(田沼聡)
私は小さなそば屋をやってます。
これまで女房と2人で元気に働いてきました
はいお待たせいたしました。
ご注文決まりましたら。
大盛りそば2つ。
はいよ。
ただ還暦を過ぎた頃からでしょうか…
体力の衰えっていうのか…。
手のしびれなんかも出るようになったんです。
それでとうとう昨日…
大盛りそば2つね。
おぉっ!
(落とす音)あ…すいませんねすぐ作り直しますから。
お父さんほら!お父さんお医者さんで診てもらおうよ。
うるさい。
70過ぎるまでは現役でと考えていたのですが…。
私の手どうかなっちゃったんでしょうか?
さあそば屋さん職人さんですけれどもね。
やっぱね長年振ってっからそれでおかしくなっちゃってんじゃないの?湯切りのしびれが…。
それでしょうね。
腱鞘炎だ腱鞘炎。
(玉ちゃん)職業病ですよ。
どんな病気を疑います?いや〜今ね本当に身近な私の同世代のマネージャー女性なんですけど同じ症状で悩んでるんですよ。
とにかく物も今ペットボトルとかも持てない。
震えたり…。
だから本当に同じ症状なのでちょっとひと事じゃない…。
病院行かないんですこういう頑固おやじはね。
あ〜かもしれないな〜。
石倉さん行かないんですよね?行かないというか嫌いなんだよね誠に申し訳ないんだけど。
実際行かない?行かないね。
俺も今でもそうなんだけど手しびれてるんだよね。
今日表に出てなんぼかいるともうしびれてくる。
患者の声に耳を傾け体に問いかける。
総合診療医の武器は問診と診察だ。
症状は?仕事は?生い立ちは?病気を探るヒントはどこに潜んでいるのか。
意外な手がかりを一つ一つつなぎ合わせ病気を探り当てる。
私たちはその人を「ドクターG」と呼ぶ。
ドクターGの登場です。
(玉ちゃん)今回のドクターGは…さまざまな医療現場で総合診療に挑んできた池田正行先生。
先生鑑別所ですか?鑑別所にすごい反応しました。
いやいや肩書が変わって先生おなじみですが職種…。
鑑別所で何を先生やられてるんですか?鑑別所に来る少年たちですね。
食物アレルギーとかぜんそくとかよくある病気は持ってる子多いですからその健康管理。
今回の症例の方鑑別所に来た方じゃないですね。
そういう設定にはなってないです。
おそば屋さんじゃねえか。
ただ私が昔診断とても難しかったその患者さんです。
だって入り口としては手がしびれるとかありがちですからね。
さあ病気を探り当てるために全国から集まって頂いた研修医はこちらの3人です。
(玉ちゃん)ご紹介します。
(拍手)よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
中村先生どういうきっかけでお医者さんを目指したんですか?祖母が長く病院にいた事もありましてそういう無力感とかやっぱり味わってましていろんな人の命を助けられるとまでは思わないんですけどせめて身近な人とかお手伝いができればなと思って医師を志しました。
さあ中西先生昔は成績が相当悪くて努力したらしいんですよ。
4年間かかってしまいました医者になるのに。
浪人4年して…。
はい。
なんとか…。
どうですか?VTR見て。
僕は将来救急志望なんですが急性期の疾患から特に考えていけれたらいいかなと思ってます。
(玉ちゃん)なるほど。
頑張って下さいよ。
吉津先生お医者さんになるきっかけは?私は地元がすごく田舎なんですが過疎地での医療の現状ですとか遠方まで頑張って通院している様子など見ていて私も医師となって何か人のためになれたらなと決意して医者を目指しました。
若者たち頼もしいでしょう。
まあ…いい事だね!
