日本の本当の魅力を知ってますか? 訪日外国人向けメディア「MATCHA」が伝えたいこと
現在世界には日本語を学習する外国人が300〜400万人ほどいると言われています。株式会社Sen代表の青木優氏は、学生時代に行った世界一周旅行での体験から、海外で流行している日本文化に可能性を感じ、日本語、英語、中国語、韓国語、インドネシア語、やさしい日本語の7言語に対応した訪日外国人向けWebメディア「MATCHA」を立ち上げました。
- スピーカー
- 株式会社Sen 代表取締役 青木優 氏
7言語に対応した外国人向けWebメディア「MATCHA」
青木優氏(以下、青木):みなさんこんにちは。今、日本にはいろんな情報があふれていて、日々インターネットにふれて、スマートフォンにふれて、SNSにふれ、いろんな情報に接していると思います。
今日、僕がお話したいのは「メディアと熱量」です。
僕は今、MATCHAという日本に来る外国人向けのWebメディアを運営しています。このメディアは2014年2月3日にオープンしました。
会社自体は去年(2013年)の12月3日にオープンしたんですけど、今このメディアは世界163ヵ国からアクセスがあって、月にだいたい20万人の人が見てくれるサイトになりました。
言語が7言語対応しているんですけど、日本語、英語、中国語、韓国語、インドネシア語、やさしい日本語ってのに対応してます。
こちらは日本語のサイトで、
こちらは英語版のサイトです。
そして次にお話するのが、おそらくみなさんが目にしたことがなくて、おそらくこの世で一番おもしろい言語です。それが「やさしい日本語」です。
やさしい日本語とは何かというと、日本語学習者向けの日本語なんですね。世界に今300~400万人日本語を学んでいる人がいて、そういった人たちに向けて作っています。
全てに“ルビ”が振ってあって、すべての言語に行間がある。そういったメディアを運営してます。こんなふうにやさしく作られてるサイトです。
コンテンツは今3種類あって、1つがHOW、もう1つがPLACE、もう1個をFUNって僕らは呼んでいて。
HOWは、例えばSuicaの使い方、タクシーの乗り方、Wi-fiの使い方、ATMの使い方、お酒の注ぎ方とか。
日本ってすごい便利なんですよね。すごい便利なんですけど、それを知らない人からしたら不便利でしかなくて、そういったことを解決したい。そのように思ってます。
次がPLACEです。今は東京・京都・大阪を中心に取り組んでいまして、ライターの人が本当に紹介したい場所を紹介していってます。
今後日本全国、4年かけて取り上げていきたい、そういうふうに思ってます。
次がFUNです。FUNって何かというと、一言で日本の入口ですね。僕たちはこのメディアを多くの海外の人に知ってもらうために、1回リサーチをしました。
どんなリサーチをしたかというと、日本好きが集まっているFacebookページをリストアップしたんですね。
だいたい3000万いいね!分リストアップしました。3000万いいね!分のFacebookをリストアップして、そのうちの2800万いいね!はオタクコンテンツだったんです。
だったので、どれだけ日本のポップカルチャーが世界に受け入れられているか、それが目の当たりにしたんですけど。
そういった日本のポップカルチャーとか、そういったものを日本人目線でリアルに伝えていくってことで、ニコニコ超会議の取材に行っていたり、有名な声優さんに取材をしたり、いろんなことをしていってます。
メディアに必要なのは「熱量」を伝えること
僕たちがこのメディアを運営して、1つ大切にしていることがあります。それは冒頭のタイトルにもあった「熱量」です。
熱量って何かっていうと、それを本当に伝えたい、それを本当に紹介したいっていう思い、意思と僕たちは考えていて。
例えば今自分たちは、東京・京都・大阪を取り上げてるんですけど、清水寺の記事をまだアップしてないんですね。
おそらく、清水寺を取り上げられる人、プロのライターの人、たくさんいると思います。でも僕たちはそういった人よりも、清水寺だったら10時間話せますよっていう人に文章を書いてもらいたいなと思ってます。
どっちが文章としておもしろいかって考えたときに、僕は後者と考えていて、どっちが人を動かすかって考えたときに、僕は後者だと思ってます。
