集団的自衛権:「存立危機事態」依然あいまい

毎日新聞 2015年05月28日 21時55分

 衆院平和安全法制特別委員会の28日の審議では、集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」とは具体的にどういう状況なのかが焦点となった。中谷元防衛相は「必ずしも(日本で)死者が出ることを必要としていない」と説明。野党は実際に国内で被害が出ていない段階での行使が可能になるとして批判を強めている。

 この日の審議で繰り返し取り上げられたのが、安倍晋三首相が行使の一例として挙げてきた中東・ホルムズ海峡での機雷掃海。同海峡は日本が輸入する原油の8割が通るシーレーン(海上交通路)。政府は機雷で封鎖されれば「日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険」のある存立危機事態に該当する可能性があり、そうなれば集団的自衛権を行使して機雷を取り除けるとしてきた。

 中谷氏はホルムズ海峡の機雷封鎖が存立危機事態に当たるかについて「単なる経済的影響にとどまらず、国民の生死に関わるような深刻、重大な影響が生じるかどうか」で判断すると説明。そのうえで「そのままでは日本が武力攻撃を受けた場合と同様の被害が及ぶのが明らかな状況」とも述べ、その時点では被害が出ていなくても、将来的に燃料が不足し、凍死者が出るなど人的・物的被害が出ることが確実視されれば、認定されるとの考えを示した。

 ただ、判断基準があやふやなことから、民主党の後藤祐一氏は「石油を求めて戦争をするための法案ではないか。太平洋戦争に極めて近い」と反発。首相は「単に石油が止まったからクリアするということではない。石油を求めて戦争をすることは全くない」と反論したが、後藤氏は「全く明快ではない」と批判した。

 維新の党の太田和美氏も「基準があいまいでどんどん広がることを心配している」と指摘。共産党の志位和夫委員長も集団的自衛権行使の範囲が「無限定になる恐れがある」と懸念を示した。

 政府は安全保障関連法案成立後も、「専守防衛」という防衛政策の基本方針には変更がないと繰り返し強調している。だが、民主党の辻元清美政調会長代理は、現行法では「日本への武力攻撃が発生する明白な危険が切迫している」状況でも武力行使は認められていないことを指摘したうえで、「日本が戦争に踏み切る基準の変更ではないか」と批判した。【青木純】

最新写真特集