(英エコノミスト誌 2015年5月23日号)
飛ぶ鳥を落とす勢いの企業の株価が不可解な暴落に見舞われた。
「人類社会の発展の歴史は、エネルギーの発見と開発の歴史である」――。中国屈指の億万長者の1人、李河君氏は5月20日、こんな壮大な言葉をもって、北京のオリンピック森林公園近くにあるクリーンエネルギー専用の巨大展示センターを落成させた。
そのイベントで、李氏の会社は未来の自動車向けのソーラー技術など、同社が開発中だという派手な装備品をひけらかした。
李氏が北京で熱弁を振るっていた頃、香港では、李氏の非公開企業、漢能控股集団(ハネジー・グループ)の上場子会社である漢能薄膜発電集団(ハネジー・シン・フィルム・パワー・グループ)に驚くべきことが起きていた。
会社の年次株主総会に李氏が出席しなかったことに動揺してか、投資家たちが漢能薄膜の株式を投げ売りしたのだ。
ほんの数時間で半分近い時価総額が消滅
前日には約400億ドルあった同社の株式時価総額は、規制当局が介入して取引を停止するまでに半分近く失われていた。ある試算では、李氏はほんの数時間で約140億ドルの個人財産が消失するのを目の当たりにしたという。
漢能薄膜は、太陽に近づきすぎた一番最近の中国のイカルスにすぎない。中国のソーラーエネルギーの草分け、尚德太陽能電力(サンテックパワー)は世界最大のクリーンエネルギー企業に上り詰めた。同社最高経営者(CEO)の施正栄氏は中国一の富豪になった。
ところが、ソーラー業界の世界的な低迷と会社の財務不正疑惑によって、サンテックパワーは2013年に壮大な破綻劇を演じることになった。