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【政治】

<柳沢協二氏の安保国会ウォッチ> 国民のリスク高まる

 集団的自衛権の行使などを含む安全保障関連法案が国会審議入りした。論戦の行方は日本の安全保障政策を大きく左右する。かつて政権中枢で安保政策に関わった元内閣官房副長官補・柳沢協二氏に論戦を斬ってもらう。

  枝野幸男・民主党幹事長「集団的自衛権の部分容認などで、抑止力はなぜ高まるのか」

  安倍晋三首相「いかなる事態にも切れ目のない対応が可能となり、日米同盟が完全に機能する。世界に発信することで抑止力は高まり、(日本が)攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」

 首相は「日米同盟が強固だと抑止力が高まる」と漠然としたことしか言わない。「国民全体のリスクが低くなる」とも言ったが、二つの面で誤りだ。

 一つは、法案では米国の作戦についていって平時から米艦を守ることで、日本が攻撃を受けるリスクが高まる。南シナ海のような日本から離れた場所で米軍の戦闘を支援すれば、本土の防衛力が割かれる。

 米艦への抑止力は高まるが、逆に日本の抑止力は高まらない。日本は現場指揮官の判断で「切れ目なく」米艦を防護し、日本とは関係のないところで米中が衝突した時、米中の対立に自ら巻き込まれる要素がある。

 二つ目は、海外で武器を使う機会が多くなるということは、敵と戦うということ。だがテロリストに抑止は効かない。イスラム過激派、武装勢力と敵対すると海外の日本人のリスクは高まる。国内テロは警備でどう防ぐかということだが、危険は高くなる。

 自衛隊は今までできなかった活動をやることになるのだから隊員のリスクは確実に高まる。武器を使う機会が増え、相手から攻撃される機会が増えることは常識として認めないといけない。災害救助や訓練、人道支援は敵がいない任務だが、これからは敵が撃ってくるのだから「今までと変わらない任務しかしない」と言うのは不誠実で非常識だ。そのような言い方は国民に通用しない。 (金杉貴雄)

 やなぎさわ・きょうじ 東大卒業後、旧防衛庁に入り、運用局長や官房長を歴任。2004〜09年に小泉、安倍、福田、麻生の4政権で安全保障担当の官房副長官補を務めた。NPO法人国際地政学研究所理事長。68歳。

 

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