>  >  > 『日之丸街宣女子』論争 渦中マンガ家の主張

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
1505_hiromaru.jpg
日之丸街宣女子vol.1(青林堂)

 先日発売されたマンガ『日之丸街宣女子』(青林堂)をめぐって、新たな“表現の自由”論争が始まっている。作者・富田安紀子氏の「グランドジャンプ」(集英社)での仕事に対して、ネットでは「ヘイト作家を使うな」という声が殺到しているのだ。これは“レイシスト”とのレッテルを貼った新たな表現規制なのか? この動きに正当性はあるのか? 富田安紀子氏、そして、自身のブログで批判を展開したマンガ家・高遠るい氏、双方の思いを尋ねた。

 まず、今回の論争について、順を追って見ていこう。最近は「愛国本」とも「ヘイト本」とも呼ばれる書籍の版元として知られる青林堂。今月15日に同社から発売されたマンガ単行本が、さまざまな角度から注目を集めた。富田安紀子氏が手がける『日之丸街宣女子』(作:岡田壱花 画:富田安紀子)が、それだ。

 話題を聞いて読んでみようとAmazonをチェックすると、入荷予定は5月26日(5月20日時点)。都内の書店を訪ねても、在庫のあるところは少ない。ある書店では「版元にも在庫がないみたいで、慌てて重版しているそうです」という声も。17日に、ようやく手に入れた神保町の老舗マンガ専門店・高岡書店でも「在庫はレジの前に置いているぶんだけです」と言われた。

 青林堂が発行する論壇誌「ジャパニズム」に連載されたこの作品は、幼なじみの忘れ物を届けたのをきっかけに「李明博の竹島上陸と天皇陛下への侮辱発言を絶対に許さないデモ」に参加した少女・奏がNHKへの電凸や、しばき隊とおぼしき組織との抗争を経て「普通の日本人」として戦いに参加していくというストーリーだ。

 この本の発売が大きく騒がれ始めたのは、参議院議員の有田芳生氏のTwitterでの発言がきっかけだ。発売日を前に早売りしていた書店で同書を入手した有田氏は、こんなふうに紹介した。

悪質な差別煽動コミックーー岡田壱花・作、富田安紀子・画の『日之丸街宣女子』(青林堂)は、表紙帯から「不逞鮮人」というヘイトスピーチのかたまり。神保町「高岡書店」によると「そんなに売れていません」。野間易通さんなどへの誹謗中傷が満載。

有田芳生氏のTwitterより引用

 かねてより「反ヘイト」を主張する有田氏にとっては“怒りのツイート”だったようだが、その効果は絶大だった。ツイートを見て多くの人が興味を持ったのか、Amazonのランキングが急上昇。発売当日に重版、そして3刷へと至った。カスタマーレビューには「この本の出会いは民主党議員・有田芳生のツイッター」「尊敬する有田ヨシフ先生のおかげでこの本を知りました」と、皮肉的な感謝の言葉があふれている。そんな中、「反ヘイト」を掲げる人々の怒りの矛先は、作者である富田氏に向かっている。

 富田氏は、富田安紀子と富田安紀良の2つのペンネームを持ち、主に青年誌で作品を発表してきたマンガ家だ。「ビジネスジャンプ」に連載していた『ほっといてよ!ママ』(共に集英社)は、2000年に『ママまっしぐら!』としてTBS系列でドラマ化もされている。批判者から、彼女は「在日特権を許さない市民の会(以下、在特会)の活動家」で、『日之丸街宣女子』は、彼女自身の思想を反映したものと目されている。とはいえ、朝日新聞出版で「新マンガ日本史」を執筆するなど、大方のマンガ家と同じく個人の思想と仕事は別のようだ。

 ところが、批判者たちは富田氏がさまざまな媒体で執筆していることそのものを問題視している。そのやり玉に挙げられたのが、集英社が発行する「グランドジャンプ」の5月7日発売号だ。ここで富田氏は読切作品『国際霊柩送還 エンジェルフライト』の原作を担当している。これを受けて、集英社に対して「実質的に在特会のお抱え漫画家である富田安紀良をあえて起用」「ヘイトデモ常連のヘイト漫画家を原作起用するんだ。編集者に社会通念や倫理、常識がないのか」「ヘイト作家と手を切る凜とした対応を求めたい」とした批判がTwitterなどで次々と表明されているのである。

Recommended by logly
PICK UP ギャラリー
ついにつるぺた幼女なラティファ様を見つけてしまった! 『甘ブリ』にどハマりな訳new
私の退屈を埋めるために君は選ばれた……知れば知るほど可愛い『GOSICK』ヴィクトリカに学ぶ
「自分が埋もれてしまうから、アイドルになった」 元AKB48の仲谷明香は“アイドル声優”をどう見ている?
「好きだから、作品とリンクしていないと嫌」人気読者モデルAKIRAが歌う、ディープな“『黒執事』愛”の世界
ダイオウグソクムシ・ブームに乗った!? “グソドル”原田真緒の戦略とグソクへの愛
“アニメに救われた”新進声優・タカオユキが語った! 声優にかける想いとアニメへの偏愛
「楽屋で釘バットを持たなくなって共演者が話しかけてくれるように…」ミスiD2014・寺嶋由芙のソロ活動への決意
強さを兼ね備えた『黒執事』のエリザベス・ミッドフォードに平松可奈子が学ぶレディ道
21世紀最初の純白アイドル“さんみゅ~”が編集部を電撃訪問!

ギャラリー一覧

『寄生獣 完結編』、批判の矛先はやっぱり“原作改変”に…
転生モノの転生のきっかけってだいたいトラック事故…