自社サービスの開発ロードマップを公開してみて感じたこと
boardというクラウド型業務・経営管理システムを開発・運営しているのですが、昨年の夏頃からなんとなく開発予定の機能をブログに公開していて、今年に入ってから「ロードマップ」という形で細かく公開するようにしました。
これについて、「なんで公開しているのですか」とよく質問されるので、背景とその効果について書いてみたいと思います。
元々はユーザさんからの要望
β版初期の頃から熱心に使って頂いていたユーザさんからの要望でした。
このユーザさんは、おそらくβ期間中、最も多くの要望をくれたユーザさんなのですが、ある日、
「たくさん要望出しましたけど、サービスの方針として対応できるできないはあると思いますし、対応予定の機能を公開してくれると、何が対応されるのかわかって良いのではないかと思いました。あとマーケティング的にもプラスになると思いますし。」
という感じの連絡を頂きました。
当時はベータ版を出してまだ数ヶ月という頃で、本格的Webサービスを運営するのも初めてだったので、どんな感じで問い合わせ対応したらよいかわからず、「なるほどー」という軽い気持ちで書き始めました。
3ヶ月スパンでの公開
実際にロードマップを見て頂けるとわかるのですが、ざっくり3ヶ月ごとに対応予定のものを公開しています。
この中での順番は決めておらず、また、やっぱり対応を保留・先送りにすること、逆にここに載っていなくて対応することもあります。
ですので、厳密にここにあるものを必ずやります、というスタンスではなく、boardとして、「こういう感じで予定しています」という意思表明という位置づけですね。
公開してみた効果1:スケジュール管理
個人的に、ずっと受託開発をやってきていて、今でもそうなので、「納期がないという状況」がモチベーション的にもスケジュール管理的にも難しかったので、それが、「公開したからにはやらなければ」という状況になったのはすごく良かったです。
最近、僕自身は、受託案件の「開発」からは抜けているのですが、営業やプロマネは引き続きやっていて、相変わらずいくつも受託案件を抱えている状況なので、このロードマップがなければ、boardの開発ペースを落としてしまっていたかもしれません。
受託開発と自社開発を平行してやっていると、どうしても受託に引っ張られてしまい、自社開発の時間を割けなくなってしまいがちですが、ロードマップのおかげで継続して開発できたかなと思います。
公開してみた効果2:好評だった
思いのほか好評でした。
頂いた要望を全て対応できるわけではないので、ロードマップを公表すると、「対応しないもの」や「優先度が低いもの」が明確になってしまうので、どういう反応があるか少し怖い部分はありました。
ただ、実際に公表したところ、「どういう方向で進化をしていくつもりなのか明確になって、利用するかどうかの判断の参考にした」「透明性があって好感が持てた」など、総じて好評でホッとしました。
元々、開発予定の公開を提案してくれたユーザさんが「マーケティングにもプラスだと思うので」というのは本当だったなと。このユーザさんに感謝です。
公開してみた効果3:要望に右往左往しなくなった
以前、「受託開発の会社が本格的にWebサービスを開発・運用してみてぶつかった課題(只今5ヶ月目)」に書いたように、要望の対応について、どういうスピード感でやっていくべきなのか、優先順位付けをどうするかなど、最初の頃は非常に難しかったです。
ただ、ロードマップを公開することで、ある程度直近やることが明確になっているため、よほど緊急性の高いもの以外は、次のスパン以降で対応するもの、という一次切り分けが自動的にできるようになりました。
これは精神的に結構楽になったなという感じです。
「競合から見られるのでは?」
「競合から見られるのでは?」というのは良く聞かれます。
でも、競合をほぼ意識していないんですよね。もちろんある程度「把握」はしていますけど、たぶん、それを意識しながら作ってたらいいものが作れないと思うので。コピーを作っても仕方ないですし。
また、「見積書・請求書作成サービス」という観点では後発で、まだまだユーザ数も桁が違うと思うので、そんな気になる存在にもなっていないでしょ、と考えています。
「競合」よりも「使って頂いているユーザさん」に意識を向けるべきだと思っていて、ロードマップの公開は、ユーザさんにとってはメリットがあるようなので、今後も続けていきたいなと思っています。
もともと、「アイデアはどんどん外部の人に話すべき」と思っています。それによって色々フィードバックを得られますし、同じアイデアを考えている人は世の中たくさんいると思うので、大事なのは行動に起こすこと、手を動かしてアウトプットすること。隠しても仕方ないですからね。
ロードマップの公開も同じ感覚です。