(井伏勝)はいお待ち。
140円ね。
はいどうもありがとう。
(宮部たまき)私絹3丁と木綿4丁。
それからお揚げ1枚。
(井伏)OK。
私は絹2丁と…がんもどき。
(井伏)はいがんもね。
おじさん私もがんもどき追加。
どうも毎度!いや〜すっかり冷え込んできたねぇ。
熱燗の季節ですね〜。
熱々のお酒をたまきさんのお酌でクイッと一杯かい?…最高だね。
どうぞお店にいらしてください。
(井伏)今夜あたり行こうかな〜。
あら!奥さんが焼きもち焼くんじゃないの?何言ってんの!今さら焼いちゃくれませんってんだ。
そういえば奥さんは?またウォーキング?おうおう…三日坊主だと思ったんだけどね…。
(井伏節子)あんた大変!どうしたんだお前?そこの…そこの神社で…。
死んでるの死んでるの!死んでるって!?
(節子)町内会の白坂さん!
(井伏)じゃお前すぐ警察に電話しろ!俺はちょっと見てくる!
(節子)110番110番…。
もしもし警察ですか?人が死んでるんです…。
いえ!殺されてるんです。
もしもし右京さん?
(米沢守)どうも。
死因は撲殺ですね。
頭部に傷が数か所。
落ち葉が多いのでゲソ痕は難しそうです。
(三浦信輔)神社で殺しとは神も仏もねえな。
(伊丹憲一)死亡推定時刻は?昨夜の8時から11時といったとこでしょうかね。
詳しい事は解剖を待たないとわかりませんが。
おい。
第一発見者の方です。
(芹沢慶二)ご苦労様です。
えー死体を見つけられたのは?
(節子)私です。
ウォーキングをしてる最中にたまたま。
あぁ女房ウォーキングが日課なもんで。
お2人とも被害者とは面識がおありになったとか?ええ白坂さんとはよく町内会で会いました。
最近何か変わった様子は?それが昨夜…。
(節子)あんた!黙ってるわけにはいかんだろう。
ん?ん?昨夜何です?ええ。
白坂さんがねケンカしてるのを見ちゃったもんで。
(芹沢)ケンカ?ええ鈴木さんと。
およしって!鈴木さんが疑われたらどうすんのよ。
すいません詳しくお願いします。
鈴木さんというのは?町内会の男性です。
いや別にあの人が怪しいって言ってるわけじゃないんですよ。
その方のお住まい教えていただけますかね?さぁ…家まで知らないな。
(田宮剛史)どうぞ。
(杉下右京)ではお2人とも白坂さんをご存じだったわけですね?
(池之端庄一)ええ。
もう30年近く町内会で一緒でしたから。
(田宮)真面目な人でしたよ。
ずーっと区役所勤めで。
区役所ですか?うん。
酒もタバコもやらないし人当たりも良くってね。
ケンカしてるのを見てビックリしちゃいましたよ。
(亀山薫)ケンカ?昨夜鈴木さんとね。
あ鈴木さんていうのも町内会の人なんですけどね。
その鈴木さんとケンカをなさっていた。
(池之端)いやただの口論ですよ。
神社の境内で。
あなたもご覧になった?ええ。
昨夜の10時頃でしたか豆腐屋の井伏さんと我々3人と飲んだ帰りに…。
(白坂英治)ふざけるな!お前こそどういうつもりだ!?
(池之端)神社を通りかかってたまたま見たんです。
口論の内容は聞こえましたか?それが2人とも我々に気づくと黙ってしまって…。
他人には聞かせられない話って事ですね。
鈴木さんの連絡先ですがおわかりになりますか?わかりますよちょっとお待ちください。
いただきます。
おや?田宮さん。
ここにあった町内会の連絡ノートは?
(田宮)ないんですか?おっかしいなぁ。
特命係の亀山ぁ!相変わらず遅いお着きで。
てめえ誰に聞いてやって来た?「特殊なルート」とだけ言っておこうか。
ケッ!笑わせんなこの亀公が!フン。
被害者は昨夜鈴木さんという男性と口論をしていたそうですよ。
知ってますよ。
すいません。
町内会長の池之端さんとおっしゃるのは?
