原発の使用済み核燃料を処理する際に出る「原発のごみ」の処分について、国が7年ぶりに基本方針を改めた。

 最終処分場に自治体が手をあげるのを待つ公募方式をやめ、国の主導で候補地を決める。原発から出てくる高レベルの放射性廃棄物については、00年に法律をつくったものの、高知県東洋町が一度応募した後で住民反対により撤回した以外は、事例がなかった。

 最終処分場が未定の日本の原発は「トイレなきマンション」とも言われていた。国が前面に出て決めるのは、当然である。

 しかし、政府は今後も一定量の原発を見込み、再稼働に積極的だ。原発が動き続ければ、ごみもまた増え続けることになる。政府は廃液を固めたガラス固化体を4万本以上埋められる広さを確保する方針だが、ごみを増やさない、処分地を拡張しないために、原発をゼロにする前提が必要ではないか。

 事実上破綻(はたん)した核燃サイクル事業を前提にしていることにも問題が残る。政府は「ごみの減容化につながる」などとするが、仮にウラン燃料の再処理はできたとしても、高速増殖炉の技術にめどがたたない以上、今度は新たにできるウランとプルトニウムを混合した「MOX燃料」の再処理・処分という問題につきあたるからだ。

 「これ以上次世代に先送りするわけにはいかない」という政府の言い分はもっともだ。処分場が決まらなければ、放射性廃棄物は、既存の原発敷地内で保管することになってしまう。

 だが「原発ありき」での取り組みにとどまる限り、問題の解決にはつながらないだろう。

 廃棄物は、地下300メートルより深いところに埋めるが、トラブルがあったり、将来もっと安全な技術が開発されたりした場合にそなえて、後から取り出せるようにもする。

 数万年以上も人体に有害な強い放射線を出し続けるごみの扱いだ。福島第一原発の事故で、原発に関する「安全性」への信頼が崩壊した後でもある。予測しえない事態に備えることは必要な対応といえる。

 政府は火山帯や断層のある場所、地盤の軟らかいところなどを避けた「科学的有望地」を選び、対象となる自治体に提案するという。

 押しつけにならないよう、議論の仕方にも従来と異なる発想がいる。処分地の必要性だけを訴えても、同意は得られまい。課題も包み隠さず示し、問題解決型の対話へと進めることが不可欠だ。