そして動かされた人がより良い体験ができるか。例えばNo.1ベストスポットin京都っていうふうにあおられて清水寺に行くよりも、圧倒的な熱量、切り口を持った上で、その場に行ったほうが僕は楽しめると思ってます。
そういった体験価値を熱量によって上げられるんですよね。
そうなると、そういったものを多くの人に伝えたくなる。そういった1人の体験が10人、100人、1000人、1万人にっていうのを、僕は広げたいなっていうふうに思ってます。
イメージでいうとこんな感じですね。1人の熱量がMATCHAっていうメディアを通じて世界、日本に出ていく。
その熱量をもって人が動いて、そのものが広がっていく。そういったことをしていきたい。そう考えています。
世界一周の旅で感じた日本文化の可能性
そもそもこのメディアを立ち上げたきっかけ、MATCHAを始めたきっかけっていうのを軽くお話させてください。
きっかけは国際日本学部と世界一周でした。僕は明大の国際日本学部っていう学部に通っていて、そこの一期生だったんですね。
ちょっと変わった学部で、例えばマンガとかアニメとかファッションとか、日本語とか日本の伝統工芸とか、そういったものを学問として学ぶ。そんな変わった学部でした。
そこでとある教授が「日本の文化は世界で流行っているけれど、日本人がそこでビジネスをできていない」
そう言ってたんですね。僕はそのとき世界一周するって決めてたんです。そのとき将来独立するっていうのを決めてて、チャンスだって思いました。
これから海外を周っていく上で日本の物がウケているかを見ながら旅をしようと思ったんです。
実際に、7ヵ月間世界一周の旅に出ました。
だいたい一昨年から去年まで行っていて、2011年から2012年まで周っていたんですけど、こんなふうに周っていろんな体験をしました。
例えば10日間人と喋ってはいけない瞑想をしたり、コスプレイベントに参加してみたり、ラクダに乗ったり、お寺に泊まってみたり。いろんなことをしてみました。
実際に日本のものが海外にウケてたんですね。本当一部では熱狂的なくらいウケていたんですけど、やっぱりそこに日本人がいない。
そういった問題を目の当たりにして、それ以外にもいろんな価値観が変わりました。
例えば人生は日本だけじゃないなって思ったり、あとは現体験にこそ価値がある、そう思いました。
今いろんな情報が世の中にあふれていて、その場に行かなくてもわかった気になってしまう。
そういったことって、多くあると思うんですけど、一人ひとりの体験、人生、選択は、その人の体験から基づいている、僕はそう思い、現体験に価値を見出すことをしたい、そう思いました。
ひとつ、気付いたことというか、知らしめられたことがあって、それが自分は日本を知らないなってことだったんです。
さっきのプレゼンでもあったと思うんですけど、やっぱり外に出て初めて日本を知りたいなって思ったんですね。
海外を旅して帰ってきて、日本を巡る旅をしました。
香川ではうどん屋の開店で隣のマックがつぶれる
これは香川の直島なんですけど。
ここが豊島で、香川にはここ3年連続行ってて、来月も行くくらいハマっちゃってるんですけど。
僕はそれまで東京以外出たことがなかったんです。自分の意思で東京以外出たことがなかったんです。いざ自分の意思で旅をしてみたらすごいおもしろかったんですね。
例えば香川ってうどんが有名じゃないですか。本当に視野のどっかにうどん屋があるんですよ。
道を曲がって、曲がるとまたうどん屋があって、お昼からうどんをはしごするって言葉があって、おもしろかったのが、マクドナルドが商店街にあったらしいんですよね。
マックが商店街にあって、隣りにうどん屋が2軒できた瞬間、マックがつぶれたって事件があったんですよ。
いわゆるその土地のパワーですよね。その土地のエネルギーが、グローバルカンパニーを撤退させるまでに追い込んでしまう。
僕はそれにすごい可能性を感じました。それは別府でも思いましたし、京都でも、大阪でも、金沢でも思ったし、そんなことを日本を旅をしてて思ったんですね。日本をおもしろいじゃんって感じました。
ただ気付いたことがひとつあったんです。それは何かというと日本の素晴らしい文化、いい文化がすごい勢いでなくなってるなっていうのを日本を旅してて思いました。
例えば日本酒です。日本酒はまあ、今徐々に盛り上がってはきてるんですけど、日本酒の酒蔵がここ30年間でなくなった数、知ってる方っていますか?