(笑い)さあそれでは病名を探るための再現ドラマを見て頂きましょう。
ドクターGの症例に研修医が挑みます。
テレビの前の皆さんも一緒に考えて下さい。
ドクタージェネラル!しびれてねえって言ってんだろう!すいませんね…。
どうしてここまで来てそういうふうに反抗するの?お前ここへ来るって言わなかったじゃねえか。
言ったら来ないでしょう!落ち着きましょう。
どうしてお父さん看護師さんの言う事聞かないの?うるさいな〜。
ほら座って。
あとで測りましょうね。
すいませんねえ。
先生よろしくお願いします。
どうされましたか?ほら。
あぁあの…手がちょっとしびれるんですよ。
肘をぶつけるとよくしびれたりするでしょ?ないですね。
あっあの…主人はそば屋をやってまして仕事柄手をよく使うんです。
おい黙ってろよ。
(田沼)
まぁ1年くらい前ですかね
(多恵子)
なんでも朝仕込みをしている時だったみたいなんです
(田沼)
その時初めて右手のしびれを感じたんです
(田沼)
肩凝り腰痛は昔からありましたが…。
そうですねえまあ強いて言えばストレスですかね
(多恵子)
ちょうど1年前にサラリーマンだった息子が店を継ぎたいと言ってきたんです
(田沼)
それが悩みの種で…
掃除終わったよ。
お〜持ってけや。
(多恵子)
勤めてた会社が傾いたのがきっかけらしいんですけどね
(ため息)
(田沼)
不器用なあいつには向いてないと思ったんですが…
駄目だ駄目だ。
ほらこっちの手。
(田沼)
でもあのバカその時はもう会社を辞めてまして
だから健一なりに悩んで一生懸命考えたのよ。
ハッ甘いんだよ考えが。
素早くやんないとそばがのびちゃうんだよ。
そうですか…それがストレスなんですね。
実は半年間ぐらいそうこうしてるうちに左手も…。
(田沼)
年の瀬の忙しい時期だったんですけどね
へいらっしゃい!ご注文は?親子丼セット。
ごちそうさま。
どうもありがとうございます。
(客)みんな一緒で。
まいどありがとうございます。
え〜てんせいろ1におかめそば2ですね。
えっと2,000じゃねえな…4,000と700円になりますね。
(客)ん?てんせいろ1つとおかめ2つなんだけど。
あっそうですか?じゃちょっとレジ…。
あっすいません。
3,100円になりますね。
申し訳ないです。
女房がね今風邪ひいちゃってて。
(客)5,000円から。
あっすいませんどうも。
暗算は得意だったんですがねえ
その時左手もしびれだしたんですよ
(客)あの〜…。
あぁすいませんすいません。
注文違うって。
え?3番のお客さん鴨南蛮だって。
大丈夫?疲れてる?ばか野郎。
お前に心配かけるほどもうろくはしてねえわ。
その日は左手もしびれだすわ息子に年寄り扱いされるわでせっかくの酒がまずく感じました
まあ。
でも最近は量を減らしてるんです。
それに休肝日をちゃ〜んと作ってます
2年前ですか「あんたは厄年だから」ってこいつに無理やり健康診断を受けさせられたんですよ。
私が町の健康診断に連れてったんです。
その時あのあれ…GDPとかいうやつ?あっそうです。
それが高いって言われて。
おまけにコレステロールも高いって。
あっそうだ。
これその時頂いた診断表です。
何だお前そんなの取ってたのか?お父さんみたいに何でもポイポイ捨てないのよ私は。
(多恵子)
お酒も随分飲みますし肝臓が悪いんじゃないかって。
それで精密検査したんです
肝臓に脂肪がたまってるって言われてそのうえ小さな胆石が見つかって。
ただ本人は特別に痛いというところもなかったんで…。
はい。
ただ定期的に経過を見ましょうと言われたのにそれ以来この人一度も病院行ってないんです。
(多恵子)
この人根っからの医者嫌いでして。
今日も無理やり私が。
それでさっきちょっと口げんかを…
お前がいちいち指図するから。
だって…。
ところで…
(田沼)
私陶芸が趣味なんです。
いい気分転換になるもんですから
でも4か月くらい前でしょうか
あらっ!
