安保法案審議:野党、中谷防衛相を狙い撃ち 答弁不安定で

毎日新聞 2015年05月28日 21時41分(最終更新 05月28日 23時56分)

衆院平和安全法制特別委員会で指名した中谷元防衛相(奥右端)の代わりに安倍晋三首相(同3人目)が答弁に立ち、納得せず立ったまま抗議する民主・辻元清美氏(左端)=国会内で2015年5月28日午前11時56分、藤井太郎撮影
衆院平和安全法制特別委員会で指名した中谷元防衛相(奥右端)の代わりに安倍晋三首相(同3人目)が答弁に立ち、納得せず立ったまま抗議する民主・辻元清美氏(左端)=国会内で2015年5月28日午前11時56分、藤井太郎撮影
衆院平和安全法制特別委員会で民主・辻元清美氏に「質問しろよ」とやじを飛ばす安倍晋三首相。左は中谷元防衛相=国会内で2015年5月28日午後1時31分、藤井太郎撮影
衆院平和安全法制特別委員会で民主・辻元清美氏に「質問しろよ」とやじを飛ばす安倍晋三首相。左は中谷元防衛相=国会内で2015年5月28日午後1時31分、藤井太郎撮影

 安全保障関連法案の実質審議2日目となった28日の衆院平和安全法制特別委員会で、中谷元・防衛相が民主党の集中攻撃を受けた。答弁が不安定な中谷氏を狙い撃ちにしてミスを引き出す狙いだ。安倍晋三首相が助け舟を出そうと積極的に答弁を引き受けたものの、「早く質問しろよ」とやじを飛ばし、同党が猛抗議。首相が謝罪に追い込まれる波乱があった。

 「中谷大臣、中谷大臣。中谷大臣に今聞いている。総理に聞いてません!」。辻元氏は28日、中谷氏の名前を連呼し、答弁に立とうとする首相を制して中谷氏の答弁を要求した。2001年に集団的自衛権に関する答弁を閣僚でなく小泉純一郎首相(当時)に求めた「ソーリ、ソーリ」とは対照的な発言だ。

 結局、首相が中谷氏に代わり、「(現行の)切迫事態と(新たな)存立危機事態は事態の性格が違う」などと答弁。これに対し民主側は、政府が集団的自衛権の行使例に挙げる中東・ホルムズ海峡の機雷掃海や他国領域での集団的自衛権行使について、中谷氏に次々と質問を浴びせた。

 また、後藤祐一氏も「尊敬するリベラルな中谷氏に答弁してほしい」と要求。首相が隣の中谷氏の答弁資料を指さし、答弁内容を教えるような仕草に、後藤氏は「今首相は中谷氏に何と言ったのか。秘書官も中谷氏にレク(説明)をしている」と皮肉った。中谷氏は答弁したが、後藤氏は「3度質問したがきちんと答えていない」と批判し、一時審議が中断した。

 中谷氏は安全保障法制整備に伴う自衛官のリスク拡大論をいち早く否定して野党の反発を受けたほか、27日には維新の党の柿沢未途幹事長に「武力行使と武器使用の違いがわからないなら議論ができない」と発言するなど、与党内でも「中谷氏の答弁が一番心配だ」(公明党幹部)との声が出ていた。

 中谷氏は28日の委員会で柿沢氏に謝罪したが、民主党は今後も中谷氏に照準を合わせ追及する姿勢だ。自民、公明両党の国対幹部は同日、民主側の中谷氏指名に応じず、首相に答弁させるよう求める考えを確認した。

 一方、首相のやじが飛び出したのは、辻元氏が機雷掃海の危険性を指摘する発言中だった。首相が閣僚席に着席したまま、「早く質問しろよ」と不規則発言したため、委員会室が騒然となり、審議が紛糾。首相は「辻元氏が延々と自説を述べ、私に質問しないのは答弁の機会を与えないことになる」とやじの理由を説明。その上で「言葉が少し強かったとすればおわびしたい」と謝罪した。

 ただ首相は同時に、辻元氏による中谷氏の指名を「委員には(答弁者の)指名権はないということをよく勉強した方がいい。委員長が議事進行を仕切る」とも批判した。これに対し、民主の枝野幸男幹事長は同日、「首相としてあるまじきことが全国民注視下で起きた。野党のやじをけしからんと繰り返しながら自らやじを飛ばしている」と指摘。民主、維新両党は委員会後の理事会で、首相が6月1日の委員会冒頭で再度謝罪するよう要求した。【佐藤慶】

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