安保法案:首相「専守防衛は不変」…集団的自衛権の行使
毎日新聞 2015年05月27日 21時31分(最終更新 05月27日 23時54分)
集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案は27日、衆院平和安全法制特別委員会で実質審議入りし、野党党首らが質問に立った。安倍晋三首相は集団的自衛権の行使について「専守防衛の考え方は全く変わりはない。基本的論理は一切変更していない」と述べ、日本の存立が脅かされるなど行使容認の新3要件を満たせば、専守防衛に該当するとした。
専守防衛は安保政策の基本方針で、政府は相手から武力攻撃を受けた時に初めて防衛力を行使し、行使する際も自衛のための必要最小限度にとどまると定義してきた。
民主党の長妻昭代表代行は「専守防衛の定義を変えたとはっきり言うべきだ」と批判。維新の党の松野頼久代表も「専守防衛からずれてきている」と指摘したが、首相は「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険。これを防衛するのはまさに専守防衛だ」と反論した。
中東地域で集団的自衛権を行使する可能性について首相は「想定し得るのはホルムズ海峡の機雷除去だ。他の例は念頭にない」と強調。さらに「掃海船は脆弱(ぜいじゃく)で戦闘行為が行われている間は危険だ。オペレーションとしてできない」とも述べ、停戦合意前に集団的自衛権を行使して実施する場合も事実上の停戦合意後になるとした。
日本人を輸送する米艦船などを集団的自衛権を発動して防護する場合については「公海上においては間違いなくできるが、(他国の)領海に入るかは慎重に当てはめていく」と述べ、状況によって外国での実施があり得るとの認識を示した。
横畠裕介内閣法制局長官は「他に攻撃を防ぐ方法がないという場合」に個別的自衛権を発動して敵国のミサイル基地などを攻撃できるとする政府見解について「(新3要件でも)そのまま当てはまる」と答弁。条件を満たせば、集団的自衛権行使による敵基地攻撃も可能との認識を示した。
国際平和支援法案と重要影響事態法案では、自衛隊の後方支援の活動範囲は「非戦闘地域」から「現に戦闘が行われている場所」以外に拡大する。民主党の大串博志氏らは隊員のリスクが増大すると追及したが、首相は「自衛隊が活動する期間に戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に選ぶ。危険な状況になる前にあらかじめ柔軟に違う地域に移すことができる」と述べ、リスクは高まらないとの認識を改めて示した。
共産党の志位和夫委員長は後方支援を行う自衛隊が標的となる危険性を指摘。首相は「その可能性が100%ないと申し上げたことはない。部隊の責任者が判断して一時休止、退避するという判断は当然行わなければならない」と説明。「自衛官が武器を使用できるのは不測の事態に際して自己保存の権限による場合のみで、武器を使って反撃しながら支援を継続するようなことはない」と述べた。【青木純、飼手勇介】