グーグル人事トップが語る、組織マネジメントの10のコツ
2015/05/28, Business Insider
人事トップが語る組織づくりの極意
2006年にピープル・オペレーションズ(人事部)担当上級副社長として入社して以来、ラズロ・ボックはグーグルが強力なグローバルカンパニーに成長する後押しをしてきた。約6000人だった従業員数は6万人に届こうとしている。
ボックが率いる人事チームは組織マネジメントの戦略を構築し、グーグルは優秀なIT人材から「最も働きたい会社」のひとつに選ばれるようになった。アメリカで「最も幸せな会社」のランキングにも名を連ねている。
ボックは新著『Work Rules!』(邦訳は東洋経済新報社から7月末刊行予定)で、グーグルが実践している組織マネジメントの10のコツを紹介。私たちの職場でも実践できると勧めている。
1:仕事に意味をもたせる
社員が給料のためだけに働いている会社や、市場のリーダーになることしか考えていない会社は、成長し続けることはできない。仕事を、より高尚な目的と結びつける必要がある。
だからこそグーグルは、達成できないミッションを掲げている。「世界の情報を整理して、誰でも利用できる有益なものにする」ことに情熱を燃やしたい人々を集め、事業の目標ではなく道徳として、このミッションを追い求めるのだ。
2:チームを信頼する
マネジャーは部下の進歩を導き、彼らのパフォーマンスを評価する。ただし、細かな管理にこだわらないこと。部下を監視するあまり、彼らの代わりに自分が仕事をするようではダメだ。
部下を信頼して委ねることは、双方向の効果がある。グーグルでは半年に1回、部下が匿名でマネジャーのパフォーマンスを評価する。その結果についてマネジャーは、自分のチームと話し合うことを強く推奨されている。
3:自分より優秀な人だけを採用する
ボックは採用にあたり、いかなる状況でも人材の質に関して妥協したことはない。自分より優れた人を採用する、それが鉄則だ。
「間違った採用は有毒であり、本人のパフォーマンスが損なわれるだけでなく、周囲のパフォーマンスとモラルと活力を堕落させる。採用が間に合わず、チームの負担が短期的に増えるときは、嫌なヤツと働いて苦労した経験を思い出せばいい」
4:発展的な対話とパフォーマンスの管理を混同しない
仕事に関するフィードバックが、半年か1年に1回の業績評価だけの場合、社員は失敗したら批判されると考えるようになり、消極的になりかねない。
定期的に部下と仕事について話し合い、パフォーマンスの評価では、年間目標を達成したかどうかを常に反映させる。
「このような対話をうまくやっていれば、評価をめぐって議論になっても戸惑わないだろう。以前から対話を重ねているから、部下はあらゆる段階であなたの支えを感じるはずだ」
5:最高のパフォーマンスと最低のパフォーマンスの両方に注目する
社員のパフォーマンスが正規分布にあてはまるという前提で管理する際は、両端の「例外」に注目する。まず、最も優秀な社員が群を抜いている理由を見極め、そのスキルを他の社員に学ばせる。
一方で、パフォーマンスが最も低い社員も見過ごしてはならない。彼らを採用した理由を振り返り、才能を生かしきれない仕事を与えられているだけなのか、それとも本人が会社に合わないのかを確認する。
前者なら、新しい責任を与えて力を発揮するチャンスを与えよう。後者なら、会社のためだけでなく本人のためにも辞めさせるべきだ。
6:社員のためにカネを使うべきときは惜しみなく
手厚いことで知られるグーグルの福利厚生の多くは、会社の負担するコストはゼロか、比較的安い。社内研修でも、現場での効果が実証されていない外部の研修プログラムや講師に、高いカネを払う必要はない。最も優秀な社員を講師にしたり、会社と関係が深いゲストを講演に招くこともできる。
健康管理や、社員の貢献に見合った年金制度など、本当に重要な手当てにカネを惜しんではいけない。グーグルの場合、オフィスの無料ランチや送迎のシャトルバスに関しては、かなりのコストを負担している。社員が健康で幸せであることは、会社にとってカネを投じる価値のある重要なことだと理解しているからだ。
7:報酬は「不公平に」払う
グーグルでは、同じ仕事をしながら、ある社員は1万ドル相当のストックオプションを、別の100万ドル相当のストックオプションを、報奨として受け取る場合もある。理由は単純。後者の社員はパフォーマンスがずば抜けていたからだ。
プロの野球チームを例に考えてみよう。デトロイト・タイガースがジャスティン・バーランダーと総額2億ドルを超える複数年契約を結んだのは、彼がサイ・ヤング賞を受賞した優秀な投手であり、よそのチームのエースとして対戦したくないからだ。
グーグルには、ライバル会社を制して最も優秀な人材を確保する軍資金がたっぷりある。しかしボックは、小規模な会社でも同じ方針をとれると語る。
8:社員を正しい方向に導く
優秀なマネジャーは、部下に命令したり変化を強要したりして、望ましい振る舞いを引き出そうとはしない。気付きにくいかたちで、ある方向へと導くのだ。
たとえば、社内の協力関係を促進したいときは、チーム全員に一斉メールを送り、個人の成功を称え、それらの成功をどのように結びつけていけばいいかアイデアを募る。
9:変化に少しずつ慣れさせる
マネジャーとしてチームのパフォーマンスを向上させようとして、うまくいかないときもあるだろう。実験的なプログラムを試す際は、方針や状況を明確に説明すること。
「(状況がわかっていれば)批判は支持に変わり、失敗しても好意的に解釈してもらえる」
10:物事を楽しみ、常にイノベーションを
完璧なワークフローや企業文化は存在せず、常に実験と革新が必要だ。革新は1回やれば終わりではないし、すべてを一度にやろうと思わなくていい。実験して、学習し、改良して、また試す。
「優れた環境は自己強化を導く。それがこのようなアプローチの長所だ。一連の取り組みが支え合い、創造的で、快活で、勤勉で、生産性の高い組織を築く」
(執筆:RICHARD FELONI、翻訳:矢羽野薫、写真:@iStock.com/maybefalse)
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