神奈川・川崎市日進町の簡易宿泊所2棟が燃えた火災で26日、搬送されていた宿泊者が死亡し、犠牲者は計10人となった。市はこの日、事故対策会議を開き、再発防止に取り組む構えを見せたが、根本解決には程遠い。
出火元となった簡易宿泊所「吉田屋」は2階建てで届けられていたが、3階建てに改装されていた。吹き抜け構造だったために煙突効果が働いて火の回りが早く、多くの人が逃げ遅れた。市は町内にある宿泊所49棟を検査したところ32棟が吉田屋と同じような2階建てで申請された実質3階建ての“違法状態”だった。
この日の会議では緊急対策として、3階部分の使用停止を申し入れることを決めた。建築基準を守っているある宿泊所は「違法改築しているところは2階から3階への階段が急だったり、はしごを掛けているところがほとんどで、もしもの時、お年寄りは逃げられないだろう」と話す。
3階部分が利用禁止となった場合、一帯で500人以上があぶれることになる。市はアパートへの転居を促していくというが、簡易宿泊所に20年以上住んでいるという宿泊者は「市のアパートに行くんなら、とっくに行ってるよ。危ないと分かっていても、もうここから離れない」と話すなど、立ち退きとなれば、抵抗も予想される。3階から宿泊者がいなくなったとしても建物自体の木造吹き抜け構造は変わらない。またも大火事となる可能性は高いのだ。
「簡易宿泊所は生活保護者や路上生活者のための必要悪になっているから、行政はこれまで見て見ぬふり。本来、建築基準法違反なんだから、鉄筋コンクリートへの建て直しや営業停止の大なたを振るうべきなのに、この辺は地権関係も複雑で手出しができないんです」(地元関係者)
市は消防、福祉健康局など関係4局が連携を強化し、法令違反を見逃さないように徹底指導していくというが“ポーズだけ”の印象は拭えない。
【関連記事】