経営危機に再び直面するシャープの経営陣に対する社内の求心力低下が懸念材料として浮上している。14日に発表した中期経営計画は、国内で3500人規模の希望退職を募ることを盛り込む一方、危機を再燃させた「トップ3」はなぜか経営陣に残留。再建策の肝だった「液晶事業の分社化」は直前になって取り消された。会見で、高橋興三社長は「社員とどう向き合うかは今日から始まる大きな課題」と述べたが、“捨てられない経営”への不満で社内の人心離れは加速している。(織田淳嗣)
「あれはなんだ。どうなっているんだ」
14日、新しい中期経営計画を発表する記者会見の映像をイントラネット(企業内通信ネットワーク)で見ていた亀山工場(三重県亀山市)所属の社員から、怒りの声があがった。液晶事業の分社化について、高橋社長が「現時点で考えていない」と否定したためだ。
関係者によると、12日の時点まで、発表資料の「カンパニー制の導入と狙い」という項目に「将来の分社化も視野に」という文言が入っていた。ところが、発表の直前になって資料を作成している「構造改革実行本部」が削除したという。
「液晶事業の分社化」はシャープ再建に向けた最大の目玉だった。市場変動が大きく変わり、浮き沈みの激しい経営の“不整脈”でもある液晶事業を本体から切り離し、外部の資本を取り込み資金調達をしやすくした上で競争力を高める。シャープの発言権は弱まるが財務状況からすれば不可避なシナリオだった。4月末、シャープの主力取引銀行のみずほ銀行と三菱東京UFJ銀行も「液晶事業の分社化」を前提に、2000億円の資本支援で合意していた。
当然、会見では分社化への質問が相次いだ。しかし高橋社長は「液晶を無くしたら、中期経営計画(の業績)が成り立たない。社外分社の考えは全くない」と完全否定した。
当の液晶部門は、分社化が報道された直後こそ衝撃が大きかったが、“活路”として前向きにとらえる動きがあったが、肩すかしをくらった格好だ。
確かに出資先も決まっていない中、経営トップが「社外資本の注入」を明言すれば今後の交渉相手に足もとをみられかねない事情もある。また、他の事業も分社化や売却につながるとの社内の不安を抑え、一枚岩を維持したい考えも透けてみえる。
copyright (c) 2015 Sankei Digital All rights reserved.
Facebookコメント