実は、3200から1600ヶ所に減っていったんですね。実際に働いている人からお話を聞くと、実際に稼働しているところは1000ヶ所以下って言われてます。
「それって何だろう?」ってすごい考えたんですよね。確かに人材不足とか、少子高齢化だったり、時代に合わなくなったり、そういった問題っていろいろあると思うんです。でも僕が考えたのはただ伝わってないだけなんじゃないかなって思いました。
どれだけ優れた文化でも、伝えなければなくなる
やっぱりどれだけいい文化でも、どれだけ優れた文化でも、人に伝わらなかったら人は動かないんですよね。
人が動かないとお金も動かないし、人がふれないことで時代がどんどんズレていってしまう。時代がズレてしまうことでなくなってしまう。そういった事例が今日本中で起きていると思います。
だったら僕は、それを伝えればいいんじゃないかなって思ったんです。日本のいい物、良い文化を伝えるってことを仕事にしたいなって思いました。
でもどうしようって悩んだんです。悩んだ時に自分の強みって何だろう、自分ができることって何だろうって考えた時に、ブログでした。
毎月、だいたい10万人くらいの人がここ3年間見てくれているブログを運営してるんですけど、自分が発信したことで変わっていったことって多くあったんです。
自分が発信した、お店に人が多く行くようになったり、自分が旅に関して書いたことで多くの人が旅に行ってくれるようになったり。
自分が紹介した映像が、例えば2万人が「いいね!」をしてくれて、世界150ヵ国200万回再生されたってことがあったり。
自分が本当に伝えたい、紹介したいと思って、熱量を持って発信したことで変わっていったことってすごいあったんですよね。
だったらそれを、日本中でやればいいじゃないかって思ったんです。そういった、自分が紹介したいものを持ってる人、たくさんいると思うんです。
でもそういったものを発信できるのがない、そう思ったんですね。
魅力的なものを見たら人は動く
もう1個、キーワードとしてあるのが、訪日外国人が1000万人を突破したっていうのが去年12月にありました。
海外を旅して、自分の学部でいろんな外国人と話してく中で思うのは、みんな同じ場所に行ってるんですよね。
東京・京都・大阪を行って終わりみたいなことが多くあるんです。それって何でかっていうと、それ以外のとこに行きたくないんじゃないんですよね。行かないんですよね。
何でかって言うと、その情報がないから、その魅力が伝わってないから。でも人って魅力的なものを見たら動くんですよ。その事例がこちらです。
長野地獄谷温泉っていうのがすごい有名なんですけど、猿が雪山に温泉入ってるんですよね。
ここのうちの6、7割の観光客が外国人って言われてます。東京から4時間かかるんですよ。すごい遠いんですよね。
でも外国人の人がすごい集まってる、これって何かっていうと、おもしろいコンテンツ、魅力ですよね。
そういったものが、メディアを通じて人に届いてるだけなんです。日本にはそういったおもしろいものってたくさんあるんですけど、メディアがない。
しっかりと発信するメディアがないがゆえに届かない、なくなってるっていう現状があって、僕たちはそれを変えていきたい。そんなことを思ってます。
日本には本当に届けるべきもの、たくさんあると思います。それを届けるべき人っていると思うんですよね。
さっきの清水寺の話じゃないんですけど、それを届けたほうがいい人ってきっといると思います。
そういった人たちを届けられる場を作っていきたい。つまり、一人の熱量が世界に届いて、それによって人が動いて、その文化ってものに交わって、時代とともに残っていく。
そんなことを作っていきたいですし、そういった潮流をこれから僕たちは起こしていきたい。
そんなことを思ってます。以上です。