油を使わなければ真の炒め物にあらず

変わるキッチン(第13回)~炒める

2015.05.29(Fri) 澁川 祐子
筆者プロフィール&コラム概要
中華鍋で野菜を炒める。丸い形状で油が素早く行きわたりやすい

 中華鍋を火にかけ、油を温めてから野菜を投入。ジャッという威勢のいい音を合図に、素早く鍋を振る。野菜がちょっと色づいてきたところで調味料をまわし入れ、サッとなじませたらコンロの火を消して出来上がり。

 中華鍋で野菜炒めをつくるときは、いつも「よーい、スタート!」のかけ声が脳内に響く。野菜を入れてから出来上がりまで気が抜けない。

 こんなふうに言うと、いかにも料理上手みたいだが、中華鍋歴はそれほど長くない。憧れはあったものの、手入れを怠ると錆びると聞いて、なかなか手を出せずにいた。

 自炊をするようになってから5~6年は経った頃だっただろうか。一人前にちょうどいい小ぶりな鉄製のものを見初めて購入した。そして、おそるおそる野菜炒めをつくり、なるほど、野菜がシャキッと歯ごたえがあるとはこういうことかと合点した。

 中華鍋でつくる炒め物がおいしいのは、なんといってもその形によるところが大きい。

 丸い底は熱効率に優れ、均一に熱を伝えるのに適している。また、鍋をちょっと振っただけで、丸い鍋肌にそって材料が簡単にひっくり返るため、油や調味料なども素早く行きわたらせることができる。

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1974年、神奈川県生まれ。東京都立大学人文学部を卒業後、フリーのライターとして食や工芸・デザインを中心に、読むこと、食べること、暮らすことをテーマとしたインタビューやルポ、書評を執筆。『森正洋の言葉。デザインの言葉。』(ナガオカケンメイ監修、美術出版社)、『最高に美しいうつわ』(SML監修、エクスナレッジ)の取材構成ほか、近著に当連載をまとめた『ニッポン定番メニュー事始め』(彩流社)がある。


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