憲法改正の実現に向けて、いよいよ本格的に動きだした安倍晋三政権。
その第一歩として、自民党が積極的な姿勢を見せているのが、新たな人権のひとつとして憲法に「環境権」を加えることや、巨大地震などの「緊急事態」に政府が対応するための「緊急事態条項」の新設だ。憲法9条改正はおいといて、野党の合意が得やすい改憲を優先的に進めようとしていることから、“お試し改憲”とも呼ばれている。
だが、この「緊急事態条項」は内閣にフリーハンドの権限を与えるものであり、使い方次第では戦前のナチス・ドイツ独裁体制を生んだ「全権委任法」並みの破壊力を持つとも指摘されている。ちょっと待った! それって9条の改正よりもヤバくないか?
■「改憲アレルギー」を取り除くことが狙い
5月20日、首相としての通算在職日数が戦後6番目に長い1242日となり、祖父・岸信介を超えた安倍首相。
「まだまだこれからだ。在職日数ではなく、何を成し遂げたかが重要。政策に全力で取り組んでいきたい」
そう語る首相は今、国会で審議中の安全保障関連法案とともに、亡き祖父の悲願でもあった憲法改正を自らの手で「成し遂げる」ことに本腰を入れようとしている。
先日も訪問先の和歌山県で「(憲法改正に向けて)国民的な議論が高まり、深まり、広がっていくことが大切だ。自民党のほうで熱心に国民運動を展開していっていただけると思う」と発言。来年夏に予定される参議院選挙に向けて、改憲への動きを具体的に進めることへの強い意欲を見せている。
そんな安倍首相や自民党が、憲法改正の突破口のひとつにしようとしているのが「緊急事態条項」の新設だ。巨大地震など日本が大規模な自然災害に見舞われた際に、政府が迅速に対応できるためのものだという。