(池之端)あ私ですが。
(芹沢)鈴木さんの住所を教えていただけますか?それが住所が書いてあるノートを誰かが持っていったみたいで。
わからないんですか?はい。
町内会の名簿などは?あるけど…鈴木さんは載ってないよ。
ひと月前に越してきたばかりだから。
名簿に載せるためにノートに住所を書いてもらってたんです。
(田宮)誰が持ってったのかなぁ?ここ出入り自由なんですか?鍵はありますけど普段開けっ放しの事が多いな。
(池之端)貴重品も置いてませんから。
おかしいなぁ…。
警部殿。
いつまでいらっしゃるおつもりですか?ちょうどおいとましようと思っていたところです。
ありがとうございました。
(池之端)あどうも。
特殊なルートのほう行ってみよっかな。
ケッふざけんな!そんなもんねえだろうがよ!イテッ!押すなよこの野郎。
行けよ早く!一課の連中どう動きますかね?まずは交番の巡回連絡簿をもとに町内の鈴木という人物をピックアップして順番に当たるでしょうねぇ。
じゃ俺らは地域密着型でいきますか。
それがいいですね。
町内会の鈴木さん?ご存じありませんか?さあ…町内会があるっていうのも初めて知ったわ。
そういう方もいらっしゃるんですねぇ。
ありがとうございました。
鈴木さん?ええ。
いやぁ知らないですね。
あぁそうすか。
どうも。
空き巣の次は殺人だもんな。
ホント嫌になっちゃうよ。
空き巣?えっ?いや今空き巣って。
あぁ…ちょっと前この辺りで何軒かやられたんですよ。
まったく物騒な世の中ですよホントに。
頼みますよ!…はい。
まったくもううちの人が余計な事言ってっから…!あのね鈴木さんはね人殺しなんかしませんよ。
お豆腐の好きな人に悪い人はいないんだから。
なるほど。
鈴木さんはよくお豆腐を買いにこちらのお店に?そう!礼儀正しい人でね。
あ!堂本さんにも聞いてみてくださいよ。
堂本さん?ええ3丁目の堂本さんね。
鈴木さんと親しかったみたいでね一緒に釣りか何か行ったみたいですよ。
堂本さんですね?そうそう。
そうですか。
あ僕にもお豆腐をいただけませんか?…はいはい。
はい280円ね。
ありがとうございました。
はいどうもありがとうございました。
(田宮)あぁいたいた。
刑事さん!おや先程はどうも。
ちょっと来てくださいよ。
はい?うちの女房がね昨夜鈴木さんと話したって。
もうすぐそばですから。
お願いしますよ。
あはい。
よいしょ!あ2人乗りはいけません。
(田宮志津江)だからね私は前からこの人に言ってたんですよ。
鈴木さんに関わらないほうがいいって。
とおっしゃいますと?いやね町内会に顔を出しても自分の事はほとんどしゃべらないし何か信用できないなって気がしてきてね。
きっとあの人が犯人ですよ。
おい!だって…!昨夜鈴木さんとお話をされたとか?そうなんですよ。
孫の家からの帰る途中道でばったり会ってね。
えーっとあれは確か11時過ぎてたかねぇ。
ご主人が鈴木さんを見たのは10時頃でしたよね?って事はガイシャと口論した後ですね?お会いになった時鈴木さんはお1人でしたか?お1人でしたよ。
何だか思い詰めたような顔をしててね。
だから私訊いたんですよ。
「こんな時間にどちらへお出かけですか?」って。
そしたら?そしたらねあの人「酒を飲みに」って答えてそのまんま小料理屋に入っていきました。
小料理屋に。
その店の場所を教えてもらえますか?ちょっと歩くんですけどねぇ。
そこの十字路を左に曲がって突き当たりを右です。
「花の里」っていうんですけどね。
えっ?お茶とお豆腐です。
あら珍しい。
いただきます。
ところでたまきさん昨夜遅くなんですが男性客が来てますよね?ええいらっしゃいましたよ閉店間際に。
初めて見えるお客さんでしたね。
あの方何か事件と関係あるんですか?いやいやまだよくわからないんですけども何か話しました?そういえばちょっと変でしたね…。
何か召し上がりますか?いや酒をもう1杯。
冷やでいい。
(携帯電話)もしもし?あぁ鈴木だ。
すまない今ちょっと…。
また後で掛け直す。
電話で確かに「鈴木」と?ええはっきり聞こえましたよ。
でも何か人に聞かれたくない話のようでしたけど。
他には何か話しました?後はお天気の事ぐらいかしら。
でも随分と乱暴な飲み方をされてましたよ。
何か思い詰めたような顔で。
たまきさんによれば鈴木は年齢40代。
中肉中背。
外見的に目立った特徴はなしと。
ええ。
まだまだ見えてきませんねぇ。
どうしたんすか?柳瀬町3丁目17。
この辺りに堂本さんというお宅があります。
堂本?ええ。
鈴木さんと親しい人物だそうですよ。
あぁそうすか。
じゃあ…あっあの子たちに訊いてみます。
ええ。
ねえねえ僕たち。
この辺にさ堂本さんていうお家あるの知らないかな?
