安保法案:首相答弁に野党反発 「時間稼ぎ」「非論理的」
毎日新聞 2015年05月27日 21時56分(最終更新 05月28日 00時50分)
27日に衆院平和安全法制特別委員会で始まった安全保障関連法案の実質審議で、野党が安倍晋三首相の答弁に反発を強めている。海外での武力行使や自衛官のリスク増大に関する質問に首相が時間をかけて答弁するが、質問に直接答えることが少ないためだ。野党は「不誠実だ」と批判しており、審議は波乱含みとなりそうだ。【樋岡徹也、村尾哲】
「法律が変わったから(自衛官の)安全対策を増やす必要があるわけでなはい」。首相は民主党の大串博志氏が自衛官のリスクについて質問すると、自ら挙手して答弁した。
大串氏は、自衛隊の運用について中谷元防衛相の見解を求めていた。通常は野党議員が首相答弁を求めて紛糾するが、逆は珍しい。大串氏は「防衛相に聞いている。おかしい」と前のめりの首相の姿勢に反発した。
首相は「法案でリスクが増えるわけではない」など公式見解を繰り返す答弁が多く、野党席から「時間稼ぎだ」とヤジが飛んだ。それでも首相が「静かに聞いてください」「学校で習いませんでしたか」と声を荒らげ、浜田靖一委員長が「簡潔な答弁を」とたしなめる場面もあった。
民主の枝野幸男幹事長は記者会見で、ヤジに反応する首相を「自分のことは棚に上げている」と指摘。集団的自衛権の中東地域での行使を機雷掃海に限定したことを「論理的にありえない」と批判し、その後の集会で「うそつき首相とうそつき内閣は早く倒さなければならない」とボルテージを上げた。
維新の党も、自衛隊部隊が紛争に巻き込まれる懸念を指摘した柿沢未途幹事長に対し、中谷氏が「武器使用と武力行使の違いが分からないのか」と答弁したことに強く反発。28日の審議で謝罪を要求する方針だ。
首相や閣僚は、野党の論点に直接答えるよりも、政府見解を繰り返して議論の主導権を握る姿勢だ。野党質問が空回りする場面をみて、政府関係者からは「野党はネタ切れだ」との軽口も漏れる。民主内でも「首相の冗長答弁で逃げられた」「観念論より具体論で攻めるべきだ」と審議のてこ入れが必要との見方が出ている。