4人生デザイン U−29「胚培養士」 2015.05.18


千葉市にある…晩婚化で高齢出産が増える中不妊治療のニーズは年々高まっています。
このクリニックにも年間4万人ほどがやって来ます。
(患者)夫と相談をして今に至ってますね。
子どもが欲しいという気持ちの方が上回ってたのですぐやってみようという気にはなりましたけどね。
(患者)卵管の両管を取っちゃったのでもう…
(患者)子どもは欲しいですね。
う〜ん欲しいですね。
もう欲しいしかないですね。
う〜ん。
今や国内では新生児の…こうした不妊治療の現場を陰で支えているのが今回の主人公岡部美紀さん。
彼女の仕事は…命のもととなる卵子と精子を取り扱う繊細かつ責任のある仕事です。
(岡部)…場合ももちろんある。
そう考えるとものすごく壮大ですよなんか。
岡部さんは5年前から千葉市にあるクリニックで胚培養士として働いています。
1日の大半を過ごすのは「クリーンルーム」と呼ばれる場所です。
入念に手を洗いアルコール消毒してから部屋に入ります。
こちらがクリーンルーム。
女性から取り出した卵子と男性の精子を合わせて卵を育てる場所です。
岡部さんがこれから行うのは「顕微授精」と呼ばれる作業です。
太さ0.005mmのガラス針を使って1つの精子を卵子へと注入していきます。
こちらが卵子。
30代前半の患者さんのものです。
自然妊娠ができないと分かったため顕微授精で卵子と精子を合わせる事になりました。
まずはたくさんの精子の中から元気できれいな形の精子を1つ探します。
見つけたら針の先端で精子を捕まえガラス管へと吸い込みます。
この緻密な作業が新しい命の誕生へとつながります。
岡部さん卵子を覆う膜にそっと針を突き通します。
あ〜見えますかねえ?今ちょうど精子が卵子の中に入っていくところです。
それでもしかしたら目には見えないけど…卵子に負担をかけないために1分ほどで刺すのが理想とされています。
岡部さんこの日は11個の卵を顕微授精させました。
このやり方で受精する確率はおよそ7割から8割だそうです。
全部刺し終わったので受精確認して受精してればいいかなと。
多分受精しているんじゃないのかなとははい思います。
うまく受精すればその卵を岡部さんたち胚培養士が2日から6日ほど培養液の中で育てます。
そして成長した卵を医師が再び女性の体へと戻します。
うまくいけば妊娠となります。
岡部さんの仕事は顕微鏡の前で卵と向き合うだけではありません。
卵がどのように育っているか患者さんに説明もします。
(ノック)失礼します。
この病院では日々卵を見ている胚培養士が患者さんと直接コミュニケーションをとる事を大切にしています。
(患者)はい。
はい。
ではですね…電話あったと思うんですが。
今日の状態なんですけれども…。
30代前半の患者さんです。
自然妊娠がなかなかできなかったため去年の夏からこの病院に通っています。
先日卵が2つ採れて両方ともうまく受精ができている状態です。
(患者)あの〜ネットとかでいろいろ見たんですけど。
(患者)ちなみに…妊娠率ですかね?
(患者)うん…。
そうですね…。
患者さんは「妊娠の確率を少しでも上げるために卵を2つ同時に体に戻してほしい」との希望を岡部さんに伝えました。
年齢が31歳ですので…原則1つと言われているので。
はい。
一方岡部さんは双子を妊娠すると母体への負担が大きくなる事を説明しました。
はい。
分かりました。
岡部さんの説明に患者さんも納得してくれたようです。
足元お気を付け下さい。
お待ち下さい。
はい。
「この卵は絶対に赤ちゃんになるので信じて下さい!」みたいなそういう事を言えたら一番いいんですけど。
全員に…私たちもものすごくつらいし見ていて。
申し訳ないなっていう期待に応えられなかったというのはあるので。
うん。
子どもの頃から強く思っていた岡部さん。
高校卒業後は…その時の授業で立ち会った妊婦の超音波検査がこの仕事へ興味を持つキッカケとなりました。
医者になれるほど頭良くなかったしなおかつ看護師になれるほどそこまで人に尽くせるかっていうと尽くせないし。
多分そんな自信無いんですよ自分に。
だから自分にしかできないっていうか人から頼りにしてもらえるような人になってくためには…現場での経験を積み重ねて3年目には胚培養士の学会が定める資格試験に合格しました。
なんかきっとそういうのがなんか…なんていうんだろなんか生きがいっていうかなんか…「あぁ自分生きてる意味あるな!」みたいな。
岡部さんには自分の人生のデザインをするうえで大切にしている事があります。
「今よりもっと進化する為にするべきコト」。
仕事やプライベートで心に留めておきたい18の事が書かれています。
なんだか…岡部さんの性格がよく出てますねぇ。
生きていくうえで最低限これを忘れたら多分いけないんだろうなっていう事を書いているだけなので。
でもそれ多分忘れちゃうと今まで作ってきた人間関係とかあと自分が努力してきた事っていうのも何かの拍子で全部水の泡になっちゃうような気がして。
うん。
こちらが岡部さんの一週間スケジュールです。
休みは週に1回から2回。
家に帰ってからも胚培養士の勉強をしています。
そんな仕事中心の生活を送る岡部さん。
数少ない息抜きが…う〜ん!工作です。
お城やビルなどを紙を切り貼りして作ります。
超かわいくないですか!?やばくないですか!アハハハ!集中しすぎて時間がたつのをついつい忘れてしまうそうです。
細かい部分は毛抜きを使って折り曲げます。
仕事でも家でも緻密な作業をしてますねぇ。
細かいです。
(取材者)ふとやりたくなるんですか?こういうのって。
フッ…。
はい。