(ブザー)なっなっ何?ちょっと止めて止めて!怪しいもんじゃないんだよ。
(堂本達也)どうした!?
(子供たち)堂本のおじさん!
(ブザー)何があった?いや警察です…。
悪く思わんでください。
この町の子供らは知らない大人に声を掛けられたら防犯ブザーを鳴らせと教えられてるんですよ。
学校でそう教えてるんですか?いやいや町内会でね。
これ見てくださいよ。
おぉ「町内会パトロール隊」。
あっ!交代でね町内の見回りをしてるんですよ。
この町の子供らは町のみんなで守んなきゃなんないでしょ。
防犯意識が徹底してらっしゃるんですねぇ。
そりゃあね今の世の中いつ犯罪に巻き込まれてもおかしくないですから。
あぁそういえばしばらく前に空き巣の被害もあったんですよね?そうなんですよ。
町内で何軒かやられてんですよ。
それで今度は殺人でしょ?しかもあの白坂さんがね。
被害者をご存じでしたか。
そりゃ私も町内会に入ってますから。
その町内会に鈴木さんという方がいらっしゃいますね?鈴木さん…?あぁ!いますけど?堂本さんは鈴木さんと親しくなさっていたとか?ええ…釣り仲間でね。
腕前は私のほうが上ですけどね。
あの人がどうかしたんですか?昨夜口論してたらしいんですよ殺された白坂さんと。
えぇ…!?2人のトラブルについて何か心当たりありませんかね?さあ見当もつかないな…。
では鈴木さんの連絡先を教えていただけませんか?鈴木さんの?ええ。
えーっとね2丁目に住んでるとは言ってたけども…詳しくは知らないな。
電話番号も消えちゃったし。
消えた?携帯に入れといたんだけどね渓流釣りの時に水の中にポーンと落っことしちゃって。
それで全部パアですよ。
昔から機械とは相性が悪くてね。
(子供たち)うわイッテェ!
(堂本)おい!ケガしたらなこれは洗わなきゃダメだぞ。
ちょっと行こう。
ついてこい。
でもちょーっと極端な気もしますけどね。
何がでしょう?防犯ブザーですよ。
いくら何でも知らない大人全員疑えってのは…ねえ?しかし矛盾してますねぇ。
矛盾?いえ僕の思い過ごしかもしれませんが。
あぁ。
(米沢)被害者の白坂英治ですが私生活にこれといった問題はありませんでした。
区役所での勤務態度もいたって真面目との評判です。
独身だったんですねぇ。
浮いた噂もなしですか?ちなみに捜査一課は例の鈴木さんをまだ見つけられずにいるようです。
現場近辺の銀行やコンビニに防犯カメラの映像を提供させたと聞きました。
そうですか。
報告事項としては今のところその程度でしょうかね。
どうもありがとう。
いつも悪いっすね。
情報を持ってきてもらって。
このスリルと後ろめたさがすっかり癖になってます。
しかし見つかんないもんすねぇ。
謎の鈴木さんは。
大都会で1人の人間を捜し出すのはなかなか至難の業ですからね。
かくいう私も別れた妻の行方を捜してかれこれ3年。
一向に見つかりません。
それは向こうが逃げてんじゃないすかね。
あっ…。
犯行現場近くのコンビニやATMから防犯カメラの映像を入手しました。
お配りしたのはその映像を写真に起こしたものです。
(伊丹)すべての写真に人物が写り込んでいます。
この中にその鈴木さんがいるか皆さんで確認してください。
捜査に協力してくれっていうから何かと思えば…。
お前!鈴木さんは犯人じゃありませんよ!あの人を疑うなんてみんなどうかしてるわ。
そうですよ。
これじゃ鈴木さんがかわいそうだ。
事件の早期解決のためです。
ご協力お願いします。
刑事さんのおっしゃるとおりです。
鈴木さんの疑いを晴らすためにも言われたとおりにしましょう。
…はい。
クーッ!気配がすると思ったらやっぱりいやがった!エスパーかお前は?失せろ亀吉!やなこった。
んだと?コラァ!
