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2011年03月09日

グラディウスを創った男:町口浩康氏インタビューについて



疲れたのう……。
時間が無いのがひたすら辛い。オッサン1日平均睡眠時間3時間なんだけど………また入院せぬよう気をつけねば。ま、普通に働いてゲームしてゲーム作ってブログ書いてればこんなもんでしょう。あ、昔約束したとおり、ノベルゲームが完成したらこのブログは引退ってことで。

今回はグラディウス開発部チームリーダーだった町口浩康氏のインタビューを採り上げさせていただきました。インタビュー記事はセコいので、もう採り上げないと決めておったんですが、こういった貴重な記事は、やはり後世に残さねばならないと思い至った次第です(手抜きともいう)。ゲーム批評自体とっくに休刊になってますからなあ…。










それでははじまり














ゲーム批評1999年9月号「コナミ町口浩康インタビュー」より引用



グラディウスのヒントになったのは「レンズマン」

私がコナミに入社したのは、昭和57、8年ぐらいですね。入社した当時は、それほどゲームが好きじゃなかった、というか、知らなかったんです。入社して1からゲームを学びました。ゲーム性と言われる部分についても、ほとんど作りながら身についたという感じです。

最初はデザイナーをしていたんですが、しばらくして「デザイナーの見込みがない」ということになって(笑)、プログラマーに復帰したんです。入社当時はメダル機からビデオゲームまで色々と手がけたんですが、お蔵入りのものが多かった。それで、結果的に初めて世に出たゲームが「グラディウス」だったんです。






まず、私がチームを持つことになったんですけど、ゲームはとてもじゃないが個人の気持ちだけでは作れないということで、チーム全員で「何が作りたいか」と議論したところから始まりました。で、たまたまチーム全員が「シューティングゲームを作りたい」ということだったので、「じゃあシューティングゲームを作ろう」と製作が始まったんです。当時はナムコさんの「ゼビウス」が全盛期で、「どうせ作るんだったら、あれを越えよう」みたいな意気込みで頑張りましたね。横スクロールにしたのは、かつて「スクランブル」という資産がありましたので、それを活かす方向性で進んだからです。ですから「グラディウス」は、元々「スクランブル2」としてスタートしたんです。



スクランブル



最初の作品ということもあって、仕様一つ決めるのにも自信が持てず、不安でしょうがなかったです。そこで、とにかくアイデアを出して、実際に画面上で何度も何度も試しました。例えば「オプション」1つとっても、20個ぐらい動きのパターンを作ってみて、これは駄目だと思ったものから消去法で潰していく。グラディウスの製作期間はほぼ1年でしたが、その間ずっと試しては消去の繰り返しでしたね。

あとグラディウスの狙いとしてあったのは、それまでゲームでは表現できなかったことをやってみたい、というのがありました。今で言う「世界観」の部分ですね。独特の世界観があったことが、グラディウスの特徴になってる部分だと思います。ちょうど製作時期に合わせてバブルシステム(注1)というコナミ初の16ビットの基板が完成して、処理能力と表示能力が格段にアップしたんです。今では家庭用ハードに128ビットCPUが乗ろうとしていますが、当時の16ビットといえばかなり能力が高かったんです。それで、今まで表現できなかったことができるようになる、ということで色々と欲求が湧いてきましたね。ステージによってガラリとイメージが変わるのも、「いろんな世界を設けたい」という欲求から生まれたものなんです。ですからグラディウスは、そうした表現が先にあって、ゲーム性は後から付いてきたという作品なんです。









注1:バブルシステム
ROM交換が可能なシステム基板の一種で、バブルカセットと呼ばれる磁気バブルメモリにデータを蓄え、システム基板上にあるRAMへデータ転送する仕組みになっている。



ゲーム世界を表現する上で、SF映画などには非常に影響を受けましたね。当時、人気だった「スター・ウォーズ」、それに「レンズマン」(注2)ですね。チーム内で「どんなシューティングゲームを作ろう」と考えていた時に、ちょうど「レンズマン」が公開されまして、チーム全員で観に行ったんですよ。その時のインパクトは強烈でしたね。ストーリーではなく、プラズマなどの視覚表現の部分がとても印象的だったんです。で、帰った後で色々話し合う内に「あのプラズマみたいな表現をゲームに出そう」ということになって、それが武器であるレーザーになったわけです。





注2:レンズマン
1984年に公開された「SF新世紀レンズマン」。作画にCGを用いたことで話題となった。元々はE.E.スミス著の「レンズマン」シリーズをアニメ化したもの。



苦労した点は多々ありますが……。やはり容量による制限ですよね。メモリ容量は当時としては多かったんですけど、やはり足りなかった。自機がやられると、数画面ほど戻されますよね。実はあれは企画の仕様ではなかったんです。3画面単位で次の背景のデータを転送しているんですが、転送の途中の段階で終わっちゃうから、その転送時間を確保するために3画面前に戻しているんです。容量の関係でそうせざるを得なかったんですが、結果としてそれが復活パターン作りなどの面白さにつながったりしたのは幸運でしたね。