このころから両手に痛みを感じるようになって手先の作業がうまくいかなくなってきたんです
おまけに足のしびれも感じるようになりまして
先生トイレ。
はい。
最近少し便秘気味でしょうか。
半年ぐらい前からでしょうかねえ。
ないですね。
(田沼)
ただ昨日あんな事をしてしまいまして…
(田沼)おぉっ!
(落とす音)あ…すいません。
(多恵子)
もう私心配で…
さあVTRを見て頂きましたが。
田沼聡さんのバイタルデータですが…さあそれでは研修医の皆さん疑われる病名をフリップにお書き下さい。
(玉ちゃん)川上さんどうですか?私も本当に医者嫌いなんですよ。
行かなくて。
何か風邪ひいてもちょっとお酒飲んで寝れば治る。
とにかく寝ようとか。
元気な時は行かないじゃないですか。
だから結局行かない事になっちゃうんですけどね。
今のおじさんがねお酒飲んで。
控えれば落ちますけどもそこが難しいんでなかなかできてないわけですよね。
もう今日は完全にお酒を前提としてる会話にね…。
絶対になるんですが。
(川上)ひと事じゃないですね。
さあ研修医の皆さん病名を書き終えたようです。
それではフリップを一斉にお出し下さい。
フリップオープン。
(玉ちゃん)それでは中村先生から発表して下さい。
私は…
(玉ちゃん)はい。
じゃ中西先生。
僕は…
(玉ちゃん)吉津先生は?
(川上)全然分からない。
(玉ちゃん)分からないでしょ?はいここからはドクターGと研修医との真剣勝負です。
カンファレンススタート。
じゃ中村先生なぜ「甲状腺機能低下症」と考えたのか。
全身的な疾患を考えた際に「内分泌」というんですけれども甲状腺のような何かホルモンが関係する病気が考えやすいなと思って。
何か体温が低いじゃないですか。
それも関係するんですか?体温が低い事ですとか脈が遅い事こういった事も甲状腺機能低下症で一応見られる特徴です。
じゃ吉津先生。
その病気が何かという事を説明してもらえますか?中村先生の甲状腺機能低下症と似てるわけ?
(吉津)そうですね病態としては橋本病も甲状腺という臓器の機能が低下している。
橋本病は本来ならば体内の異物を排除するはずの…甲状腺機能低下症の患者の多くは橋本病だと言われています。
この症例におきましては最初は手のしびれできてたんですけれどもその他にも体力の低下であるとか筋力低下を思わせるような物を落としたりとかそういう事も症状が出ていたという事やあとは計算ミスやオーダーの取り違えがあったり頭の症状が出ていた事。
あとバイタルサインでも体温が低い。
さて中西先生3番目になりましたけれどもなぜ「アルコール性ニューロパチー」を疑ったのか。
まずアルコール性ニューロパチーというのは…。
そうそう言葉ね。
「ニューロパチー」っていうのは「アルコール性神経障害」という事です。
アルコール性ニューロパチーは大量の飲酒によって末梢神経が障害を受ける病気です。
そこまで…どれぐらい飲んでいるのかはっきりVTRでは出てなかったんですけど結構飲まれてるのじゃないかなと一つ推測したのと計算力が落ちてきたりとか注文ができなくなってきたという症状があるんですね。
そういうのっていうのがアルコールを…このアルコール性ニューロパチーとはアルコールから派生するもので例えばビタミンB1が欠乏して「ウェルニッケ脳症」っていう。
お酒を飲み過ぎる事によってビタミンが代謝の過程でビタミンB1が下がってしまう。
そういう事があって頭の中枢というか頭の計算力が落ちてしまったりそういう事が起こったりする事があるんです。
3人の病名が出そろった!しかし田沼さんの主訴は「手のしびれ」だ。
肝心の右手のしびれそれは説明できますか?甲状腺機能低下症と手とか足とかのしびれだったりそういうものを来すような疾患がまだ考えられるかなとは思います。
最初右手のしびれという事だったので…あとは手首のところの神経が障害される…その他にももう少し上の肩の辺りでの神経の障害である…そういったものも可能性もあるかなとも考えました。
すごいな〜考えるねえ。
少し自信はないですけれども手の神経が走っているところにこの病気の際に全身に浮腫が出てくる事があります。
浮腫というのはむくみの事ですね。
神経が障害されてしびれが出てきた可能性があるかなという事で一元的に説明ができるかなと。
中西先生どうですか?この方生活背景とか見てると胆石症もあるし脂肪肝もあってコレステロールも高いって事でやはり栄養をあんまりしっかりとれてなかったのかなと。
それがアルコール性で?