(たまき)刑事さん!これ鈴木さんじゃないかしら。
(田宮)似てるかなぁ?うん…違う気がするなぁ。
(志津江)こんな写真じゃよくわからないや。
いや…でもこの人だと思いますよ?あっ!見るんじゃねえよ。
もう見ちゃったよ。
いやぁたまきさん思わぬ活躍でしたね。
仕事柄人を見分けるのは得意なのでしょう。
うまくいけば身柄確保につながるかもしれませんよ?そうなるといいですねぇ。
うれしそうっすね。
はい?ハハ…いえいえ。
あっ刑事さん!ちょっと刑事さんちょうどよかった。
今ね集会所に戻ろうと思ってたの。
どうしました?電話。
(節子)鈴木さんから電話来てるの!早く早く…。
とにかく戻っておいで。
あんたね警察に疑われてんだよ。
来た来た刑事さん。
もしもし?今刑事さんに代わるよ。
とにかくね訊かれた事には答えるんだよ。
わかった?もしもし鈴木さんですか?「はい鈴木です」警視庁特命係の杉下と申します。
今どちらにいらっしゃいますか?鈴木さん?「私が殺しました」はい?「私が白坂を殺しました」お会いして詳しくお聞きできますか?「これから死にます」鈴木さん早まってはいけません。
「死んで償います」鈴木さん…。
(不通音)鈴木さんがどこから電話を掛けていたかご存じですか?わかりません。
鈴木から電話?
(芹沢)死んで償うって言ったんですか?ええ。
そうだよ!ボヤボヤしてねえでとっとと捜し出せよ!うるせえなぁ!おめえは黙ってろ!
(三浦)イタズラ電話じゃないんですか?だといいのですが一応ご報告を。
あのーちょっとよろしいですか?
(米沢)ここで一旦ガムを手に取りまた棚に戻します。
でそれがこのガムです。
でこのパッケージの指紋から浮かんできたのがこちらの男。
(三浦)前科があったのか!
(米沢)ええ3か月前に空き巣の現行犯で逮捕されたものの不起訴になってますね。
江島郁夫?住所新宿ですよ!
(三浦)新宿…!?鈴木は偽名だったわけか。
(伊丹)ついてきてんじゃねえよ!取り急ぎ身柄確保に向かうほうがよろしいかと。
わかってますよ。
おい行くぞ。
(伊丹)ついてくんなよ!早く行け!
(伊丹)うっせえよ!こいつが早まった真似する前に確保できりゃ事件も解決に向かうかもしれませんね。
そうとも限りませんよ。
は?この男江島が空き巣で逮捕されたのが3か月前。
確か柳瀬町でも空き巣被害がありましたよね?えっ?こいつが?だとするならばおかしな事になりませんか?なりますね。
(チャイム)江島さん!江島さんいますか?
