[写真]古くはコスモやファミリア、ルーチェ、サバンナなど様々なクルマに搭載されてきたロータリーエンジンだが、やはりその頂点はRX-7だろう。写真はFD型RX-7 RZ
ようやく重い腰をあげてロータリーエンジンについて原稿を書く気になった。ロータリーの未来について明るい可能性にようやく思い至ったからだ。
ロータリーファンが多いことは知っているし、彼らの情熱も知っている。一方で機械としてのロータリーエンジンには明るい展望がなかった。ロータリーエンジンがバカ売れしていて、CO2(二酸化炭素)とHC(炭化水素)を撒き散らしているのであればともかく、マツダ自身も現在生産しておらず、それをわざわざ引きずり出して何がどうダメかを論理的に書くことに意味を見いだせなかった。
ロータリーの話を書くなら、ロータリーの未来を楽しく語れる原稿にしたい気持ちが強い一方で、嘘は書きたくないというアンビバレントが、編集部からロータリーについて書いて欲しいと何度か促されても原稿を書く気にさせなかった原因だ。
しかし、もしかするとロータリーエンジンは奇跡の復活を遂げるかもしれない。今回はそんな話を書いてみたい。
EVにロータリーエンジンを採用「マツダ RE レンジエクステンダー」とは?
ロータリーエンジンの仕組み
[図表]内燃機関としての物理的な仕組みはレシプロと全く違うロータリーだが、その燃焼サイクルの基本は変わらない
まずはロータリーエンジンとは何者かから書き始めよう。まずは図版を見て欲しい。下の列に描かれているのが普通のレシプロエンジンの作動図だ。ピストンが下がる時に吸気弁が開いて混合気を吸い込み、上がる時には吸排気弁が閉まって混合気を圧縮する。上死点直前でプラグが点火して、その燃焼圧力でピストンが下がる。この時にピストンを押し下げるガスの力でエンジンは動力を生み出す。下死点をすぎると排気弁が開きピストンの上昇によって燃焼済みのガスは排気される。ピストン2往復、つまりクランク軸2回転で1サイクルして元に戻る。
これと対照させたのが上の段のロータリーエンジンの作動図だ。まゆ型のハウジングの中でおむすび型のローターが回転する。ただし扇風機のように重心が回転中心になって回るのではなく、フラフープのように偏心して回る。その時にローターの3つの頂点が描く幾何学的な線をトロコイド曲線と言い、ハウジングはその頂点が絵を描く軌跡に合わせて作られている。
ローターの中にある白丸がレシプロエンジンのクランクシャフトにあたるエキセントリックシャフトの中心軸で、その周囲のグレーの部分がローターの内側にぴったりはまってオイルで潤滑されながら偏心運動する部分だ。レシプロエンジンならちょうど白丸がクランク軸でグレーの丸がクランクという関係になっている。