【藪 丈二さん寄稿】ボルテックス・リング・ステートについて。
こんばんは。
今週は雨も降らず風も吹かず暑くもなく・・・で絶好のヘリ日和の週末でしたが、子供が夏休みに入った上、普段土曜・日曜は仕事をしている筈の女房も夏休みで今週・来週は家に居ます。またあとで記事にしますが、結局、土・日曜日の2日間とも女房子供を連れて出かける羽目になってしまいました。したがって、ヘリの練習は1バッテリーもできていません。世の中ままならぬものです。
さて、藪 丈二さんからいつものように記事を頂いていますので掲載させて頂きます。今回は実機のヘリのパイロットの間では有名な危険な現象、ボルテックス・リング・ステート(パイロット用語ではセットリング・ウィズ・パワー)についてのお話です。端折って説明すると、対気速度がゼロに近い状態で機体を急降下させた時に、自分が生み出した下降気流の中に自分自身が入ってしまって急速に揚力を失い、機体がストンと落ちる現象のことです。実機でわざとこの現象を起こしてみたパイロットが、3,000フィート(900m)付近から一気に1,000フィート(300m)あたりまで降下してしまって凄く怖い思いをした・・・という話をどこかで読んだことがあります。また、メインローターだけでなく、テールローターが横風を受けた時も同様の現象を起こして急激に機体の向きが変わる、ということもあるようです。
mCP X で実際にボルテックス・リング・ステートを起こす実験をされている方もいるようです。私の個人的見解では、風のある屋外での急降下現象は必ずしもこのボルテックス・リング・ステートによるものではなく、むしろ風により揚力が急激に変化したことに拠るものが多いのではないかという気がします。
今日は、ボルテックス・リング・ステート(Vortex Ring State, VRS)の経験についてレポートします。
使用させていただいた資料は、「ウィキペディア」を始め、「英語の落ち穂拾い」等です。
実際のヘリは勿論のこと、RCヘリ・パイロットの皆さんも既に経験済みの現象ですが、ホバリング中に、ほんのちょっとしたはずみで、機体があたかもマイクロ・バーストを受けたように急激に高度を失して、あわてさせられたことがあると思います。

Public Domain Image from Wikimedia Commons

Public Domain Image from Wikimedia Commons, Created by NOAA
私も、Blade400でも度々経験しましたしmCPXではフライトの度に、この「急激な高度低下」現象に見舞われています。時には、機体が地面にたたきつけられ、バウンドすることさえありました。
当初は、「複雑な風の流れの影響を受けた」、「バッテリーがヘタッテ来て放電ムラがある」などと考えていたのですが、浅学非才ゆえの間違った解釈だったとが、最近分かりました。この現象こそ、「ボルテックス・リング・ステート」だったのですね。
以下のURLは、mCPXを使って「ボルテックス・リング・ステート」をデモしたもので、まさに「目から鱗」でした。
http://www.youtube.com/watch?v=0Kz_gOWaR7Y&feature=relmfu
そこで、遅まきながら「ボルテックス・リング・ステート」について調べてみました。
ボルテックス・リング、平たく言えばドーナッツ型渦巻きのことですが、タバコを嗜む人であれば、口の中にある煙を舌で押し出し、煙のリングを作りますが、あれがまさに、ボルテックス・リングです。
水平にしたボルテックス・リングの中央にヘリコプターが入った状態になると、ちょっとしたきっかけで、マイクロ・バーストを受けたように、機体が高度をうしなうことになるのだそうです。
2年前の7月25日、埼玉県秩父市大滝の山中で、山岳救助活動に従事していた防災ヘリ「あらかわ」が墜落し、機長、副機長、防災航空隊員ら5名の方々が命を落とす事故がありましたが、事故原因は、「ボルテックス・リング・ステート」、またの名を「Settling with power(適切な訳語が見つかりません)」と言われています。
参考リンク:http://d.hatena.ne.jp/A30/20100726/1280145849
今週は雨も降らず風も吹かず暑くもなく・・・で絶好のヘリ日和の週末でしたが、子供が夏休みに入った上、普段土曜・日曜は仕事をしている筈の女房も夏休みで今週・来週は家に居ます。またあとで記事にしますが、結局、土・日曜日の2日間とも女房子供を連れて出かける羽目になってしまいました。したがって、ヘリの練習は1バッテリーもできていません。世の中ままならぬものです。
さて、藪 丈二さんからいつものように記事を頂いていますので掲載させて頂きます。今回は実機のヘリのパイロットの間では有名な危険な現象、ボルテックス・リング・ステート(パイロット用語ではセットリング・ウィズ・パワー)についてのお話です。端折って説明すると、対気速度がゼロに近い状態で機体を急降下させた時に、自分が生み出した下降気流の中に自分自身が入ってしまって急速に揚力を失い、機体がストンと落ちる現象のことです。実機でわざとこの現象を起こしてみたパイロットが、3,000フィート(900m)付近から一気に1,000フィート(300m)あたりまで降下してしまって凄く怖い思いをした・・・という話をどこかで読んだことがあります。また、メインローターだけでなく、テールローターが横風を受けた時も同様の現象を起こして急激に機体の向きが変わる、ということもあるようです。