(芹沢)江島さん?江島さん!右京さん。
どうでした?おっしゃるとおりおかしな事になりそうですよ。
江島が空き巣に入ったのは白坂英治の家でした。
やはりそうでしたか。
ええ。
つまり江島は3か月前白坂英治の家を荒らし…。
3か月後に白坂英治本人を殺した。
ええ。
(角田六郎)暇か?いいえ!今大事な話してんすからもう。
OK邪魔はしない。
コーヒー飲みに来ただけだから。
あとおかしな事はまだあるんですよ。
あそうそう。
あの鈴木って名乗ってた男な自宅で死んでたらしいぞ。
えっ!?首吊って自殺したとさ。
間に合わなかったようですねぇ。
やっぱりあの電話本気だったんすね…。
鈴木さんの正体は新宿在住の江島という男である可能性が高くなりました。
つまり鈴木は偽名だったんです。
そうでしたか!しかしそれをなぜわざわざ私に?あなたは以前から江島の正体をご存じでしたよね?はぁっ!?江島は3か月前この町で逮捕された空き巣でした。
民家に盗みに入ったところをパトロール中の町内会の住民に見つかり警察に突き出された。
しかも民家は偶然にも殺された白坂さんのお宅でした。
そして空き巣を捕まえた住民というのは…堂本さんあなただったんですねぇ?ご自分の手で警察に突き出した空き巣が鈴木と名を変えてこの町に住み始めた。
あなたはそれに気がついた時妙だとは思わなかったのでしょうかねぇ。
気づきませんでした。
はい?鈴木さんがあの時の空き巣だったとは少しも気づきませんでした。
何すかそりゃ。
つまりあなたはご自分で捕まえた男の顔をお忘れになっていた。
ええ。
2人で釣りに行っても一向に気づかなかった?そのとおりです。
(笑い)あり得ませんよねぇ?そんな事。
しかしそれが事実ですから。
もういいでしょう。
あなたは以前警察官でしたね?5年前までこの町の交番に勤務していらした。
空き巣の件を調べるうちに知りました。
きっとあなたは誰よりもこの町を愛してらっしゃるのでしょうねぇ。
愛してますとも。
ええ。
ですからそんなあなたがなぜ鈴木さんをいや江島を庇おうとなさっているのでしょう?この町を荒らしこの町の人間の命を奪った江島を。
別に庇おうとなんか…。
なさっていない?もちろんです。
では庇う振りをなさっている?いい加減にしてください!これじゃまるで尋問だ。
冗談じゃない。
江島は自宅で死んでましたよ。
恐らく自殺だと思われます。
そうですか。
お気の毒です。
白坂…この家ですね。
終わったら連絡ください。
恐れ入ります。
ありがとうございます。
えーっと…。
何か出てくりゃいいんすけどね〜。
ところで君は気になりませんか?何がですか?鈴木さんと関わっていた人々にはある共通点があります。
共通点?ええ。
鈴木さんを知るのはいずれもこの町に長く住んできた人ばかりです。
つまりこの町に根を下ろし町とともに生きてきた人々です。
年齢は皆50代以上。
単なる偶然なんじゃないすか?偶然だと断定する根拠はありますか?ありません。
すいません。
じゃ右京さんが偶然じゃないとする根拠は何ですか?ありません。
ないんですか?ですから気になっているだけです。
あれ?はい?あぁ…すいませんいやただのキーホルダーです。
ちょっと見覚えがあったもんですから。
見覚え?ええうちの姉ちゃんがね同じようなのを持ってたんですよ。
アニメのキャラクターなんですけど姉ちゃん大ファンで。
お姉さんがファンという事はかなり昔のアニメですねぇ。
え〜30年近く前ですかね。
俺も毎週一緒に見せられてました。
名前は覚えてますか?え?このキャラクターの名前です。
あっこれ?ええ。
え〜マジック…いやマジカル…。
そんな事聞いてどうすんすか?何すか?あ…。
同じキャラクターですねぇ。
ですね。
白坂さんにはお子さんいらっしゃいませんでしたよね?あそうか!え?じゃこの人もファンだったんすかね?白坂さんのご趣味でしょうかねぇ…。
魔女っ子…いや違う。
何だっけな?
(美和子)『マジカル・リリィ』だ!あ〜思い出した!それそれ。
女の子の間で流行ったのよね〜。
「マジカル・マジョリカ・マジョリータ」!シュワワワ…。
変身の呪文知らない?お前にもかわいい時代があったんだねぇ。
ありましたとも。
変身ステッキだって持ってたんだから。
んっ!?ねえステッキってさ…これ?
