スポーツのしおり
さまざまなスポーツの一瞬を、コラムとグラフィックスでとらえる企画です
【社会】ヘイトスピーチ許さぬタクシー ステッカー掲げ走行
ヘイトスピーチ、許さない−。大阪の街で、そんなステッカーを掲げるタクシーがある。大阪市住之江区の「日本城(にほんじょう)タクシー」だ。社長の坂本篤紀さん(50)が一月に発案し、五十四台に貼って四カ月。「差別はあかんと思っている人は実は多い」と手応えを感じる日々を送っている。 (相坂穣) 在日韓国、朝鮮人の住民が多い大阪市生野区の鶴橋で活発化した排外主義的なデモに、坂本さんが遭遇したのは昨年秋ごろ。「朝鮮人を殺せ」「ゴキブリー」などと、拡声器で叫んで歩くグループの中に、多くの若者が含まれていることが気にかかった。 自身もかつて、在日コリアンに差別的感情を持っていた。「地震が起きたら朝鮮人は火を付ける民族、なんて根も葉もない話を、年長者から聞いて育った」。中学や高校生のころ、朝鮮学校の生徒たちに「国に帰れ」などと、けんかを売ったこともあった。 しかし、十年ほど前「冬のソナタ」など韓国ドラマのファンになって、差別心は一気に消えた。「いかに薄っぺらい差別意識だったか。何も知らなかっただけ」と悟った。 法務省がヘイトスピーチ防止の啓発ポスターを作ったと知ると、すぐに「ポスターのデザインをパクって」ステッカーを百枚作り、一月下旬から車体に貼った。 「客商売の運転手が政治、宗教、プロ野球を語るのはご法度。ステッカーで不快感を与えないか」。部下の運転手百二十人の中には当初、懸念の声もあったが、取り越し苦労だった。運転手たちが客から抗議を受けることはほぼ皆無で、むしろ毎日のように「おれもヘイトスピーチ嫌いや」「勇気ある会社やね」と激励を受けるようになった。 「差別は心の問題。小さなステッカーやけど、国が法律で取り締まるより、効果あるかもしれへん」。坂本さんは、縦十一センチ、幅二十センチの黄色いステッカーをなでた。 PR情報
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