核兵器の拡散を食い止めるのは、地球を次世代へ渡す全世界の責務である。

 その道筋を話し合う5年に1度の国際会合が、何の成果も出せずに終わった。ニューヨークで続いていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議である。

 加盟国の合意をまとめる最終文書をめぐり決裂したことは、NPT体制の持続性に大きな疑問符をつけることになった。

 国際社会は、重大な危機感をもたねばなるまい。今後、NPT体制の修復をめざす努力を各国が一段と強めるべきだ。

 同時に、必ずしも会議の合意だけに頼らず、協力できる国々で核廃絶をめざす活動を盛り上げることにも力を注ぎたい。

 会議の決裂は、表面的には中東の非核化をめぐる文言が主因だった。イスラエル寄りの立場をとる米国などがアラブ主導の文言に同意しなかった。

 だが、事態の本質は中東問題ではない。最も深刻な問題は、核保有国と非核国の対立の溝が、もはや隠し通せないほど深まったことにある。

 会議で、核兵器の非人道性を強調する非核国の主張に対し、核保有国は次々と難色を示し、表現を弱めることに腐心した。

 NPTは核保有を米ロ英仏中にだけ認める代わり、その5カ国に誠実な核軍縮交渉を義務づけている。だが実際には、軍縮に消極的どころか、核による脅しを発言する国まで出て、非核国の不満は高まっている。

 NPT非加盟のイスラエルやインド、パキスタンはすでに核を保有し、北朝鮮の身勝手な核開発も続いている。これ以上、核に走る国を許しては一気に連鎖反応が起きかねない。世界の状況は危うさを増している。

 ただ今回の会議では、核の非人道性の論議が正面から取り上げられ、各国の理解が進んだ。非人道性を根拠に核を違法化する「核兵器禁止条約」など、新たな法的枠組みを探る動きを日本ももっと後押しすべきだ。

 日本が提案した広島、長崎への各国指導者らの訪問も、地名は削除されたものの趣旨は最終文書案に盛り込まれていた。

 日本政府は、核保有の5大国を含む世界の指導者や軍縮専門家、若者らを招き、非人道性を積極的に訴え続けてほしい。

 日本を含め、安保面で他国の「核の傘」のもとにある非核国には矛盾がつきまとう。だとしても、被爆国日本が非人道性に口をつぐむことは許されない。

 最終文書案に従い、安保上の核兵器の役割を減らす。そして核兵器の違法化をめざす。その目標へ率先して進むべきだ。