(美和子)これこれ!途中でねライバルの魔女に壊されちゃうの。
でね魔界の女王様が新しいステッキをくれるのよ。
って事はこのステッキは…。
旧バージョンだね。
おはようございます。
右京さんわかりましたよ。
何見てんですか?帝都新聞1982年9月の記事です。
「少女の遺体公園で発見」?あの町の過去が気になったので調べてみました。
柳瀬町では今から24年前小学生の少女が学校帰りに殺害されるという事件が起きています。
犯人が見つからないまま9年前に時効を迎えています。
それじゃあ子供たちがみんな防犯ブザー持ってたってのは…。
町の痛ましい記憶が極端な防犯教育という形で現れているのでしょう。
そうだったんすか…。
それで?それで?ですから君のわかった事とは何でしょう?わかった…ああ!『マジカル・リリィ』でした。
はい?あのキャラクターですよ。
アニメが放送終了したのが22年前。
右京さんが見つけたステッキはその前年に生産ストップされたもんでした。
という事は生産されたのは1983年以前…。
はい。
つながりましたね。
え?あ…もしかして!?この事件と時期が一致します。
24年前の事件3か月前の空き巣今回の殺人…。
そして鈴木という男。
真実はもうそこまで見えています。
しかしその真実というのは極めて残酷なものかもしれません。
皆さんのお陰で何とか事件は解決できそうです。
今日は事件の真相についてこれまでに判明した事をご報告するために皆さんにお集まりいただきました。
(志津江)で犯人はやっぱり鈴木さんでした?ご安心ください鈴木さんは犯人ではありません。
(田宮)本当かい?はい。
そりゃよかった…。
で誰が犯人だったんです?その前に皆さんに少々お訊きしたい事があります。
池之端さん。
鈴木さんの連絡先が書かれていたというノート。
あれは見つかりましたか?いやそれがまだ出てこないんです。
誰が持ってったものやら…。
そうですか。
ところで田宮さん。
あなたは以前この集会所について「鍵はあるが開けっ放しになっている事が多い」。
そうおっしゃってましたね?あぁ…言ったかもな。
矛盾してますね。
どこが矛盾してんです?これほど防犯意識が徹底した町であるにもかかわらず集会所の鍵は開けっ放し。
しかもこの町は3か月前に空き巣の被害に遭っています。
町内会としても集会所の鍵ぐらいは掛けておきそうなものだと思いますがねぇ。
あの…一体何の話です?私たちは事件について知りたいんですよ。
失礼。
つい細かい事ばかり気になってしまって。
この人の悪い癖。
もったいぶらずに早く教えてくださいよ。
そうですよ!白坂さんはどこの誰に殺されたんですか?それは皆さんすでにご存じのはずですよ。
あなた方はその犯人を庇い犯人の罪を全く関係のない鈴木さんに背負わせようとしている。
違いますか?ちょっ…ちょっと待ってください。
そうですよ。
あんまりじゃありませんか。
まるで我々が鈴木さんをはめてるみたいだ。
そういう事になりますねぇ。
冗談じゃない!何の罪もない人間を殺人犯に仕立てたりするもんか!そこです。
あらぬ罪を背負わされる鈴木さんという人物は一体何者なのか。
実は何者でもなかったのです。
鈴木という人間はどこにも存在しません。
つまりあなた方が作り上げた架空の人物だったんですよ。
鈴木の住所を記したというノート。
そんなものも初めから存在しなかった。
当然ノートが持ち去られたというのも作り話です。
(堂本)あんたたち何言ってるんだ!?我々の話がみんなでっち上げだって言うのか?そのとおりですねぇ。
じゃあ何かい?花の里の女将さんもグルだってのかい?そうですよ。
あの女将さんだって鈴木さんを見てるんですよ?ええ。
その事実があなた方の綿密な計画を物語っています。
鈴木の存在に現実味を与えるためにあえて証人を作る事にした。
すなわち誰かに鈴木を演じさせてそれを第三者に目撃させようと考えたのです。
では誰に鈴木を演じさせるか?堂本さん。
あなたの頭にはとっさにある人物の顔が浮かんだのではありませんか?ん…何の事です?3か月前にあなたご自身の手で警察に突き出した男。
ここからは離れた所に住んでおりなおかつ金のためなら迷う事なく犯罪に荷担する男。