(中西)アルコール性でしびれてる。
それでアルコールを飲む事から全身の症状現れてきてるのかなという。
中村先生は甲状腺機能低下症の他にしびれを起こす別な病気を考え吉津先生は橋本病によるむくみでしびれが起きていると主張。
一方中西先生は健康診断の結果からアルコール性の神経障害によるしびれと考えた。
中西先生の論理構成はアルコールだと有名な肝臓の障害。
こちらの方も診断の方に組み入れていったわけだよね。
数値を見た時にパッと見てGOT・GPTってあるんですけどGOTの方が高いというのは一つお酒によるアルコール性肝障害の指標にもなったりします。
その時あのあれ…GDPとかいうやつ?あっそうです。
それが高いって言われて。
やっぱり肝機能障害が出るぐらい飲んでる。
生活習慣もよくなかったのかなというように推測しました。
中西先生はアルコールにより田沼さんの肝臓の機能が低下していると考えた。
その時頂いた診断表です。
その根拠は健康診断表にあったGOT・GPTと呼ばれる数値にあった。
GOT・GPTは肝臓の細胞に多く含まれている酵素です。
アルコールなどの摂取で肝臓の細胞が破壊されると肝臓から血液中に流れ出します。
その量は血液検査で測る事ができ一般的に肝臓の機能の状態を表します。
正常値は40以下。
田沼さんの場合GOT184GPT136だった。
中西先生が言ったようなアルコール性ってやつがものすごい信憑性ありますね。
でもね俺そうやってお酒で大変な事になってるおじさんとかたくさん見てるんですけど今みたいに昼から働いてないもんね。
朝からやっぱりクイッといってますからあれだけの仕事をしてる人がそこまでいくのかなって。
今玉ちゃんから突っ込みがあったみたいにあれで酒のせいにしちゃうの?というそういう素朴な感覚ですよね。
そこが中西先生のこの論理構成の実は弱いところ。
アルコール性のニューロパチーとかアルコール性の脳の障害記憶障害とかあるいは計算力障害まで出てきてしまうようなアルコールの人ってやっぱりね「あっこの人」っていうそういうふうなこう…なかなか言葉で説明しにくいんですが患者さんのイメージがあるんですよ。
今田沼聡さんいやいやながらだけど奥さんに連れられてきたでしょ。
それで来てそれであの身なり。
(玉ちゃん)ジャージじゃなかったんだ。
ジャージじゃないそうそうそう。
それすごく大きい。
きちっとした身なりしてるでしょ?ジャージじゃないっていう。
そういうアルコール依存症の人がこう醸し出す非言語性のメッセージ。
そういうものを我々実は一般市民以上に全体像をすごく大事にしてる。
それと田沼さんズレてるじゃない。
あんなにほんとにこざっぱりした身なりしてきた。
外来の患者さんとか診てるとほんとに1日もうすごい量を飲む方が多いので確かにVTRとは一致しないかなと思うところはあります。
田沼さんがアルコール性ニューロパチーである可能性は低くなった。
しかしここで謎が残る。
なぜGOT・GPTはあれほど高かったのか?どうする?橋本病で。
そうですね…。
肝臓確かに…。
アルコールを飲まれているという事に関して大酒家であるといえば矛盾しないと思うんですが橋本病として説明するとすると少し一元的にといいますかひとまとめにこの一つの疾患でとまとめるのは少し難しいかなという気もしますね。
じゃあ中村先生の方はどうですか?吉津先生が言われてるようにアルコールで説明はつくと。
そこで一つちょっと置いといてとしてしまったんですが…。
高い値を示す田沼さんのGOT・GPT。
2人の研修医はその事を病気の鑑別には組み入れていなかった。
わざわざ奥さんが数字で持ってきたあの肝臓の方どうすんだよといってこの患者さんと家族が気にしてる事を無視してるじゃないかって。
だからアルコールではないという事から…甲状腺機能低下症だと私が思っていた症状の説明がつき肝臓の事も説明がつくものが隠れているのかもしれないし鑑別疾患をちょっとこれから考えていきたいと思ってます。
田沼さんの主訴手のしびれと高い数値を示すGOT・GPT。
2つの謎を結び付ける病名は果たして何か?さあ診断を絞り込むためにVTRの続きを御覧下さい。
ドクタージェネラル!この辺でしょうかねえ…。
こうすると少し楽になるんですよ。
足ですか?
