知事のバックに北朝鮮


 翁長県政下の沖縄に対して、日本政府は腰が引けています。どうしても、先の大戦で沖縄が戦場となって民間人に多数の犠牲を出したこと、さらに戦後27年間、米軍統治を許したという引け目、贖罪意識が働いているのでしょう。

 また、沖縄選出国会議員のなかにも「沖縄はあくまで被害者」とアピールする者が少なくありません。この国会議員たちは、沖縄の真相が曝け出されるのを忌避しています。そこで私は、シンクタンク「沖縄・尖閣を守る実行委員会」を設立して県民啓蒙活動を行っています。中国もこれに注目しており、2月23日には中国環球網で私の顔写真つきで大きく論評されました。

 戦前戦後の資料収集、講演活動、メディア対策などを行っていますが、実はその後援を国に陳情したことがあります。ところが、国は一切応じようとしませんでした。

 一昨年、他府県選出国会議員有志(自民党所属)から、「沖縄県の実態について党本部で講演をやってくれないか」というオファーを受けました。ところが、党執行部が開催を断ったのです。「沖縄県選出の国会議員から反対意見が出ている」とのことでした。彼らにしてみれば、沖縄が犠牲者だからこそ予算を引っ張ってこられるわけですから、私に真相を吐露されては困るのです。

 とはいえ、ここまで事がこじれているのだから、国は思い切って行動してほしいと思います。

 1995年に米兵による沖縄少女暴行事件が起きた際、当時の大田昌秀県知事は、基地の土地賃貸契約の継続を拒否している反戦地主の代理署名を拒絶しました。その時、私は月刊誌に、知事のブレーンたちが平壌に出入りしており、バックに北朝鮮がいることを暴露しました。

 結果、国会で圧倒的多数で特別措置法が採決され、総理が代理署名できるようになったのです。当時は「地方分権の侵害だ」という反対意見を表明する県選出保守系議員もいましたが、法案制定後はこの騒乱は沈静化し、マスコミも一切言及しなくなったのです。

 今回も似たような構図になっていると思います。辺野古埋め立て工事に関しては、農水相が県知事に権限を委託しているのだから農水相がその権限を停止させるのはおかしくない。何より、国防は国の専権事項です。国が考えて行動するのが当然でしょう。

 基地の県内移転が確定してから19年、国は問題を先送りし続けてきました。「地方分権」だとして無責任な沖縄県に権限を丸投げし、やれ知事選だ、やれ県議会選挙だ、やれ市議選だとその都度、沖縄の顔色を窺ってきた。その間、中国は確実に手を打ってきていて、もはやその影響力を無視はできない状態に陥っています。ここに至っては、以前のように思い切って特別措置法を制定し(あるいは現行のままでも)、進行していくべきなのです。

 中国共産党のある幹部が漏らしていたようですが、習近平体制は腐敗摘発の一環として軍の粛清も同時に進めているがなかなかうまく行っていない。むしろ軍を抑えるので精一杯。仮に沖縄から米軍基地がなくなったら、確実に軍部が暴走してしまうだろう。だから習近平としては沖縄にある米軍基地を“必要悪”と見ている、と。そういったアジアのバランスを維持するためにも、沖縄の米軍基地は必要なのです。
4月5日、菅義偉官房長官との会談に向かう沖縄県の翁長雄志知事の車(中央)に向けて、拍手とエールを送る辺野古移設反対派の人たち=那覇市

まずは県民教育から


 現政権、菅官房長官は振興策といって金をちらつかせて翁長知事を手なずけようとしていますが、はたしてそれは有効な手段なのでしょうか。

 最悪のシナリオとしては、知事に対して中国政府から「沖縄振興のために中国が日本以上に出資しましょう」という話が出ることです。そうなったら、日本政府はどう対応するのでしょうか。

 さらに、たとえば尖閣諸島から僅か180キロに位置する下地島に、遊休化している3000メートルの滑走路を持つ第三種空港があります。沖縄県が管理権を持っていますが、もし中国企業に貸すことを決定したらどうなるか。中国は最初は平和利用だというでしょうが、既得権を積み上げ、いずれは軍用機を降ろすことになるでしょう。その時、政府はどうするのか。中国の脅威はすぐそこまできています。

 また沖縄のメディアは、異常なほど沖縄県民を基地反対、さらに反日反米へと扇動しているので、対抗するための住民への啓蒙活動も必要です。

 沖縄県民にも基地賛成派はいますし、現状を「異常」と感じている県民も少なくない。しかし県内は同調圧力が強く、少しでも現執行部に楯突こうものなら生活が立ち行かなくなる恐れがあります。

 私は、沖縄県内各地で県民啓蒙のための講演を行っています。昨年の六月には、宮古島のPTAに呼ばれて講演しました。PTAの方々が言うには、小中学校にまで憲法九条を守る会などの左翼活動家がスクールカウンセラーの肩書きで県外から入り込んできている。結果、学校の雰囲気が異様になっているので何とかしてほしい、とのことでした。

 そこで私は先ほど申し上げたように、米軍施政下における医療基盤の確立などを映像や写真を使って話を進め、離島医療向上の実績を強調しました。とくに看護婦育成、公衆衛生看護システム確立に半生を捧げた米軍看護顧問官、ワニタ・ワータータース女史について話しました。

 講演には左翼活動家の方々も来られていましたが、史実なので反論はできません。かえって感動される方もいました。

 政府は「沖縄振興策」という名目で毎年3000億円以上の血税を沖縄に垂れ流すより、県民教育を真剣に実施すべき時期にきているのではないでしょうか。

 沖縄が本土に復帰して43年、政府は沖縄に対してナーバスになりすぎていました。しかし、もうそろそろ裸の議論をできるように、政治家はハッキリ物を言わなければなりません。このままでは、沖縄が日米関係に楔を打ち込み、大きな騒乱の根源になってしまいかねないと懸念しています。

めぐみ・りゅうのすけ 1954年、沖縄コザ市生まれ。78年、防衛大学校管理学専攻コースを卒業。海上自衛隊幹部候補生学校(江田島)、世界一周遠洋航海を経て護衛艦隊勤務。82年、退官(二等海尉)。その後、琉球銀行勤務。99年、退職。以降、ジャーナリズム活動に専念。著書に『中国が沖縄を奪う日』(幻冬社ルネッサンス新書)、『誰も語れなかった沖縄の真実-新・沖縄ノート』(WAC)など多数。シンクタンク「沖縄・尖閣を守る実行委員会」代表。

関連記事
■ 問われる「保守」のカタチ
■ 何をよりどころに沖縄の将来を築いていくのか
■  基地問題 「妥協の時は過ぎた」