それが江島だった。
あなたは江島に金を握らせてこの近くの小料理屋で酒を飲むように指示を出した。
(江島)酒をもう1杯。
冷やでいい。
そして彼に電話をし鈴木と名乗らせた。
もしもし?あぁ鈴木だ。
店の女将宮部たまきの目撃証言によって鈴木という人物の存在は確実なものになります。
その後の皆さんの行動はかねてからの計画どおり警察の聞き込みに対し1人1人が鈴木という人物に疑いが向くような証言をしました。
鈴木の人物像も被害者ともめていたというストーリーもあらかじめ用意されていたものだったんですね。
あなたは鈴木を庇う役を演じましたね?そのためにより鈴木の存在に信憑性が加わりました。
デタラメよ。
何もかもデタラメよ!そうだ。
全部あんたらの勝手な推理じゃないか!我々みんながグルだと言うならその証拠を出しなさい証拠を!証拠はこれからいくらでも見つけられますよ。
しかし我々はできればそれを避けたいと思っています。
(池之端)なぜですか?今ならまだ自首扱いにできるからです。
池之端さん。
24年前に殺害されたあなたのお嬢さん…桃代ちゃんもそれを望んでいると思いますよ。
違いますか?皆さん。
あぁどうもご苦労様です。
桃代ちゃんお出かけか?
(池之端桃代)うん。
いいねぇ〜。
いってらっしゃい。
いってきまーす。
いってらっしゃい。
お豆腐1丁ください!
(井伏)あら桃ちゃん。
かわいいね。
ねえ。
おじちゃんおばちゃんこんにちは。
桃代ちゃんどこ行くの?
(桃代)おつかい!いってらっしゃい。
私が殺しました。
(堂本)会長さん!白坂を殺したのは私です。
私がこの手であいつを…!本当にかわいい子だったんですよ桃代ちゃん…。
おつかい頼まれてよくうちの店に豆腐を買いに来たよ。
小さな手に100円握りしめて…。
お豆腐渡すと「ありがとう」ってにっこり笑って…。
なのにあの男…あんなかわいい子を…!
(泣き声)それがすべての始まりですね?桃代は学校の帰りに命を奪われました。
なぜもっと人を疑うようにしつけなかったのか。
なぜ大人を警戒するように育てなかったのか。
今でもその事が悔やまれてなりません…。
(井伏)町のみんなと犯人探したよ。
ビラ配ったり証拠を探して歩き回ったり…。
(田宮)白坂もその中にいた。
いけしゃあしゃあと犯人探しに加わっていた。
(堂本)私の責任です。
あの男を少しも疑わなかった。
犯人があんなに近くにいたのに気づかなかった。
24年間も…。
そして事件が時効になった後ある日偶然1人の空き巣がこの町に現れた。
(堂本)偶然じゃありませんよ。
はい?桃代ちゃんです。
桃代ちゃんが教えてくれたんです…。
(堂本)おい君!何してる?この家で何してた?いや…。
おい待てっ!見逃してくれよ…。
この空き巣!借金があんだよ勘弁してくれよ…。
おいこれおめえのか?知らねえよ。
さっきの家から引き出しごといただいたんだよ。
白坂さんの!?
(堂本)『マジカル・リリィ』…。
桃代ちゃんが好きだったキャラクターです。
桃代ちゃんの名前が入ってました…。
江島が盗んだものの中にその筆箱があったんですね?初めはただの偶然だと思いました。
しかし気になって当時の捜査資料を洗い直してみたんです。
調べれば調べるほど白坂が怪しく見えてきました…。
桃代ちゃん白坂になついていたんですよ。
ああ。
だから当時は誰1人疑わなかった。
迷ったすえあなたは池之端さんにそれを確認した?桃代の筆箱でした。
私がデパートで買ってやったもんです。
名前を書いたのも私です。
問い詰めたんですね?白坂を。
ええ。
あの夜…。
(堂本)空き巣があんたの家から盗んだものだ。
どうしてあんたがこれを持ってるんだ?私が桃代にあげたものをどうしてあんたが!?24年前桃代ちゃんのランドセルが遺体のそばに落ちてた。
中身が荒らされてた。
筆箱もキーホルダーもステッキも犯人が奪ってた。
あんただったのか?桃代ちゃん殺したのあんただったのか!?あの子が悪いんだよ…。
何だって?あの子があんなにかわいかったから悪いんだ…。
殺すつもりはなかった…。
なのにあんなに騒ぐから…!お前…!!
