Updated: Tokyo  2015/05/28 00:17  |  New York  2015/05/27 11:17  |  London  2015/05/27 16:17
 

ハリスのヘロー氏、企業統治で日本は「2点」-安倍改革でも

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  (ブルームバーグ):「日本のコーポレートガバナンスは30年遅れている」-。米運用会社ハリス・アソシエイツのデービッド・ヘロー最高投資責任者(CIO)はこう批判する。企業統治(ガバナンス)が透明であれば、東芝の不適切会計のような不祥事は発生しないだろうとの認識も明らかにした。

ヘロー氏は電話インタビューで日本企業のガバナンスについて「取締役会のメンバーが多過ぎるし、多様性にも欠ける。内部留保も多過ぎる」と指摘。安倍晋三政権が改革を始めた企業統治はまだ10点満点中の2点で、10点を目指してさらなる前進が必要だと述べた。

日本では6月から上場企業に独立(社外)取締役2人の選任を求めるコーポレートガバナンスコードが導入されるほか、投資家の規範を定めたスチュワードシップコードの受け入れも始まった。ブルームバーグのデータによると、TOPIX構成企業の株主資本利益率(ROE)平均は2年前の5.9%から改善し、8.2%となっている。

ハリスは1350億ドル(約16兆4153億円)の資産を運用する。CIOのヘロー氏は2010年に運用調査会社モーニングスターから10年間の運用で最高の海外株式ファンドマネージャーに選ばれた。ブルームバーグのデータによると同社は9本のファンドを運用、日本企業では大和証券グループ本社の13.75%、メイテックで12.6%を保有する筆頭株主だ。

東芝-オリンパス

東芝 では4月に不適切会計が発覚。第三者委員会を設置して調査に入り前期決算の発表も延期した。同社は商法改正で2003年に認められた委員会等設置会社にいち早く移行。14年の非営利団体日本コーポレートガバナンス研究所によるガバナンス体制に関するアンケート調査では回答企業118社の中で19位に選ばれている。

ヘロー氏は「東芝の問題は取締役会がきちんと機能することが企業にとって決定的に重要だということを示している」と指摘。「もし企業のガバナンスがクリーンであれば、活動的で経営に疑問を持ったりするメンバーもいる。優秀な監査委員会があれば、このようなスキャンダルは起こらない」との見方を示す。

ハリスは11年に表面化したオリンパスの巨額損失隠し事件の当時、同社の大株主で株価急落の影響も受けた。同社は「飛ばし」による損失処理を指摘した当時のマイケル・ウッドフォード社長を追放したが、後に事実を認め経営陣を刷新した。ヘロー氏は12年10月に「今回の問題はいい形で終息した」と宣言し、同社株 の保有を2倍に買い増した。

資本効率

ヘロー氏は刑事事件やウッドフォード氏による損害賠償請求訴訟にまで発展したオリンパス問題について、「日本のガバナンスの変化に与えた影響は大きかった」と振り返る。「この問題を受け、日本は問題を見ないふりをして過ごすことも、きちんと対策を打つこともできたが、結局、後者を選んだ」と述べる。

証券会社CLSAとアジアコーポレートガバナンス協会によると、アジア企業の統治体制ランキングで、日本は12年の5位から3位に上昇した。一方、大和総研の鈴木準主席研究員の調査によれば、14年の金融を除く日本企業の対GDP比内部留保額は48%で仏、独の約20%、米の10%未満に比べ多い。

ハリスのヘロー氏は内部留保について「バランスシートの健全性は大事だが、5万ドルの車に500万ドルの保険をかけるのは無駄だ。保険のかけすぎは保険の不足と同じくらい罪深い」という。日本では6月下旬に株主総会シーズンを迎える。ヘロー氏は「資本効率を上げれば、アクティビストたちも文句を言えないだろう」と語った。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 Tom Redmond tredmond3@bloomberg.net;東京 谷口崇子 ttaniguchi4@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Marcus Wright mwright115@bloomberg.net; Sarah McDonald smcdonald23@bloomberg.net 平野和, 持田譲二

更新日時: 2015/05/27 00:00 JST

 
 
 
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