(田沼)この辺ですねえ。
朝はよくしびれで目が覚めたりしてるみたいなんです。
(多恵子)ねえお父さん!
(多恵子)
それに疲れやすいのか寝不足なのか…。
これも年相応の事なんでしょうかねえ
うわっいたの?ごめん。
あっそれ私のよ!何かやってると思ったら。
借りったっていいだろガサガサなんだから。
何?少し太った?
2年前と比べて少し太ったみたいなんです
ほら。
(田沼)
痩せるよりは健康的だと思うんですけどね
(ため息)おばあちゃん。
はい?
(多恵子)お父さん出たからお風呂どうですか?はいありがとう。
邪魔でしょうがないよこのこたつ。
ほら。
あの…先生悪いとこがあったらはっきり言って下さい。
田沼さん病名はほぼ検討がつきましたよ。
さあでは研修医の皆さん考えられる病名をお書き下さい。
(玉ちゃん)ちょっと分かりました?今ので。
ガサガサして肌が。
「乾燥」っていうのが新しいですよね。
体重が増えて乾燥肌でかゆい。
こう何かプラプラってすると神経のしびれが取れるというのもあったじゃないですか。
それ血が通う…何ですかね?あれはただの気休めだろ。
気休め?気休めだよ。
(川上)振ると何か…。
何でですか?アバウトにきましたね。
脳梗塞だね。
これ今のがものすごいヒントになったんじゃないの?
(玉ちゃん)我々のが。
「脳」が?「脳梗塞」って書いてたら驚きますね。
さあ研修医の皆さん病名を書き終えたようです。
それではフリップを一斉にお出し下さい。
フリップオープン。
(玉ちゃん)さあそれでは中村先生からお願いします。
はい。
私は「甲状腺機能低下症」と考えました。
(玉ちゃん)中西先生。
「アミロイドーシス」と考えました。
(玉ちゃん)吉津先生。
私も「橋本病」を考えました。
変わってない方もいますがさあそれでは再びドクターGと研修医との真剣勝負です。
最終カンファレンススタート。
じゃあ変わってない方からいきますかね。
中村先生から。
甲状腺機能低下症だと考えた理由は2か月前から訴えている疲れやすさですとかあとはおばあちゃんはこたつはもう要らないと言ってるのにご本人はこたつを必要としてるような寒がりを連想させるような場面ですとかそういった症状が甲状腺機能低下症と矛盾しないと考えて疾患を変えずにこのまま出しました。
はい。
じゃ吉津先生。
(吉津)一度目と変えなかった理由としましては中村先生がおっしゃったような事同じように考えました。
2人は田沼さんが疲れやすく寒がりにもなっている様子からそれらが甲状腺機能低下症の症状と矛盾しないとして病名を変えなかった。
先ほど「アルコール」という事が出てきたんですけれども今度は「アミロイドーシス」非常に難しい病気なんですが。
アミロイドーシスっていうのはそれは病名ですか?アミロイドーシスというのは「アミロイド」ってタンパク質が体の中に…。
異常なタンパク質ですね。
異常なタンパク質が何らかの形でたまる事によって…。
その難しい病気が出てきたのはそれでならばその病気ならば足のしびれと手のしびれは説明できると?神経のところにアミロイドがたまる事によって手が例えばしびれているのじゃないか。
中西先生はアミロイドーシスが手と足のしびれを起こしていると考えた。
