安保法案審議:自衛隊派遣に3基準 「慎重に政策判断」

毎日新聞 2015年05月28日 21時18分(最終更新 05月28日 23時40分)

 安倍晋三首相は28日、集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案の審議で、自衛隊の海外派遣に対する判断基準として(1)日本が主体的に判断する(2)自衛隊の能力、装備、経験に根ざしたふさわしい役割を果たす(3)前提として外交努力を尽くす−−の3点を挙げた。「法律をつくったとしても、やらなければいけないということではない。慎重な政策判断がある」とした上で、法案に盛り込まれていない判断基準を表明した。

 法案を審議する衆院平和安全法制特別委員会の総括質疑で、公明党の北側一雄副代表の質問に答えた。集団的自衛権の行使が可能となる新3要件については「憲法の精神にのっとった受動的な防衛戦略である専守防衛が我が国防衛の基本方針であることにいささかの変更もない」と改めて強調した。野党が自衛隊活動が飛躍的に拡大することへの批判を強めていることを踏まえ、自衛隊派遣については法案成立後も慎重に判断する姿勢をアピールした形だ。

 首相はまた、民主党の緒方林太郎氏が外国領域で集団的自衛権を行使する事例について追及したのに対し「今、念頭にあるのはホルムズ海峡が封鎖された際だけだ」と強調。南シナ海のシーレーン(海上交通路)での機雷掃海については「南シナ海では多くが迂回(うかい)できる。ホルムズ海峡のような(船舶の運航が)集中している海峡は想定しにくい」と述べるにとどめた。

 共産党の志位和夫委員長は「米国が先制攻撃による戦争を行った場合も、新3要件を満たしていると判断すれば集団的自衛権を発動するのか」と追及。首相は「国連憲章上、武力攻撃の発生が自衛権の発動の前提となり、仮にある国が何ら武力攻撃を受けていないにもかかわらず違法な武力行使を行うことは国際法上認められていない。我が国が自衛権を発動して支援することはない」と否定した。

 また、自衛隊の治安維持任務での派遣について「掃討作戦は行えない仕組みだ」と強調。「武器の使用権限も任務遂行型の使用はできるが、相手に危害を与える射撃が認められるのは正当防衛、緊急避難に該当する場合に限られ、活動範囲は限られてくる」と述べ、法案成立後も不可能だと強調した。【青木純、飼手勇介】

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