目撃!日本列島「“釜ヶ崎芸術大学”心の扉を開けて」 2015.05.24


手のひらほどの小さな仏様。
どれも穏やかな表情を浮かべています。
鮮やかな色で力強く描かれた絵もあります。
これらの個性的な作品。
作ったのは日雇い労働者として働いてきた人たちです。
大阪のあいりん地区。
通称釜ヶ崎。
労働者の街として知られてきました。
今高齢化によって働けなくなり社会とのつながりを失う人が増えています。
この街で独りで亡くなっていく高齢者は年に400人にもなるといいます。
釜ヶ崎芸術大学。
略して釜芸。
高齢者に生きがいを持ってもらおうとNPOが3年前に始めた活動です。
詩を作ったり絵を描いたり。
人とのつながりを増やそうという試みです。
「強烈な」です。
テーマを示して参加した人に詩を書いてもらいます。
上田さんの授業に毎回出席している…家族とは音信不通。
心を打ち明ける友達もなく孤独な日々を送ってきました。
結婚してすぐに妻を亡くしその悲しみを癒やせないままこの街にやって来ました。
少しでも新たな生きがいを。
孤立した日々から抜け出そうと懸命に生きる釜ヶ崎の元労働者たちの姿を見つめました。
大阪。
通天閣を望む釜ヶ崎です。
65歳以上の高齢者が4割を占めその多くが独り暮らしです。
上田さんは5年前から家族と共にこの釜ヶ崎で暮らしています。
高齢化が進む街の現状を知り自分に何かできないかと考えたのです。
この街の一角にある小さな喫茶店ココルーム。
上田さんの活動拠点です。
独り暮らしの高齢者が集まっては自分の作った詩や俳句を披露する場になっています。
(上田)はい。
おお〜。
10代から詩人として活動してきた上田さん。
目の前の出来事を素直に表現するよう勧めています。
上田さんと知り合った事がきっかけで俳句を作るようになった人。
夛田雄一さんです。
メモ帳を持ち歩き思い浮かんだ言葉を書き留め俳句にしていきます。
豆ご飯…。
夛田さんは中学生の時に母親を亡くしました。
よく作ってもらったという豆ご飯の味を思い出しながら詠みました。
おっ。
今ちょっと…こんなもんかな。
これでええかな。
夛田さんは山形県出身。
30歳になるまで地元の工場で働いていました。
職場の人間関係に恵まれず全国を転々とし45歳の時釜ヶ崎にたどりつきました。
仕事がない時は路上で野宿をし炊き出しの列に並んだ事もあります。
住まいは3畳一間のアパート。
60歳を過ぎて体を壊し部屋に閉じこもりがちになりました。
人とのつながりがなくなりかけていた夛田さんは上田さんの講座に参加した当初自分の気持ちを素直に表現する事ができませんでした。
上田さんは夛田さんのような人づきあいが少ない参加者のためにある工夫をしました。
参加者がペアを組みお互いの過去を話します。
そして相手に代わって詩にしていくのです。
この日夛田さんは小学生の時にお世話になった近所のおばさんの事を話しました。
ペアを組んだ相手が夛田さんの気持ちを更に引き出していきます。
そして夛田さんの話を詩にしました。
すごい。
終わりです。
(拍手)おおきに。
いやあなたなら絶対できると思うて。
いけるなと思ってな。
釜芸に通い始めた事で夛田さんには気の置けない友人が出来ました。
毎日のように喫茶店で待ち合わせ詩や俳句を披露し合っています。
詩や俳句だけでなく絵に打ち込む人もいます。
山下清一さん71歳です。
若い頃から絵が好きだった山下さんは釜芸で知り合った仲間と絵画サークルを作りました。
そして講師たちのサポートを受けこの春展覧会を開く事になりました。
山下さんは20年前から釜ヶ崎で独り暮らしをしています。
鹿児島県出身で京都の大学を卒業したあと新聞の販売店に就職しました。
28歳の時学生時代に知り合った女性と結婚。
しかし僅か5年後妻は白血病で亡くなりました。
悲しみを引きずったまま仕事を転々とし51歳の時釜ヶ崎へ。
建設現場などの日雇い労働を続けてきました。
酒の量は増える一方でアルコール依存症になりました。
立ち直るきっかけをつかめなかった山下さん。
そんな時街でNPOが配っていたチラシを偶然手にし酒から気をそらせる事ができるならと通う事にしました。
山下さんが始めたのは色紙を切り貼りして作る切り絵。
ハサミを手にしている間は気分が落ち着くといいます。
これは2年前に作った切り絵です。
日の当たらない場所で生きるねずみを自分自身になぞらえました。
山下さんは今度の展覧会に向けて新しい切り絵の制作に取り組む事にしました。
今度の作品は山下さんにとっては大作。
自分の願いを描き込みたいと考えています。
展覧会の会場はオフィスビルが立ち並ぶ大阪の中心地中之島です。
駅の構内にあるギャラリーを2日間借りました。
山下さんの切り絵です。
タイトルは「さそりの昇天」。
題材に選んだのは毒針を持つさそり。
天に昇って星になる姿を描きました。
興味を持ってくれた人に声をかけます。
「あなたは誰?私ではない」。
高齢者に新たな生きがいを持ってもらおうと始まった釜ヶ崎芸術大学。
この日の詩の授業。
参加者の口から飛び出したのは子どもの頃の初恋の思い出でした。
(拍手)明るい心弾む心。
ずっと一人でしまい込んでいた気持ちがあふれ出します。
今大きな社会問題になっている…2015/05/24(日) 08:00〜08:25
NHK総合1・神戸
目撃!日本列島「“釜ヶ崎芸術大学”心の扉を開けて」[字]

一人暮らしの高齢者たちが次々と“芸術”に目覚めている。3畳一間のアパートで絵を描く人、公園で俳句をよむ人。新たな生きがいを見つけた“おっちゃん”たちに密着する。

詳細情報
番組内容
大阪・西成区に「釜ヶ崎」と呼ばれる場所がある。かつては日雇い労働者の街として知られたが、今は一人暮らしの高齢者の街だ。生活保護を受けている人も多く、ここの課題を解決することは、高齢化が進む日本への処方箋ともなる。そんな中、地元NPOが「釜ヶ崎芸術大学」という市民講座をたちあげた。俳句や絵画などを通じ、生きがいを取り戻してもらうのが狙い。新たに仲間ができたり、社会とのつながりを取り戻す人も現れた。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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