展示もします。記事末に参加登録のフォームがありますので、ぜひ登録ください。
QOLをハックする!
健康ガジェットといっても、幅広くてちょっとピンとこないかもしれません。ヒントは、ドコモ・ヘルスケアの「WM(わたしムーヴ)」プラットフォームです。「WM(わたしムーヴ)」は、毎日の暮らしを見つめ、生活の質(QOL:Quality of Life)を上げようという「ウェルネス」の考え方をベースにしたサービス。生活習慣・生活リズムを整えることで、健康で快適な毎日を過ごすことを提案しています。
生体データや日々の活動量などが取得できるウェアラブルデバイスが登場してきている今、ウェルネスは注目されている考え方です。自分の身体や生活リズムを知ることで、身体のポテンシャルを最大限発揮でき、より健康的になるのもうなづけます。敵を知り己を知れば100戦危うからずというわけですね。
今回の電子工作部ではそうしたウェルネスの考え方をベースに、さらにパフォーマンスを最大化、最適化できるような健康ガジェットを作ることがゴールです。
WMプラットフォームとは?
まずはレクチャーの部。最初は「WM(わたしムーヴ)」プラットフォームについて、です。講師はWMプラットフォームと連携するリストバンド型活動量計ムーヴバンドの企画を立ち上げたドコモ・ヘルスケアの新山洋平さんです。
WM(わたしムーヴ)は、身体のデータを記録し健康を管理するためのプラットフォームです。歩いた距離や消費したカロリー、眠りの状態、女性特有の身体のリズム、血圧や体重などの身体のデータを蓄積します。その蓄積データをもとに変化や傾向をとらえ、快適な生活に役立てようというもの。
たとえば「すっきりと目覚めたい」「無理せず運動不足を解消したい」「体調を管理したい」など理想のからだづくりをサポートします。スマホのアプリや健康機器で測定したデータを簡単に登録できるようになっています。連携する「ムーヴバンド2(WMB-02C)」で日常の睡眠・歩数データを計測し、「WMアプリ」を使ってプラットフォームにデータを蓄積したり、データをアプリ上で可視化したりできます。
・WMプラットフォームに蓄積している主なデータ
- 血圧(最高血圧/最低血圧)
- 体組成(体重/体脂肪率/骨格筋率)
- 活動量(歩数/移動距離/消費カロリー)
- 睡眠(入眠時刻/起床時刻/中途覚醒時間/睡眠時間)
- 体温
・ムーヴバンドで測定できるデータ
- 活動量(歩数/移動距離/消費カロリー)
- 睡眠(入眠時刻/起床時刻/睡眠状態「深い」「浅い」「覚醒」)
今回は、これらのデータをもとにiPhoneやiPadなどiOSデバイスと連携する健康ガジェットを作ることが目標です。
とはいえ、これだけではまだ「どういうこと?」という感じですよね。そこで新山さんから、ちょっとおもしろい集計データの紹介がありました。ドコモ・ヘルスケがまとめた「みんなの『からだデータ』白書 2015」。これは、ムーヴバンド2とWMプラットフォームの利用者231人が1ヶ月にわたって計測したデータを集計したものです。
1日の平均歩数や曜日別の平均歩数、なんと年収別の平均歩数も! 年収が高い人のほうが歩いているらしいです(理由は不明です)。1日の平均消費カロリー/年代別の平均消費カロリー、さらに生まれた季節別の平均消費カロリーというデータも。ちなみに、秋(9月〜11月)に生まれた人のほうが平均消費カロリーが多く、睡眠時間が長いのも秋生まれとのこと。こういう話を聞くと、もし何かにうまく活用できれば、とムズムズしてきますね。
とはいうものの、課題もあります。健康ガジェットが抱える課題は次の2点です。
・最初はおもしろくても飽きてしまう
・健康な人は健康のためだけには続けられない
実は、健康ガジェットが対象にするのは「病気が進行している人」ではありません。あくまで「健康な人」が毎日をより快適に過ごすために身につけるものであるため、「続けるモチベーション」や「身につけたくなる」「おもしろい」といった要素が必要になりそうです。
スマホと連動するガジェット
次に、ハードウェアスケッチに用いるkonashiの概要について。konashiはいま話題の技術BLE(Bluetooth Low Energy)でiOSと通信できるプロトタイピングツールです。講師は、konashi開発者の松村礼央さん(Karakuri Product)です。松村さんから、ものづくりという流れの中でプロトタイピング手法がここ数年注目されている理由や、スマホの台頭、市場規模の拡大、携帯アクセサリ市場の変化について解説がありました。また、スマホと連動するガジェットとして、次の2つの特徴があるといいます。
・Web連携を考慮したものが多い
・ライフログ、ソーシャルサービスと連動するものが多い
このあたりも、今回作る健康ガジェットのヒントになりそうですね。
レクチャーのあとは、参加者が各自が得意な分野やスキル、参加の動機などを自己紹介していきます。午後からは参加者同士で数人がチーム(今回は4〜5人ずつで、4チーム)を組み、ゴールを目指すことになります。お昼休憩を挟んで、午後からアイデアソン開始です。
アイデアソン、開始!
