水族館資格:国内加盟152施設の7割 世界協会残留希望
毎日新聞 2015年05月20日 21時12分(最終更新 05月21日 13時34分)
水族館で飼育するイルカの入手方法を巡り、日本動物園水族館協会(JAZA)は20日、世界動物園水族館協会(WAZA、本部スイス)に残留するため、WAZAの通告に従って和歌山県太地町での追い込み漁による野生イルカの入手を禁止することを決め、WAZAに伝えた。全国152の加盟施設の投票で、約7割が残留を望んだという。イルカの入手が今後難しくなる水族館もあるため、JAZAは繁殖のノウハウ普及や施設間でのイルカの融通を進めていくとしている。
JAZAは、WAZA残留か退会(離脱)かを、全施設の多数決で決めるとしていた。20日の理事会で開票した結果、有効票数142票のうち残留は99票、離脱は43票だったという。施設名や動物園(加盟89施設)と水族館(同63施設)それぞれの内訳は公表しなかった。
理事会後に東京都内で記者会見した荒井一利会長(鴨川シーワールド館長)は「WAZAに加入している利点もあり、イルカの問題だけで離脱するのは困難だった」と説明。「イルカの入手を野生からの捕獲に頼っていたことは反省しなければならないが、追い込み漁が残酷だとは思っていない。日本の文化や、太地町の漁を批判しているわけではない」と強調した。
JAZAによると、加盟施設でイルカを飼育しているのは34施設。米国の水族館などのイルカは約70%が施設内の繁殖で生まれたが、日本では12〜13%にとどまるという。追い込み漁で捕獲された野生イルカは年約20頭が水族館に渡っており、購入が禁止されれば、多くの施設にとって今後計画的な入手は困難だ。繁殖を普及させるには5年以上かかるとみられ、荒井会長は「このままでは飼育数は減っていく。米国での繁殖法も参考にする」と述べた。
一方、繁殖が定着しても、飼育イルカによる近親交配が続くと、繁殖力や病気への抵抗力低下などの影響が懸念される。荒井会長は「長い目で見れば、野生からある程度の数を捕獲するのが(遺伝子の多様性確保に)有利」と指摘した。