「無」になれる感じがいいですね。
やりたいと思った時にやれば息抜きなんですよね。
はい。
いや〜分かります。
大事ですよね「無になる」っていうのは。
この日は4時間かけてサグラダ・ファミリアを完成させました!岡部さんの毎月の収入はおよそ35万円。
中でも目立つのが貯金。
毎月10万円ほどしています。
それには訳があります。
この4月から胚培養士の勉強をするために大学院に通い始めました。
その学費を払うために毎月貯金をする事に決めたんです。
大学院での授業は週2回。
教えるのは不妊治療の第一線で活躍する医師や胚培養士たちです。
岡部さん培養に関する最新の知識や技術を習得するためにこの大学院を選びました。
しかし学業と仕事が両立できるのか?不安に感じていました。
そんな彼女の背中を押してくれたのは3年つきあっている彼からの言葉でした。
今つきあってる彼とも「あと2年ぐらいは結婚はちょっと自分的にはない」みたいに言われたから「ああそっか」と思って。
お酒飲んでる時話したらなんか「えっ大学行きたいの?」みたいになって。
「もし少しでも行きたいって思ってて自分とつきあってるせいでその夢がかなえられないんだったら俺は困る」みたいな事言われて「あぁ」と思って。
大学院行くってやっぱりどうしてもお金がかかる事なので。
そうした時に誰かと結婚するとまぁあれじゃないですか…。
自分で稼いだお金って自分だけのものじゃなくなるじゃないですか。
今なら自分の好きにお金が使えるし。
クリニックの仕事も慣れてきてその…今であれば働きながらでもあの…大学院に通える余力っていうか余裕が今ならあるのかなって思って。
うん。
この日顕微授精した卵がうまく受精できているのか確認する事になりました。
顕微授精では卵子と精子を掛け合わせてからおよそ18時間後に受精したかどうかを判定する事ができます。
こちらが受精の様子です。
受精がうまくいくと卵の中に卵子と精子2つの核が現れます。
これがきちんと受精している証しです。
けれども受精できなかった卵には核が現れる事はありません。
比べてみると分かりますよね?岡部さんがチェックしているのは30代前半の患者さんの卵です。
果たして受精はできていたのでしょうか?
(2人)あ〜!卵の力が弱く受精はできていませんでした。
岡部さんこんな時一体どんな気持ちなんですか?多分そんなにものすごく毎回何か起こる度に「関わらなけばよかった。
関わらなければよかった」って落ち込んでたら多分私培養士してないと思うし今。
うまくいかないと落ち込む事もあるけどまあそれ次に生かして「自分ができる事をやり続けるだけだな」っていうふうに気持ちを切り替えるようにはしてますね。
気持ちを切り替え次の患者さんのもとへ向かいます。
(ノック)失礼します。
お待たせしました。
40代前半の患者さんです。
去年病気で卵管を切除して自然妊娠する事ができません。
これまで何度も治療を受けてきましたがまだ1度も妊娠の判定が出た事はありません。
この日は受精卵に成長した卵を体に戻すためにやって来ました。
以前ですね説明をした時に…このまま全部の細胞を…。
体に戻す予定の卵の一部分の細胞が成長を止めていました。
そうですねこういう方…岡部さんこれまでも同じようなケースが妊娠につながった事を伝えました。
この卵が赤ちゃんになるためには…そうですね。
うんうん。
うん。
実際あのこちらも…結局あの……順に戻していってってなるんですけれども。
うん。
うんうん。
(患者)まずは…うん。
分かりました。
はい。
じゃあこれから移植していきましょう。
(患者)ごめんなさい。
いや大丈夫ですよ。
患者さん卵を体に戻す事を決めました。
岡部さんに最後に質問です。
「これが自分の人生だ」と思うような事があれば結婚しなくても楽しい人生を送ってると思うし分かんないですよね。
10年後?10年後分かんないですよね。
「子ども欲しいな」って思っていたら欲しいかなって。
その時期ぐらいには…。
もしかしたら私の選択肢の中でもしかしたら子どもっていう選択肢無ければ無いで多分それなりに楽しい人生を送っているのかな。
とりあえず10年後に一定水準以上の生活できてれば。
(取材者)現実的!はい。
いや本当そうですよ!今よりもちょっと水準の高い生活を普通にできてればそれで幸せなのかなって。
取材から9日後岡部さんの病院に1通のメッセージが届きました。
卵を体に戻す事に不安を感じていた40代前半の患者さんからでした。
卵が無事に成長して生まれて初めての妊娠判定が出たそうです。
岡部さんへの感謝の言葉もありました。
新しい命が宿る事を願い岡部さんは今日も顕微鏡をのぞきます。
2015/05/18(月) 19:25〜19:50
NHKEテレ1大阪
人生デザイン U−29「胚培養士」[字]

不妊治療の現場を支える胚培養士。命のもとである卵子や精子を取り扱う責任ある仕事だ。26歳の主人公が「子どもが欲しい」と切に願う患者さんたちと、どう向き合うのか?

詳細情報
番組内容
岡部美紀さんは26歳の「胚培養士」。命のもとである卵子と精子を体外受精させる繊細かつ責任のある仕事だ。「人に頼りにされて、自分にしかできない仕事がしたい」とこの道を選んだ。しかし、時には患者さんの卵子がうまく成長できず、妊娠に繋がらないケースもある。厳しい現実を向き合いながらも、新しい命が宿ることを願い、仕事に取り組む岡部さんの姿を伝える。
出演者
【語り】松坂桃李

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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