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ネットでテレビをもっと便利に。MPEG-DASHプレーヤー開発、Hybridcast 2.0で何が変わる?
(2015/5/26 22:28)
東京・世田谷区にあるNHK放送技術研究所において、テレビ関連の最新技術を一般公開する「技研公開2015」が5月28日から5月31日まで開催される。公開前の26日に行なわれたマスコミ向けの先行公開から、HTML5対応ブラウザ向けのMPEG-DASH視聴プレーヤーや、ハイブリッドキャスト(Hybridcast)、クラウド活用の新しい視聴システムなど、放送とネットの連携に関する展示の模様をお伝えする。
MPEG-DASH視聴プレーヤーとコンテンツ配信技術
NHKは26日、PCやスマートフォンなどのモバイル端末向けに、MPEG-DASH視聴プレーヤーを開発したと発表。MPEG-DASH(Dynamic Adaptive Streaming over HTTP)は、視聴する回線状況に応じた適切な画質で配信できるアダプティブ配信を可能にするもので、配信設備として、スマホ用やPC用などを個別に用意することが不要なのが特徴。
HTML5対応のWebブラウザに向けた動画配信であるMPEG-DASHを採用し、'14年6月にIPTVフォーラムで策定されたハイブリッドキャスト運用規定(IPTVFJ STD-0013 2.0版、MPEG-DASH IPTVFJ profile)にも準拠していることで、放送局などは端末に関わらず同一方式で動画配信が可能となる。今後は、安定して途切れにくい大規模な動画配信の実現を目指すという。
今回のデモには、パナソニックVIERAの'15年春モデルを使用。ハードウェアはそのままで、NHKのMPEG-DASH視聴プレーヤーを実装した形で使っているという。
MPEG-DASH視聴プレーヤーを活かした新しい動画配信サービスの例として、VODのNHKオンデマンド新機能を紹介。
テレビとモバイル端末のプラットフォームを共通化することで、テレビ/スマホ/タブレットのいずれかでログインすると、手持ちのどの端末でもVODを視聴可能になる。
また、個人の嗜好に合わせた動画に差し替えるなど、視聴者それぞれに応じた細かいサービスが実現できるという。ARIB-TTML方式の字幕にも対応するほか、イベントメッセージによる緊急速報の表示なども行なえる。
アダプティブストリーミングに対応したことで、移動時にスマホで視聴している時にも、通信速度の変化に応じた画質で視聴できる。
クラウド技術を活用して、過去に放送された番組から観たいものを簡単に探して視聴するサービスの研究も進められている。視聴中の番組に関する出演者名などが「タグ」として表示され、その中から興味のあるタグを選んで、多くの放送番組の中からテレビで放送中の番組を選ぶようにザッピングしながら探せるという仕組みを紹介。キーワードに関連した番組を見つけることができるだけでなく、選んだ映像とさらに関連した他の映像も候補として表示することで、今まで知らなかった映像と出会う機会も創出できるという。
視聴ソフトウェアをクラウド側のサーバーで実行することで、ユーザーの視聴端末に合わせた映像と音声だけを通信ネットワークから送信するという点も特徴。端末側の負荷が減り、スマートフォンなどの機種を問わず、安価な端末で視聴できるのがメリットだという。
民放もVODと放送の連携を提案
NHKだけでなく、民放各社も同様にVOD映像サービスと放送を連携させたサービスを提案している。特に民放の場合、MPEG-DASH視聴プレーヤーを使ってCMも見せることができるため、インターネット広告収入も得られるのがメリット。
TBSは、ハイブリッドキャストとMPEG-DASH視聴プレーヤーを使った「見逃し配信サービス」と、放送番組をすぐに配信映像として使えるようにする「VODパッケージ」の自動生成システムを紹介。
見逃し配信は、ユーザーの年齢や性別など属性に応じておすすめの番組が見つかるというもので、放送済みの番組から候補が表示。その中から選ぶと、本編だけでなくCMもその視聴者に応じてレコメンドされた内容が放送される。リアルタイムの放送ではないため、観たCMに関連する他のCMを引き続き見たり、CMに登場する商品の詳細を観るといった自由な視聴が可能になる。
「VODパッケージ」は、放送局側が、放送済み番組を自動でVOD番組としてサーバーに保存することで、視聴者が「昨日の番組」などから選んで観られるというもの。個人で全録レコーダを持っていなくても、テレビ局側が番組をサーバーに貯めておいてくれるという形に近い。普通のVODとは異なり、観たい番組が明確に決まっていなくても、全録レコーダでいう“過去番組表”のような仕組みで、気になる番組を探して観るといった気軽なさかのぼり視聴を可能にするという。
フジテレビは、4Kテレビ向けの「プレミアム配信動画視聴」というサービスを提案。地上波のHD放送を観ている時に、4Kで同じ番組のコンテンツがある場合は、希望すれば4K配信で楽しめるというもの。配信のため、番組をオンエア途中から見つけた場合も最初にさかのぼって視聴できる。4K映像はH.265/HEVCの16.8Mbpsで、MPEG-DASHのアダプティブビットレートに対応。
