無戸籍者に関する政府の公式統計は、行政自治部が1999年12月に約7000人と把握したのを最後に更新されていない。保健社会研究院が2005年に無戸籍者が1万1127人に上ると発表したものの、これも推定値にすぎない。1983年から無戸籍者約1万人を支援し戸籍を獲得できるようにした功労で、2005年に国民勲章「牡丹(ぼたん)章」を受賞したチョン・ジョンニョンさん(75)は「政府や研究院の過去の調査は社会福祉施設で暮らす無戸籍者のみを対象にしていたため、実際にはこれよりもはるかに多いと思われる。無戸籍者は5万人近く存在するものと推定される」と話した。
無戸籍者たちは、犯罪被害にも遭いやすい。京畿道の抱川警察署は今年3月22日、疑妻症(妻の異性関係を疑う症状)がある同居の男性に苦しめられた無戸籍者のチョンさん(78)が洗濯用のカセイソーダを飲んで自殺を試みた、と発表した。警察によると、チョンさんは今年3月20日、京幾道抱川市新邑洞の自宅で服毒自殺を図ろうと洗濯用のカセイソーダを飲んだところを近くの住民に発見された。警察の調べでチョンさんは、ここ30年間同居していたカンさん(77)の暴言などに苦しんできたが、自分が無戸籍者という理由で警察に通報できなかったと話している。
無戸籍者だとしても、法的な手続きを踏めば家族関係登録簿を作成することができる。しかし、大多数の無戸籍者は障害があったり経済的に困難だったりするなどの理由で幼児期に捨てられたケースが多い。このため、義務教育を受けていない人が多く法的手続きを踏むことに負担を感じているという。
実際に警察の支援を受け戸籍捜索手続きを踏んでいるオ容疑者も義務教育を受けていない。大韓法律救助公団によると、ここ1年間で公団を通じて家族関係登録を済ませた未登録者はわずか39人にすぎなかった。大韓法律救助公団の関係者は「公団を直接訪問する場合は積極的に支援できるが、われわれが主体的に全国の無戸籍者を探し出して支援するには人材と予算が足りないのが現実」と厳しい表情を見せた。
警察の関係者は「無戸籍者は治安上の不安要素であるとともに、犯罪被害に遭いやすい。国家次元の大々的な調査を通じてこれら無戸籍者に対する法的支援に乗り出すべきだ」と話した。