(白坂)ううっ…!
(堂本)その後すぐ町内会の皆を集めました。
(志津江)嘘だろ…?あの白坂さんが桃代ちゃんを…!?チキショウ!どうして今まで気がつかなかったんだ!私は警察に行きます。
警察?皆さん申し訳ないが町内会をよろしく頼みます。
これからも町の子供たちを皆さんで守ってください。
どうかお願いします。
自首する事はない!あんたを誰も咎められやしないよ!そうだよ会長さん!自首なんかしちゃダメだ。
あんたはずーっと苦しみ続けてきた。
苦しみながらもずっと町の子供たちを守ってきた。
みんなが会長さんに感謝してるんですよ。
会長さんはこの町に必要な人なんです!しかし私は人殺しを…。
(堂本)あんたが殺したんじゃないよ!白坂殺したのは別の人間です。
(池之端)堂本さん…。
警察にそう信じさせるんです。
例えば…。
そう「鈴木」です!鈴木?犯人は鈴木だ。
会長さんじゃない!そういう事にするんですよ。
警察の目を架空の人物に向けさせるんです。
私は協力するよ?会長さんのために。
俺も協力する。
(節子)私も。
皆さん…。
堂本さん何でも言ってくれ。
会長さんを守るにはどうすればいいんだ?これから私が話す事よく聞いてください。
そこから先は刑事さんのおっしゃったとおりです。
その後すぐ私は江島に連絡し事情を話して金を握らせ鈴木という男を演じさせました。
しかし1つだけ予測していなかった事態が発生しましたね。
まさか江島の姿がビデオに写ってたなんて…。
江島の口から真実が語られるのを恐れるあまりあなたは第二の殺人を犯さざるを得なくなった。
はい。
今思えばあの電話の声はあなただったような気がしますがいかがでしょう?江島を殺したのは私です。
私1人でやりました。
(堂本)「私が殺しました」はい?これから死にます。
「鈴木さん早まってはいけません」死んで償います。
「鈴木さん…」
(堂本)その後すぐ江島のアパートに向かいました。
そして江島の首を絞めて殺害し死体を自殺に見せかけたんです。
これがすべてです。
(志津江)鈴木さんは架空の人なんかじゃない。
そんなふうに途中から思い始めていたんです。
(田宮)俺もだ。
鈴木さんが本当にこの町にいたような気がするよ。
私も。
いつの間にか本気で鈴木さんを庇ってました。
鈴木さんは桃代の無念を晴らしてくれた。
そして今でもどこかでこの町を見守ってくれている。
子供たちの安全をそっと見守ってくれている。
そんなふうに思えてなりません。
どんなにいいでしょうねぇ。
…それが本当だったら。
どんなにいいでしょう。
一種の自己暗示だったのかもしれません。
自己暗示?鈴木という人物は実在する。
そう自分に言い聞かせているうちにそれが徐々に彼らの中で真実になっていったのでしょう。
町ぐるみの犯行…やるせないっすね。
はいお豆腐です。
味わって食べてくださいね。
あのお豆腐屋さんしばらくお休みですから。
すぐ戻ってきますよ。
すぐにまたうまい豆腐を作ってくれます。
そうですね。
楽しみに待ちましょう。
(電話)はい花の里です。
あっご予約ですか?ありがとうございます。
お名前は?…はい鈴木様。
かしこまりました鈴木様お待ちしております。
この鈴木さんは本当の鈴木さんですかね?鈴木さんと言ってるんですから鈴木さんでしょ。
2015/05/19(火) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
相棒 season5[再][字]
「犯人はスズキ」
詳細情報
◇出演者
水谷豊、寺脇康文 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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