では3人の研修たちは最初のカンファレンスで謎だったGOT・GPTの高い数値をそれぞれどう説明するのか?これは研修医の先生方頭の中でどう処理していましたかね?肝臓の方に関しましては甲状腺のホルモンの働きとしてエネルギーを作って「代謝」というんですけどそういう機能を担ってるんですが代謝が落ちる事によって脂肪が蓄積されて脂肪肝になった事によって肝機能が悪くなった可能性もあるかなと。
甲状腺機能低下症というのは甲状腺の働きが落ちる事によって体のエネルギー消費ですとかいわゆる代謝というものが落ちて体重が増えたりといったような事も起きます。
2人は田沼さんの体重が増加していた原因として甲状腺機能低下症によって全身の代謝が落ちていたと考えた。
そのため肝臓に脂肪がたまり肝機能が低下。
その結果GOT・GPTも高くなっていたと考えたのだ。
ではアミロイドーシスを挙げた中西先生は?中西先生アミロイドーシスで肝臓がどのくらい障害されるか。
アミロイドーシスで肝臓に沈着するっていうのはあまり聞いた事は正直なくてアミロイドーシスで肝臓にたまってる事はないのかなというようなちょっと説明がつかないかなと思います。
こういう狭いところでいろいろな…例えば筋肉あるいは神経あるいは血管がこういうボトルネックって瓶の首みたいなところで通ってる時にたまれば症状が非常に出やすいんです。
こういうとこにたまれば出やすいんですが他のところで余裕のあるところでたまってもたまる事はたまるんですけど症状が出にくいと。
肝臓の方もなかなか考えにくい。
アミロイドーシスではGOT・GPTの謎は解けない。
甲状腺機能低下症の可能性が高まったのか?しかしここでドクターGからある疑問が…。
確かに肝臓に脂肪はたまってると。
でただ肝臓に脂肪がたまってるだけだとちょっと値が高いんじゃないか。
確かにちょっと高いというふうには思います。
吉津先生も同じような感覚ですか?そうですねはい。
2人が挙げた甲状腺機能低下症ではGOT・GPTの謎は解けないのか?カンファレンスは行き詰まった。
この謎を解き明かすべくドクターGが一つのヒントを出した!その時!そういう方から上がってるのかなという可能性はあります。
GOT・GPTは肝臓だけでなく筋肉が障害を受けた時も組織が壊れて血液中に流れ出し数値が上がる事があります。
それと甲状腺機能低下症ってこだわってきた病気とどう折り合いをつけるかどう説明づけるか。
「筋力」?「筋肉」ですね。
筋肉の中にも…普通GOT・GPTってすぐ肝臓を考えちゃうんですが検査値っていうのはあくまで数字なんでじゃその数字の背景にあるものをいつも考えなくちゃいけない。
田沼さんは甲状腺機能低下症によって…これでGOT・GPTが高かった謎が解けた。
ではもう一つの謎。
田沼さんの手のしびれは何が引き起こしていたのか?中村先生。
手のしびれに関して。
あるいは足のしびれでもいいですけれどもこの田沼聡さんの病気をこれから検討するうえでどういう検討をするか。
手足のしびれがまず先の方「末梢」といいますけれども手の近くではなくて遠い方の…。
先の方ですね先の方。
根元なのか先の方なのか。
しびれがどこが一体しびれるのかっていう。
田沼さんは教えてくれてます。
そこ見せて下さい。
この辺でしょうかねえ…。
こうすると少し楽になるんですよ。
足ですか?
