5月7日に行なわれた衆議院憲法審査会(憲法改正原案についての調査と審査をする機関)での自由討議。ここで自民党の船田元(はじめ)憲法改正推進本部長は「緊急事態条項、環境権、財政規律条項の設定などのテーマを優先的に議論してはどうか?」と各党に呼びかけた。特に「(緊急事態条項によって)大規模な自然災害発生時に、国会議員の任期を延長できることなどを憲法にあらかじめ規定しておくのは急務だ」と主張したのだ。
これに対して自民党と連立与党を組む公明党の北側一雄副代表は「緊急事態(条項)の要件や手続きを定め、しっかり議論した上でやっておかないといけない」と述べつつも、同条項の新設に取り組むことに前向きの姿勢を見せた。共産党を除く5党が今後の議論の必要性に一定の理解を示しているという。
憲法9条の改正は、世論を含めて大きな反発が避けられない。まずは、「緊急事態条項」や「環境権」の新設など各党の合意が得やすいテーマから改憲を具体化することで、野党や国民の間で根強い「改憲アレルギー」を取り除きたい、というのが自民党の狙いなのだろうか。
一方、一部のメディアや「護憲派」は「あえて野党の抵抗の少ない緊急事態条項などの“お試し改憲”を優先することで国民を慣らし、本命である『9条改正』に道を開こうとしている」と自民党を批判。「安倍政権の狙いはあくまで“本丸”である9条の改正であり、姑息(こそく)な手段に騙(だま)されてはいけない」と、こうした動きに警戒を強めている。
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(取材・文/川喜田 研)