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【政治】

武力行使 政府の裁量 首相「総合的に判断」強調

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 他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案は、二十六日の衆院本会議で審議入りした。安倍晋三首相は集団的自衛権の行使が可能となる「存立危機事態」の認定について「政府が総合的に判断する」と、厳格な判断基準を示さなかった。集団的自衛権行使は政府の裁量に任されることが鮮明になった。首相は、焦点の一つとなる他国の領域で武力行使する海外派兵は憲法上許されないとして、法案に禁止を「重ねて規定する必要はない」と表明。一方、戦時の機雷掃海は例外とし、他国領域での武力行使に余地を残した。

 首相は、どういう状況が存立危機事態に該当するかについて「個別具体的な状況に即し、政府がすべての情報を総合して客観的、合理的に判断する。一概に述べることは困難」と説明。その上で、国際紛争でエネルギー輸入が途絶えた場合などに「国民の生死に関わるような深刻、重大な影響が生じるか否かを総合的に評価する」と述べた。首相の答弁は、過去の記者会見や国会での抽象的な説明を繰り返すにとどまった。

 首相は、武力行使を目的に自衛隊を他国領域に派遣する海外派兵について「一般に自衛のための必要最小限度を超える」との憲法解釈を説明。「集団的自衛権を行使する場合も変わらない」と述べた。戦時の機雷掃海は「民間船舶の安全な航行を確保することが目的で、あくまでも受動的、限定的な行使だ。外国領域でも新三要件を満たすことはあり得る」と述べた。

 海洋進出を強める中国を名指しし、日本の安全保障環境が厳しさを増しているとも強調。法案が成立すれば日米同盟の強化で抑止力が高まり、日本が攻撃を受ける可能性が低下すると主張した。「政治家は平和を願うだけではなく、果敢に行動していかなければならない」とも強調。法案の今国会成立を目指す考えを重ねて表明した。

 本会議では自民、公明、民主、維新、共産の五党が質問に立った。法案は二十七日の衆院平和安全法制特別委員会で実質審議に入る。

 <武力行使の新3要件> 安倍政権が昨年7月、集団的自衛権行使を認めるために閣議決定した要件。(1)日本に対する武力攻撃、または日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある(存立危機事態)(2)日本の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない(3)必要最小限度の実力行使にとどまる−場合に武力行使できるとした。

 

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