(田沼)この辺ですねえ。
朝はよくしびれで目が覚めたりしてるみたいなんです。
指のこっちの方がしびれてる。
小指にはいかなかった。
そして手の甲は指さなかったですよね。
とすると小指の方薬指の方それから手の甲はしびれていないんだと考える。
手には……という3つの神経が通っています。
この3つの神経はそれぞれ異なる部分の感覚を支配しています。
田沼さんのしびれは親指から中指を中心とした手のひら側。
この事から…。
手首のところの神経が障害される…「手根管症候群」といって手首のところに神経が通っているトンネルみたいなところを神経が通ってるんですけれども。
手首の中央部には「手根管」というトンネルがありそこには腱や血管などと3つの神経の一つ正中神経が通っています。
手根管症候群はむくみ脂肪などの沈着その他さまざまな病気が要因で…実は最初のカンファレンスで手根管症候群の可能性を指摘していた研修医がいた。
腱鞘炎ですとか手首のところの神経が障害される…田沼さんの手のしびれ。
果たして手根管症候群でいいのか?その手根管症候群というキーワードが出ましたけれどもそれが手根管症候群でいいのかどうかという事は重要な情報になりますね。
手根管症候群というのはやっぱりこのしびれの範囲だけではなくて田沼さんが教えてくれる事もっとありましたよね。
「手を振ると楽になります」。
そうそう。
そうするとどうなりますか?動かすと静脈の流れがよくなって血液がうまく回るようになる。
そう。
そうすると例えば?むくみが改善されて症状が少し和らぐ。
それから一日のうちで…。
目が覚める時に痛いと。
朝。
これはね…どうして朝が強いのかという…。
(中村)動かさない時間が長くなるので手を振ると楽になるという事から考えるとその逆で増悪してるのかなという気はします。
だから田沼聡さんの手のしびれは手根管症候群。
そうするとさっきの足の裏なんかもそうですか?しびれたとこはどこでした?足の?
(中西)裏。
という事は足の甲はしびれていなかった。
(玉ちゃん)そうだそうだ。
(中西)足の感覚神経もやっぱり狭いところを通っている神経っていうのがありますのでそこに何かたまってしびれているのかなとも考えられると思います。
狭いとこ狙ってたまっていくわけだ。
たまりやすいのかなとはい。
手が「手根管」ならば?当たり。
え!?あっやべえ。
当然研修医の先生方も「足根管」という言葉頭の中に出てたと思うけれど。
田沼さんは手根管症候群の可能性が高い。
では2人が挙げた病名とどう結び付くのか?手根管症候群は…甲状腺機能低下症とそれから手根管症候群の関係を説明して下さい。
甲状腺機能低下症の病態病気の一つとして体にむくみが出やすくなるという事があります。
でこれに関しましては体の中にムコ多糖という物質がたまる事があると言われております。
それによって神経が圧迫されてしびれを起こしていると考えるとこの病気で説明がつくかなと思います。
田沼さんの場合はそれが…どうですか?今の事中西先生中村先生そう思います?甲状腺機能低下でも説明はつくのでいいのかなというふうには思います。
甲状腺機能低下症の患者の多くが橋本病。
ここまでの問診だけで田沼さんは橋本病と診断できるのか?その甲状腺機能低下症と橋本病を詰めなくてはいけないですよね。
橋本病という名前が付くと自分の体の中のいわゆる抗体という外から来た異物細菌ですとかそういったものを攻撃するような抗体と言われるものが間違って自分の甲状腺を攻撃してしまうような事があります。
自分の抗体による攻撃が原因とは断定できないので甲状腺機能低下症と大きな枠で書かせて頂きました。
血液で検査してこれは甲状腺機能低下症の中の橋本病であるという病名を初めて付けられるからだよね。
最終鑑別。
(玉ちゃん)いきますか?3人合意ができましたね。
できてるような気がしますよ。
では研修医の皆さん一斉に最終診断をどうぞ!