本編は自由に巻き戻しなどが可能だが、CMはスキップできない。リアルタイムの放送でCMに入った時は、配信映像でもCMに入り、本編に戻ると、配信映像も中断したポイントから再開となる。これにより、放送でも配信でも確実にCMを届けられる。
放送とネットのコンテンツ同期技術
そのほかにも、ハイブリッドキャストでは、ネット経由で受信したコンテンツを放送番組に同期して表示する技術を研究。例として、スポーツ中継時に、放送とは別カメラの映像や試合進行に応じた成績などのデータをネット経由で取得して表示することで、より深く競技や選手などを知ることができるということを紹介している。
視聴端末としては、テレビだけでなくタブレットなど携帯端末を手元で操作して観るということを紹介。これにより、スポーツ中継などマルチカメラで撮影した映像で、視聴者が好きな視点を選ぶことも可能になる。タブレットで放送番組を映しているテレビと同期してネットのストリーミング動画を再生することで、放送信号に含まれる基準時刻情報をテレビからタブレット側に転送、ストリーミング映像の再生タイミングを細かく制御することで、様々な視点の映像を同じタイミングで表示できる。
タブレットなど別の端末だけでなく、テレビ画面上にデータを同期表示することも可能。同じくスポーツ中継で、リアルタイムにネットで取得したデータを、放送の基準時刻と実時刻(UTC)の両方をクラウドサーバーから提供し、放送との正確な同期を可能にするという。デモで使われたバレーボールの試合では、サーブからスパイクまで、どの選手がボールに触ったかを、画面上に顔写真付きで表示していた。今回のデータは、バレーボール協会が記録したものを映像と同期して表示していたという。
IPTVフォーラムで策定されたハイブリッドキャスト技術仕様2.0では、放送と通信の同期のための機能(放送基準時刻の取得API)が追加規定された。これを受けて、今回の展示では試作の受信機に実装した時刻取得APIにより同期を実現。今後の実用化に向け、実際のインターネットを通した検証や、配信/表示の低遅延化について検討。市販のテレビなど受信機への機能搭載に向けた運用規定の策定に取り組むという。
放送とネットサービスをつなげる基盤技術
前述したハイブリッドキャスト技術仕様 2.0では、NHKや民放の放送事業者だけでなく、スマホアプリ開発などの様々な事業者によるアプリをテレビ上で楽しむことが可能になる。さらに「データハブ」の活用により、放送の映像だけでなく、ネットから取得した情報とも連携したサービスが実現可能になる。
「番組情報データハブ」は、キーワード検索など従来の方法では見つけられない、放送局内外のさまざまなサービスやコンテンツをまとめて自動で利用可能にするために、コンテンツの情報を機械処理可能な「LOD(Linked Open Data)」形式で記述、蓄積する技術により実現するもの。LODはW3C(World Wide Web Consortium)で規格化が進められている、コンピューター処理可能なデータを公開・共有するための技術の総称。
今回の展示では、番組の流れに応じてテレビ画面上にキーワードが表示され、手元のタブレットで関連する情報を調べられるという例や、Webサイトでの検索時に、ある病気について調べると、症状など一般的な検索情報だけでなく、その病気に有効と思われる食品など、有益な情報を合わせてチェックできるということなどを紹介している。
スマートフォンとTwitterなどを合わせて見るといった、テレビ視聴の多様化に合わせ、ユーザーの端末や視聴環境などを問わずに共通した画面や操作で番組を視聴できる基盤技術も開発中。新しいテレビの見方として、放送番組と配信番組をシームレスに行き来するという視聴スタイルを提案。例えば、家でサッカーを観る場合、テレビ側では「オンエア中の中継を受信したほうが高画質」と判断し、自動で「放送」を選択。一方、フルセグ搭載ではないタブレット視聴の場合は、ネットで同時配信されている映像が、端末側の判断で選ばれる。
視聴中にSNSの友人がつぶやくと、その情報が画面の隅などに表示。気になった場合はそのコンテンツを選択すると、状況に応じて放送か配信のいずれかに直接ジャンプする。
また、テレビ中継の場合は延長戦でも次の番組に移る場合もあるが、配信で引き続き観られる場合は、自動で放送から配信の画面へ移行する。
ここまで紹介したサービスは、前述のMPEG-DASH視聴プレーヤーが開発されたことで、テレビ/タブレットなど端末を問わず、さらに放送や配信の枠を超えて映像が観られることで、より実現が近づいているようだ。
単純に視聴率などの尺度でとらえると、放送局にとっては「他局や他配信サービスに視聴者を奪われる」と考えられがちだが、視聴者にとっては局やサービス事業者などを意識せず、観たいものが観られるという点でメリットは大きい。コンテンツの権利処理などを見ても、今の仕組みのままで、すぐにシームレスな放送/配信連携サービスを開始するのは難しいかもしれないが、今回のNHK技研では、従来のスタイルに囚われない様々な視聴形態も提案されており、テレビも「いつまでも同じ方法では生き残れない」という姿勢が感じられる内容となっていた。
URL
- NHK放送技術研究所
- http://www.nhk.or.jp/strl/
- 技研公開2015の概要
- http://www.nhk.or.jp/strl/open2015/tenji.html
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