キマイラ・サイトは http://www.chimaira.org/です。
トラックバック/コメントは日付を気にせずにどうぞ。
連絡は hiyama{at}chimaira{dot}org へ。
蒸し返し歓迎!
ところで、アーカイブってけっこう便利ですよ。タクソノミーも作成中。今は疲れるので作っていません。
2015-05-26 (火)
「確率変数」と言うのはやめよう
雑記/備忘 | |
カーク・スターツ(Kirk Sturtz)という人が、なにやら圏論ベースの確率論をやっています。スターツのarXiv論文リストをたどって、アブストラクトと第1節を拾い読みしてみると、「『確率変数』という言葉は使わない」という記述がありました。
なるほど。共感・同意します。
謎すぎた「確率変数」
僕が確率を嫌がっていた理由のひとつは、この「確率変数」という言葉の尋常じゃない謎さかげんです。まったく意味不明で、やる気を失いました。
僕、普通の確率論なーんにも知らんわ。高校の教科書に確率もあったのですが、「確率変数」の定義があまりに意味不明で、それ以来毛嫌いしているのでした。
かなりシッカリした内容の教科書でも、「確率変数とは、値がハッキリとは決めることができない変数です」みたいな“定義”から始まります。
「確率変数」を使わないなら何と呼べばいいのか? 「可測写像」です。可測写像を定義するには、可測空間の概念が必要ですが、離散可測空間だけ考えるなら、任意の写像が可測写像になるので、可測写像の代わりに「写像」でもかまいません。離散可測空間(単なる集合)なんて役に立たないのではないか? そうでもありません。入門の素材は十分に提供可能です。
可測写像には、曖昧な点もミステリアスな点もありません。いたってドライです。「確率変数」を機械的に「可測写像」に置き換えて、それで意味がハッキリするときもあれば、余計にワケわからなくなるときもあります。「可測写像」に置換して不適切なところは、なにか別な意味で「確率変数」を使っていたことになります。
「確率変数」を可測写像以外の意味で使ったり、文脈に依存したニュアンスを持たせようとしているわけです。もともとが意味不明な言葉に、さらに多義性や文脈依存性を持たせて使われたのでは、たまったもんじゃありません。
ニュアンスや曖昧性
可測写像は、集合A、Bに対する x:A→B のような写像です。xに条件が付きますが、写像であることは間違いありません。特に確率変数と呼びたいのは、Bが実数であることを強調したいのかもしれません。それならば、x:A→R と書けばいいし、R値可測写像と呼べばいいだけです。値の空間が他の特別な集合のときも同じです。x:A→{0, 1} とか明示的に書けばいいし、そのほうが事情がハッキリします。
値の空間をなんとなく「確率変数」と呼んでいる例もあります。気持ちの上では、なにかAがあって、x:A→R を考えたいけど、実はAがなくて、Rだけのときがあります。確率変数xの分布とは、単にR上の分布だったりします。
今出てきた「分布」も厄介な言葉です。スターツの用法を見ると、「分布」を禁止はしてませんが、分布と測度を同義語として使っているようです。「分布」も「測度」に置換したほうがいいんじゃないかと僕は思います。それで変だったら、暗黙の(伝達と理解が困難な)ニュアンスを持ち込んでいるはずです。
「分布」のよくある使用例は、A上の測度μを、可測写像 x:A→B により前送りした測度 x*(μ) を「分布」と呼ぶ例です。この状況なら「像測度(image measure)」または「前送り測度(pushforward measure)」と呼べば意味がハッキリします。「像」や「前送り」を付けたくないキモチは、だんだんAをフェードアウトさせてB上の議論をしたい、ってのがあるかも知れません。それなら、「Aはもう考えない」とキッパリと宣言したほうがスッキリします。
「値がハッキリとは決めることができない変数」なんて“定義”を採用するのは、できるだけ準備を少なくして、実例や計算法を早く説明するための方便でしょう。それがふさわしいときもあるでしょうが、伝統・習慣として定着し過ぎですよ。アンチ伝統として、「確率変数」という言葉を禁止する、ついでに「分布」も禁止する(「測度」を使う)くらいの試みがあったほうがいいと思いますね。
- 192 https://www.google.co.jp/
- 20 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CB0QFjAA&url=http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20080627/1214549228&ei=nw9kVc3XBIfW8gW2l4GoBQ&usg=AFQjCNEmgZ1mLMNW3RULJIeCsJgikxzwZg&sig2=mQoz1iirvkZlc3SaI7mR2g&bvm=bv.93990622,
- 16 http://t.co/HHeearUPaW
- 16 http://www.google.co.jp/url?url=http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20140203/1391381365&rct=j&frm=1&q=&esrc=s&sa=U&ei=oBBkVbf1A4O2mwXlzoCoCQ&ved=0CCkQFjAD&usg=AFQjCNHkXwtHXhmiFC9sOfCFq4dcO8f9ow
- 15 http://reader.livedoor.com/reader/
- 15 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=2&ved=0CCMQFjAB&url=http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20140203/1391381365&ei=YgVkVZTPMoTpmQXln4GwDw&usg=AFQjCNH9d78u7pFo60oVRnz2wboInB1-pw
- 12 http://feedly.com/i/latest
- 12 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&frm=1&source=web&cd=2&ved=0CCQQFjAB&url=http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20071023/1193128102&ei=jgVkVYahAcrz8gWDmYPwDA&usg=AFQjCNEKF5kMsw8TGYCWaIMKsJwCroE-qg
- 12 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=3&ved=0CC0QFjAC&url=http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20080110/1199955084&ei=pB9kVZ7pFszs8AWG8YPwBA&usg=AFQjCNETZRg0hqET9h9urFTQCFhw0s6ErA&sig2=kzVwgKpsIGV9z6u11_hTDA&bvm=bv.93990622,
- 9 http://www.google.co.jp/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=4&ved=0CDMQFjAD&url=http://d.hatena.ne.jp/m-hiyama/20150511/1431306678&ei=bQhkVbiKCqilmQXDzYOADA&usg=AFQjCNF9aRsRGnBnHSZ_2nWN8OrM9vHDcg&sig2=yqIoqGqiyRmNMFEUbfl0Ow&bvm=bv.93990622,