【社説】隔離要請を拒否した疾病管理本部

 主に中東地域で発生する伝染病「中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)」感染患者の治療に当たっていた40代の女性が、自らも感染した恐れがあるとして疾病管理本部に隔離施設に収容するよう要請したが、基準を満たしていないとの理由で拒絶された。この女性は4日後の25日、MERSへの感染が正式に確認された。

 この女性は、高熱を発症し入院していたある患者と同じ病室にいた自らの父を4時間にわたり看病した。この患者は中東から帰国した直後から高熱が出ていたという。するとそれから4日後の今月20日、この患者は国内初のMERS感染者であることが確認され、国が指定する隔離病院に移送された。また女性の父親も翌21日に同じく感染していることが確認された。そのため女性は父の感染が確認されたのと同じ日に、疾病管理本部に対して自らへのMERS検診と隔離入院を要請した。ところが疾病管理本部はこの女性について、38度以上の高熱、あるいは急性の呼吸器疾患の症状がなく、検査と隔離の対象にならないとの理由で女性の要請を拒絶した。38度以上の熱がない場合、遺伝子検査を行っても感染が確認できないのがその理由だという。

 MERSは感染後の死亡率が41%に達する非常に危険な伝染病だ。正確な感染原因もまだ明らかになっておらず、ワクチンも開発されていない。伝染病には何よりも初期の対応が非常に重要だ。感染がいったん拡大してしまうと、何も手を打てなくなる恐れが出てくるからだ。そのため最初の患者が発生した段階で、感染が疑われる人に対しては徹底した隔離が必要だ。

 しかし現場の最前線で患者の治療や管理に当たるべき疾病管理本部は、この女性を含むMERS患者に対し、自宅での隔離対象に指定し管轄の保健所から経過観察を受けるよう指示しただけだった。その対象となったのは最初のMERS患者の治療や看護に当たっていた医師や看護師、さらにその家族など64人に上る。疾病管理本部は今回の問題で大きな批判が出たことを受け、患者と接触した人については希望すれば隔離施設を利用できるよう対応を見直した。

 もしこの女性が「感染の疑いはない」という疾病管理本部の説明をうのみにし、感染が確認されるまでの4日間、外出してウイルスをばらまいていれば、どのような事態が発生していたか想像するだけでも恐ろしい。今回のような疾病管理本部の安易な対応を目の当たりにすると、国の感染対策そのものにも疑いを持たざるを得ない。

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