mCP X で実際にボルテックス・リング・ステートを起こす実験をされている方もいるようです。私の個人的見解では、風のある屋外での急降下現象は必ずしもこのボルテックス・リング・ステートによるものではなく、むしろ風により揚力が急激に変化したことに拠るものが多いのではないかという気がします。
今日は、ボルテックス・リング・ステート(Vortex Ring State, VRS)の経験についてレポートします。
使用させていただいた資料は、「ウィキペディア」を始め、「英語の落ち穂拾い」等です。
実際のヘリは勿論のこと、RCヘリ・パイロットの皆さんも既に経験済みの現象ですが、ホバリング中に、ほんのちょっとしたはずみで、機体があたかもマイクロ・バーストを受けたように急激に高度を失して、あわてさせられたことがあると思います。
Public Domain Image from Wikimedia Commons
Public Domain Image from Wikimedia Commons, Created by NOAA
私も、Blade400でも度々経験しましたしmCPXではフライトの度に、この「急激な高度低下」現象に見舞われています。時には、機体が地面にたたきつけられ、バウンドすることさえありました。
当初は、「複雑な風の流れの影響を受けた」、「バッテリーがヘタッテ来て放電ムラがある」などと考えていたのですが、浅学非才ゆえの間違った解釈だったとが、最近分かりました。この現象こそ、「ボルテックス・リング・ステート」だったのですね。
以下のURLは、mCPXを使って「ボルテックス・リング・ステート」をデモしたもので、まさに「目から鱗」でした。
http://www.youtube.com/watch?v=0Kz_gOWaR7Y&feature=relmfu
そこで、遅まきながら「ボルテックス・リング・ステート」について調べてみました。
ボルテックス・リング、平たく言えばドーナッツ型渦巻きのことですが、タバコを嗜む人であれば、口の中にある煙を舌で押し出し、煙のリングを作りますが、あれがまさに、ボルテックス・リングです。
水平にしたボルテックス・リングの中央にヘリコプターが入った状態になると、ちょっとしたきっかけで、マイクロ・バーストを受けたように、機体が高度をうしなうことになるのだそうです。
2年前の7月25日、埼玉県秩父市大滝の山中で、山岳救助活動に従事していた防災ヘリ「あらかわ」が墜落し、機長、副機長、防災航空隊員ら5名の方々が命を落とす事故がありましたが、事故原因は、「ボルテックス・リング・ステート」、またの名を「Settling with power(適切な訳語が見つかりません)」と言われています。
参考リンク:http://d.hatena.ne.jp/A30/20100726/1280145849
「Settling with power」は、パイロットが直面する、極めて危険かつ、制御不能な深刻な状態です。「Settling with power」は、自機のメイン・ローターが発生させるローター・ウオッシュの中にヘリを定置させると、ダウン・ウオッシュが生じます。発生条件としては、対気速度ゼロ、パワー100%セッティング及び降下レートが300フィート/分以上とされています。
この「Settling with power」の状態から立ち直る唯一の手段としては、前進の対気速力を増加させ、「Clean air(クリーン・エア)」へローター・システムを移動させることです。
つけたし:米海兵隊の次期輸送機「オスプレー」は、明日にも岩国に搬入される予定です
が、現在、オスプレイに関して一番問題視されているのが、「ボルテックス・リング状態(vortex ring state)」というヘリコプター独自の失速現象に陥り易いという点です。
最近のヘリコプターの場合、比較的小径のローターを高速で回転させているため、軍用のヘリコプターなどで多少無理な急降下を行ってもボルテックス・リング状態に陥ることはほとんどなくなったと言われていますが、オスプレイのよう
なティルトローター機の場合、ティルトローター特有の空力特性のため一般のヘリコプターよりもボルテックス・リング状態に陥り易い構造だということが、開発が終了し実験段階に入ってからかなりしてから判明してしまったのだそうです。
この「Settling with power」の状態から立ち直る唯一の手段としては、前進の対気速力を増加させ、「Clean air(クリーン・エア)」へローター・システムを移動させることです。
つけたし:米海兵隊の次期輸送機「オスプレー」は、明日にも岩国に搬入される予定です
が、現在、オスプレイに関して一番問題視されているのが、「ボルテックス・リング状態(vortex ring state)」というヘリコプター独自の失速現象に陥り易いという点です。
最近のヘリコプターの場合、比較的小径のローターを高速で回転させているため、軍用のヘリコプターなどで多少無理な急降下を行ってもボルテックス・リング状態に陥ることはほとんどなくなったと言われていますが、オスプレイのよう
なティルトローター機の場合、ティルトローター特有の空力特性のため一般のヘリコプターよりもボルテックス・リング状態に陥り易い構造だということが、開発が終了し実験段階に入ってからかなりしてから判明してしまったのだそうです。