(拍手)田沼聡さんは甲状腺機能低下症によるむくみによって手足のしびれや痛みを引き起こす手根管症候群と足根管症候群を発症していた。
その後の血液検査により甲状腺機能低下症を引き起こす橋本病と診断された。
田沼さんは甲状腺ホルモンの投与を続けながら元気に仕事をしている。
さあ改めて池田先生からメッセージをお願いします。
お互い3人補い合って見落としているところを補い合って最後の診断まで実に道筋正しくたどりついてくれましたよね。
僕はこの年になると「池田先生みたいな先生には私は言う事ありません」という人ばっかりなんですよ。
だから教えてもらえなくなるんですね。
そうすると成長できなくなるんですよ。
池田先生が勤務先の少年鑑別所とは別に週に一度訪れる場所がある。
おはようございます。
ありがとうございます。
おはようございます。
医師不足が深刻化する刑務所で受刑者たちの診療を行っているのだ。
いや〜よかったですよ。
前よりずっと良くなってる。
ねえ良くなるんだもんね。
病院ほど充実した設備がない環境。
高齢化が進みさまざまな症状を訴える受刑者たち。
だからこそ新たな学びがあり医師としての力が試されると池田先生は言う。
「目の前の患者さんにどう対応するか」と…自分でここまでやってきたんだもん。
医師として更に成長したいという強い思いが池田先生を支えているのだ。
僕実はね見逃した事がある。
田沼さんが外来に来た時に一体これは何だろうと思って迷って迷ってふっとカルテのところを見たらあのバイタルサインがあってこれをもっと先に見てればもっと早く甲状腺機能低下症のところにたどりつけたのに。
君たちは今日しっかりその病歴バイタルサイン検査値を見逃さずに捉えて診断にたどりついてくれた。
あのバイタルサイン研修医に教えてもらう。
今みたいにです。
だから今日は本当にすばらしい事を教えてもらったんです。
研修医の皆さんいかがでした?パッと見た時に元気そうだとついバイタルにすごく目が行かなくなる事も正直ある時もあるんですがやっぱりその中でも全てをきちっと評価するという事が大事だなと実感しました。
病気にこだわり過ぎてしっかりと…例えば患者さんの服装とかまだちょっと身なりがきれいだとか言ってたので言われて初めて気付いてもっと病気だけじゃなくて患者さんの方もしっかり見ないといけないなと思いました。
説明をつけられない事が多かったのでこういう協力してこれからチーム医療という事も必要になってくると思うのでそういう点ではすごく勉強になった事だと思います。
石倉さんいかがでした?いやすごいもんだね。
さすが医者だね。
医者嫌いだって言ってたじゃないですか。
いや医者好きになったな。
いやほんとにこれだけのね少ない資料の中からこれだけ意見があってだから可能性とかいろんな何か症例があるんだという事を改めて知って。
我々が知らない事がこれだけ多いんだって思いますよね。
池田先生ありがとうございました。
研修医の皆さんもお疲れさまでした。
次回はどんなカンファレンスが繰り広げられるでしょうか。
さようなら。
さよなら。
(玉ちゃん)お疲れさまでした!
(拍手)2015/05/19(火) 14:05〜14:55
NHK総合1・神戸
総合診療医 ドクターGセレクション「手がしびれる」[字]
そば屋の主人63歳男性の右手がしびれだした。やがて左手もしびれだし…体の異変は老化のせい?酒のせい?ドクターGはすべての症状を解き明かすよう研修医に迫った!
詳細情報
番組内容
患者は、手打ちそば屋を営む63歳男性。1年前、息子が後を継ぎたいと会社を辞めて店に出るようになった。その無器用さにストレスを感じていた矢先、右手がしびれだした。半年ほどたつと、今度は左手もしびれだし、ぼんやりして会計を間違うことも。還暦を過ぎた頃から体の変化は感じていたが、はたして老化なのか、それともどこか悪いのか。客の前でそばをひっくり返した夫を見て、心配した妻が夫を連れてドクターGを訪ねた…。
出演者
【出演】高松少年鑑別所医師…池田正行,【ゲスト】石倉三郎,川上麻衣子,【司会】浅草キッド,【語り】小野寺一歩,佐竹海莉
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
バラエティ – クイズ
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
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