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【政治】

平和主義を守ろう 安保法案 きょう審議入り

2015年5月26日 07時08分

 他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認をはじめとする安全保障関連法案は二十六日の衆院本会議で、中谷元・防衛相による趣旨説明と質疑が行われ、審議入りする。自衛隊が海外で武力行使したり、地球規模で他国軍を戦闘支援できるようにする法案の問題点について、野党側は安倍晋三首相ら政府側の見解をただす。首相は夏までに成立させると明言している。

 法案は、武力攻撃事態法や自衛隊法など十本の現行法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と、国際紛争時に自衛隊が他国軍を随時支援できるようにする新法「国際平和支援法案」の二本で構成。一括法案の内容は、海外での武力行使から人道復興支援まで幅広いが、審議を急ぎたい政府が一本化した。

 衆院平和安全法制特別委員会は二十五日の理事懇談会で、二十七、二十八両日に首相が出席して審議することを決めた。二十九日に首相が出席しない一般質疑を行った上で、六月一日に首相出席の集中審議を実施する日程でも合意した。

 与野党は原則として週三日のペースで審議していくことで一致。特別委に常時出席する閣僚は、中谷氏と岸田文雄外相とすることも決めた。

◆名古屋本社論説主幹 深田実

 いわゆる安保法案の国会審議がいよいよ始まる。二つのことを指摘したい。

 一つめは、日本はやはり平和主義を守らねばならぬということだ。

 戦後日本はアメリカの平和を受け入れ、頼ってもきた。繁栄も享受した。同時に先の大戦の反省を踏まえ、世界に誇ってもいい平和主義を築いてきた。

 安保法案とは、要するに自衛隊を限りなく戦場に近い場所へ送り出すということだ。戦闘に巻き込まれるかもしれず、戦闘になる恐れがあり、戦後七十年かけて培った平和主義が崩れるかもしれない、ということだ。やすやすと受け入れるわけにはゆかない。

 平和とは、戦争とちがって目立たないものである。平時はニュースになりにくい。しかし振り返れば、日本のアジアや中東諸国への経済支援は群を抜いていた。貧困撲滅と教育普及は軍事に劣らぬ力でもある。私たちは非軍事的貢献の大きさをもっと自覚してもいいのではないか。

 日本は米同盟国ではあるが、なお一般に中立的国家という印象をもたれている。アジアの一員でもある。アメリカの手足となるより紛争対象との懸け橋となるべきだろう。世界貢献には日本なりの仕方がある。専守防衛からもし踏み出すなら、得るよりも失うものの方が大きいだろう。

 二つめは、国会の役割である。

 国会は、憲法にいう「全国民を代表する」機関である。原理的には国民意思の公正かつ忠実な反映でなくてはならない。しかるに世論調査などでは、今国会での安保法案成立について賛成よりも反対の方がかなり多い。

 議員は特定の問題について選挙の投票で選ばれたわけではない。問題が重大なほど選挙民の声を聞き、考え、行動せねばならない。

 法案の審議はもちろん尽くされねばならない。国民はしっかりと見ている。是とするか、非とするか。

 平和主義を重く見るのなら、今国会で決める必要はないし、出直してもいいのである。

(東京新聞)

 

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