後はやはりパワーアップゲージですね。これが1番大変でした。スピードアップアイテムやミサイルといった、個々のアイテムを拾うシステムも試したんですが、どうも納得がいかない。やっぱりプレイヤーが自由に選択できるようにしたかった。取る取らないという選択じゃなくて、細かいコンディションセットアップができるような。とりあえずパワーアップアイテムを貯めよう、という話になったんですが、その後どうやって選択させればいいのか非常に悩みました。

そこで閃いたのが、当時のパソコンのファンクションキーですね。あの配列や機能をイメージして作ったのがパワーアップゲージです。その後作ったのがパワーアップボタン。当時は3つボタンのパネルってほとんどなかった。そこで2つボタンのバージョンも作ったんですが、やはりいまいち面白くない。ロケテストの反応なども考えて、最終的に3つボタンにしました。



グラディウスが成功したのは、チーム全員が様々なアイデアを持ち寄って議論して、チーム全体の意思で作り上げたところにあると思いますね。あとは、3つボタンの例もあるように、外部からの意見をあまり気にせず、強引に推し進めたことですかね(笑)。もちろんそれは、面白いという自信があったからですが。


アーケードゲームには2つの評価があって、いわゆるインカムというシビアな評価と、プレイヤーの評価ですね。この2つの評価に時としてギャップが生まれたりもするんです。アーケードゲームには色々な側面があって、インカムが悪くてもプレイヤーを呼び込む商品があったり、人気があるけど回転が悪いのでインカムが悪いものもある。グラディウスは人気はあったんですが、回転が悪くてインカムが悪かった。それでも1日平均で1万から8千円ぐらい稼いでました。作っている我々もそうだったんですが、以前は「上手くなればなるほど、長く遊べるゲーム」が良かったんです。でも今はそれだと厳しいですからね。ですから、長く遊べるゲームはコンシューマで遊んでもらえばいいのかなとも思います。ただ、やはりアーケードゲーム好きのお客さんにはゲームセンターに帰ってきて頂きたいですから、多少売上げが落ちても、回転が悪くても、長く遊べるゲームが必要だと思ったんです。それがグラディウス4を製作するきっかけでもあったんですけど。


昔から変わらないのは「技術じゃなくて企画が大事」ということです。どれだけハードがハイスペックになっても、大切なのはビジュアルじゃなくて中身、企画なんですよ。あとはその企画にどれだけ新規性があるのか、ということですね。ユーザーが楽しめるかどうか、新しい遊びなのかどうかを模索するのがゲーム作り、という考え方は変わってないと思います。ゲーム作りの大半は、最初のアイデアをいかに実現するか、なんですよ。いつも企画の人間に言っているのは、「ハードだとかソフトだとかコストだとかいった制限はすべて捨てろ。何を作りたいのか、何で遊ばせたいのかだけを考えろ」ということです。まずアイデアを閃いて、そこから実作業のことを考えればいいんです。これからゲームを作る人にも、そうした自由な発想とアイデアを大切にしてもらいたいですね。








グラディウスは様々な試行錯誤があって世に送り出されていたんですなあ。ネットを見てみると、グラディウス4の評価はイマイチだった様子。プレイしたことないけど。






そんじゃーオッサンはまたノベルゲー製作…。
やりたいゲームや書きたいこともあるんだけどね。
全国10人のファンの皆様、気長に待っててちょ。





がんばれ俺!!










おしまい



関連

暴れん坊天狗を創った男:中潟憲雄氏インタビュー
http://nesgbgg.seesaa.net/article/121982644.html


遠藤雅伸氏インタビュー:「ゼビウス開発秘話」
http://nesgbgg.seesaa.net/article/105211152.html


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http://nesgbgg.seesaa.net/article/139144340.html


魔界村を創った男:藤原得郎氏インタビュー
http://nesgbgg.seesaa.net/article/115080128.html





posted by ふうのしん at 10:44 | Comment(6) | TrackBack(0) | 企画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たまに見させていただいてます
不躾ながら確認させてもらうと
レイズマンはレンズマンでは・・・
ゲーム製作応援してます
がんばってください
Posted by 通りすがり at 2011年03月09日 13:11
グラディウスをプレイするために
ディスカウントストアの
ゲームコーナーに行ったら
生徒指導の教師がいて後日説教喰らったのを思い出しました…

あとバブルシステムは立ち上げの曲が綺麗なんですよね…
Posted by MEL at 2011年03月10日 03:04
>通りすがりさん

すいません、よく見たらレンズマンでした(汗)。あとで訂正しておきます。ご指摘ありがとうございました。

>MELさん
おはようございます。
そんな伝説が!!(笑)。インタビューでは触れられておりませんでしたが、グラディウスの曲は名曲そろいでしたね〜。25年前とは思えない完成度。グラディウス5とか出ないですかね。
Posted by ふうのしん at 2011年03月10日 06:28
更新お疲れ様です。

グラディウス5はPS2で出ておりますよー。
後、自機のビックバイパーも同社の「ZOE」ってゲームにゲスト出演してたりw
Posted by じぇふ茶 at 2011年03月10日 13:03
オッサン引退してまうの?
Posted by at 2011年03月12日 09:49
> どれだけハードがハイスペックになっても、大切なのはビジュアルじゃなくて中身、企画なんですよ。

ほんと、そうであってほしいです。
Posted by curo at 2011年03月15日 23:27
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