フランシスコ・ピサロは300人にもならないスペイン兵でインカ帝国を征服した人物だ。征服者という観点からすると、人類の歴史で最も有能な将軍だといえる。ピサロが征服したインカ帝国は徹底的な搾取の対象に成り下がった。大西洋の向こう側のスペイン国王はこのころ、植民地統治のために「エンコミエンダ制(Encomienda:委託するという意味のスペイン語から生まれた語)」という制度を公布する。征服者、すなわち派遣された軍人や官僚に許可状を与え、先住民を統治できるようにしたものだ。征服者たちはこの制度に基づき先住民から金品はもちろん、無制限の労働力を貢ぎ物の形で徴収した。そして、その代わりにキリスト教の信仰を広めた。
これは、先住民に対し「私たちはあなたたちをクリスチャンにしてやるから、その対価としてあなたたちが持っている全てを私たちにささげよ」という、実に奇怪な論理だった。今、南米大陸は世界最大のカトリック信仰地域だ。
1898年、米最高裁判所は「プレッシー対ファーガソン裁判(Plessy v. Ferguson)」の判決を下した。修正憲法第14条は法の前での白人と黒人の絶対的平等を保障したものにすぎず、肌の色に基づく分離自体を廃止したものではないという判断を下したのだ。従って、「分離されているが平等な(separate but equal)」機会を提供するなら合憲だというものだった。この判決により、米国社会では「white only(白人専用)」「coloured(有色人種)」などの分離が公然と行われるようになった。トイレさえあれば、白人専用と有色人種用に分離するのは法的に問題がないことだ。最高の知性が結集した米最高裁がこのような判決を下したということは信じがたいことだが、明らかな事実だ。「分離したという事実だけでも有色人種の子どもたちに有害な影響を与えるため、『分離されているが平等だ』という原則は正しくない」という最高裁判決が出たのは1953年のことだ。