建昊氏の一連の発言はあらかじめ準備していた原稿をそのまま読み上げたものだという。つまり建昊氏は亡き父の追悼にやって来た客を侮辱する言葉を喪主でありながらあらかじめ準備し、公の席でこれを読み上げたわけだ。この日、建昊氏の姿は元大統領の息子ではなく、まさに親盧派の活動家そのものだった。建昊氏はこの日、自分が語る皮肉や侮辱交じりの暴言に熱狂して喜ぶ一部筋金入りの親盧派しか目に入らなかったのだろう。建昊氏の発言に失望し、嘆きを隠さなかった国民の大多数の思いなど、到底感じ取ることなどできなかったはずだ。
また建昊氏以上に失望を禁じ得なかったのは新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表だった。追悼式後、文代表は「盧元大統領の前で親盧・非盧の各派に分裂し、対立する姿は本当に恥ずかしい」と述べ、同じ野党の両派に対立をやめるよう呼び掛けた。しかし追悼式の際、自らのすぐ隣に座っていた金武星代表を公の席で侮辱する事態が起こったことについては、謝罪の言葉など一切口にしなかった。文代表は盧元大統領の遺族や親盧派、さらにその支持者たちが最も信頼を寄せている親盧派のリーダー的存在だ。その文代表が今回の追悼式で起こった不祥事について何も語らないのは、まさに政治的責任逃れに他ならない。これまで機会があるたびに「国民統合」を口にしてきた文代表であるからこそ、その失望は一層大きくならざるを得ない。
先日光州で開催された5・18光州民主化運動の犠牲者を追悼する式典で、文代表は出席者から数々の非難ややじを浴びせられ、また金武星代表はやじだけでなく水まで掛けられた。どちらの行事も野党の熱烈な支持者たちが主に集まる場だった。このように野党内の対立は今や韓国の政治全体にとって大きな脅威となりつつある。盧建昊氏による自らの立場や場所をわきまえない発言、さらに文代表の沈黙は、野党にとってこれまで以上に深刻な危機以外何ももたらさない。このことは誰よりも本人たちが一日も早く悟らねばならない。