アイデアソンはマトリクスシートとアイデアスケッチで進めます。マトリクスシートで「これから考えるデバイスはどういう人がどういうシーンで使うものなのか」を絞り込んでからアイデア出しに。そして、具体的なスケッチに落とし込んでいきます。なおこの段階では、技術的な枠にとらわれずアイデアを広げることに注力します。ここが肝ですが、アイデアスケッチをグループ内で共有し意見を交換します。良いと思ったもの、そのポイント、理由、プラスできる自分のアイデアを言葉にしていきます。こうしたプロセスが経ることでアイデアに刺激を与え、アイデアの種を強固なものにしていきます。
ハードウェアスケッチ後にアイデアをブラッシュアップ
何を作るかのアイデアを最終的に決める前に、ここでハードウェアスケッチの時間を取ります。スマホ連携といっても、どういうことか今ひとつイメージがわかないと思います。そのため、konashiを使ってBLE通信でiOSとやりとりを体験します。ここでは、すでにアップロードされているJavaScriptのプログラムを使うため、コードを書く必要はありません。アプリ側からLEDを光らせたり、アプリのオン・オフを物理スイッチで行ったり、グループ内で試していきます。
このプロセスでデバイスとスマホアプリが連動するという感触をつかみ、アイデアをさらにブラッシュアップ。続いて、チームごとの発表を目指します。
発表はプレゼン資料、デモ、動画と方法は何でもあり、です。デモのために、ダンボールを使ってモックアップを作り始めるチームもちらほら。
4チームが考える健康ガジェット【アイデアソン編】
いよいよ、Day1プレゼンの時間です。ここからユカイ工学の青木俊介さん、IAMAS小林茂先生(ハングアウトにて)も講評に参加します。Aチーム:ふぁっと出会えるヘルス・デバイス
「よく歩く人ほど、人に出会えるのではないか」という仮説の元に、しきい値の歩数を歩くことでFBのプロフィール交換ができるというデバイス。表向きは名刺交換代わりだが、出会い系アプリにも展開できる。新山:歩数と年収のデータなど「出会い」に使えるのではないか。
青木:ニンテンドーDSのすれ違い通信は、世の中にたくさんニンテンドーDSが存在するから成り立つ。すれ違えるように考えることがポイントになる。「出会い」との両立は難しいかも。
松村:シチュエーション勝負になる。たとえば、ジムの中で特定のスポーツのしきい値など、フィジカルな情報と組み合わせれば成立するのではないか。
小林:累計データだけではなく、生活リズムの活用も検討してはどうか。生活パターンの合う、合わないというのもある。たとえばディズニーランドでも、アクティブに動く人もいれば、場をゆっくり楽しみたいという人もいるので、そういうリズムが合う人と出会えるようにするとおもしろい。
Bチーム:ひきこもりの自立を支援するデバイス
「ひきこもりの自立」をテーマに、「お風呂に入れた」「脱いだ靴下を洗濯機に入れた」「座って食事ができた」など、宝探しゲームのようにできた行いに応じてポイントが加算するシステム。ポイントはごほうびという形で還る。新山:「健康」にはいろいろな意味があり、メンタルヘルスも確かに含まれる。ただ、ひきこもりのような状況にいる人がそういったガジェットをつけるだろうか?
青木:モチベーション付が重要。うちの子なら、ポイントではなくて「妖怪ウォッチが見られる」ならやると思う。年齢やターゲットで「餌」の部分は変わってくる。
松村:技術的な側面から見るとその使い方はうまい。検出できるデータの特性を活かしていると思う。ただ、行動変容の動機付けが重要。自分のアクティビティを見るという意味でおもしろくなりそう。
小林:ひきこもりの最初の一歩のアクションで何が一番難しいのかを考えてみて、それをうまく乗り越えられるようにするといいのかも。そのあたりをメンバーでもう一度話し合ってみては? よくある監視システムになってしまう可能性もある。
Cチーム:ドSコーチ
運動することを支援するデバイス。たとえば、腕に装着しサンドバックを叩くなどエクササイズする場合に、達成した値に応じてモードが切り替わり、ディスられたり、「ブタの割にやるわね」と褒められたりするというもの。新山:使い続けさせるための工夫が必要になる。たとえば、デバイスの高級版では体重データと連携し、累積のデータと組み合わせるとか。
青木:キャラクターの声を変えるのはあり。
松村:どうやって人を説得するか、それには落としつつ上げるというのは効果的。あきてしまったときの動機付けが必要なのでは?
小林:おもしろい。倒錯した人は確かにいそう。いつ言えばより効果的か、そのためのデータは何がいいかなど考えるとよい。
Dチーム:健健歩(けんけんぱ)
ケンケンを検知する輪っか状のデバイス。ケンケンを検知して光ったり、音を鳴らす、子どものおもちゃ。設定したしきい値を達成することで何らかのアクションを起こす(たとえば冷蔵庫の扉が開いたり、ちょうどいい感じに冷えたジュースが出てきたり)という発想から始まったもの。松村:子どものためという考え方がいい。
小林:持ち歩くものなのか、そこに設置されるものなのか。遊びになるストーリーまで考えてみては?
オモチャ、運動支援、コミュニケーション支援、ひきこもり支援とさまざまな視点からのデバイスの提案がありました。こうしたプレゼンでは、モックアップなどを用いて具体的な想定する使用シーンのデモがあるとイメージが伝わりやすいですね。このあと、それぞれプレゼンでの反応、講師陣からのコメントを持ち帰ってチーム内で検討を続け、Day2の発表に向けてプロトタイプの制作を進めていきます。メンバーはオンライン、ときには実際に集まってミーティングや作業を進めていくことになります。ここで発表した内容から変更することもあり、です。
Day2は2週間後。それぞれ、どう仕上がってくるでしょうか? 実は5月30日に秋葉原で開催するガジェットの祭典、 Engadget 例大祭ドコモ・ヘルスケアブースにてこれらのプロトタイプを展示します! 記事よりも先にプロタイプをご覧になりたい人はぜひ足をお運びください。申し込みは以下のフォームから。参加費は無料です。
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