4きょうの健康 慢性腰痛を治す「薬と認知行動療法」 2015.05.19


「きょうの健康」昨日に続きまして「慢性腰痛を治す」がテーマです。
ラインナップはこちらです。
昨日は「痛みの原因と運動の効果」という事でお伝えしたんですが今日は「薬と認知行動療法」についてお伝えします。
お話し頂きますのは…整形外科特に脊椎脊髄の治療がご専門です。
よろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
今回のポイントはこちらでしたね。
腰痛のこれは成り立ちですけれども筋肉と関節の炎症神経の圧迫と炎症ストレスうつ不安とこういった3つの要素が腰痛には関わってくるんですけれども慢性腰痛の場合にはこのストレスうつ不安が大きく関わっています。
つまり脳にも原因があるといえます。
それではおさらいになりますが脳と慢性腰痛どう関わりがあるのかお話お願いします。
こちらは脳の模式図ですけれども体に痛みを感じるとそれが脳に伝わります。
脳に伝わりますと脳の中でドパミンという神経伝達物質がたくさん分泌されます。
そうしますと脳の中でμオピオイドという物質が増加しましてこれが下行性疼痛抑制系を働かせて痛みを遮断します。
もともと人にはこういった機能が備わっております。
ところがストレスにずっとさらされていますと痛みが脳に到達しても脳内でドパミンの放出がなくなってしまいます。
その結果この下行性疼痛抑制系が働かなくなってしまいまして僅かな痛みも強く感じてしまったりですとか痛みが長引いてしまったりとそういった事が考えられます。
その下行性疼痛抑制系というのも昨日初めて知ったんですけどどうなんでしょう慢性腰痛の人が自分である程度ストレスと痛みが関係あるというそれをチェックするような方法ってあるんでしょうか?あります。
私たち福島県立医科大学で開発された自分でできるチェックリストですけどもそれをこれから紹介したいと思います。
こちらは10項目あります。
最初の5項目が示されております。
「いいえ」「ときどき」「ほとんどいつも」という3択で答えて頂きます。
これはある人の例が出てきますけれどもそれぞれの回答を見ていきましょう。
それでは続いて6から10ですけれども…これらの得点を合計して評価致します。
この方の場合は合計が19点という事でこのチェックリストは15点以上ですとストレスなどの心理的要因が関わっているという事が疑われます。
そうしますと15点以上だと慢性腰痛にストレスが関与ですから14点までは関わっていないとそう考えてよろしいんですか?そうですね。
このチェックリストはもともとストレスなどの心理的要因が関わっていないという事を確かめるために開発されたものなんです。
この自分でチェックするチェックリスト以外に我々医師ですとか看護スタッフなどがやる治療者用のチェックリストというものも作られておりまして実際の臨床の現場では患者さんが自分でやるチェックと我々医療者がやるチェックの両者の面から評価しております。
心理的要因というのは非常に評価が難しいので多方面から評価する事が必要だというふうに考えています。
それではストレスが慢性腰痛に関わっていると考えられた場合治療法ですねご紹介頂けますか?慢性腰痛の治療には運動療法薬物療法認知行動療法と3つあります。
昨日は運動療法についてお伝えしました。
今日はまず薬物療法についてです。
薬物療法ですけれどもこれは急性腰痛も慢性腰痛も同様なんですがまずは痛み止めのお薬を使います。
これには大きく2種類ありまして非ステロイド性消炎鎮痛薬というものとアセトアミノフェンこれは解熱鎮痛薬ですけどもこの2つが大きく挙げられます。
アセトアミノフェンはよく風邪薬などに入っていますね。
そうですね。
これで痛みの軽減が得られる方もおりますが慢性腰痛の場合にはいわゆる痛み止めで軽くなるという方は少ないという事もいえます。
その場合には次にこの抗不安薬ですとか抗うつ薬こういった薬を使う場合があります。
でも腰痛ですよね腰痛なのにどうして抗不安薬とか抗うつ薬を使うんでしょうか?まずそのメカニズムなんですけども抗不安薬の場合には不安・緊張そういったものが痛みと共にある場合が多いのです。
抗不安薬によってその不安・緊張を取り除く事でそれによってストレスが減ると考えられます。
ストレスが減りますとストレスによって働きが悪くなっていた先ほど出てきた下行性疼痛抑制系この働きがよくなりまして痛みが軽くなるとそういったメカニズムが一つ考えられます。
一方抗うつ薬ですけれどもこちらはですね先ほどの下行性疼痛抑制系の中でドパミンが増えて働くのですがそのあとに脳内で増えるセロトニンとノルアドレナリンというこれも神経伝達物質なんですけれどもこの物質を直接抗うつ薬は増やすという働きがあります。
セロトニンとノルアドレナリンですね。
そうですね。
こちらも神経の伝達物質なんですけどもこれが増える事で下行性疼痛抑制系が働いていきます。
従って抗うつ薬はこの2つの物質を増やす事で直接下行性疼痛抑制系を働かせる。
それによって痛みを軽くすると。
そういった効果が期待できます。
そのほかのお薬というのはあるんでしょうか?そのほかには痛みを抱えていると筋の緊張が強いという場合がありますのでそれをほぐす筋弛緩薬というお薬。
それと痛みが非常に強い場合先ほど出てきた2種類の痛み止めのほかにオピオイドといういわゆる麻薬ですけれどもこういったお薬も慢性の腰痛に使う場合があります。
いずれにしても薬物療法というのは慢性腰痛の治療の中ではどちらかというと補助的な役割を果たします。
薬物療法などで痛みをなるべく和らげてより体が動かしやすくなって運動療法ができるとそういった事が大事になってくると思います。
そうしますとメインはさっきおっしゃったように運動療法でそれを補助的なものとして薬物薬を考えるという事になる訳ですね。
やはりお薬だけで慢性腰痛を治療するというのはなかなか難しいのでこの3つですけれども組み合わせて治療するという事が大事だと思います。
ここまで運動療法そして薬物療法見てまいりましたけどもう一つ治療法として認知行動療法ありますね。
これは改めてどういうものか教えて頂けますか?これは認知と行動の両方なんですけれども認知考え方を変えてそれによってそれで行動する事も変えていくとそういうふうな事をして更に痛みを改善していくという方法です。
ここである患者さんの例を見てみます。
この方は50代の男性管理職の方です。
慢性腰痛で悩んでらっしゃいます。
MRI検査では全く異常は見つかりませんでした。
この方の特徴としましてはノルマ達成が目標で完全主義なんですね。
これがこの方の特徴だと。
異常がなかったので慢性腰痛のメカニズムの一つとして先ほど出てきたストレスとか下行性疼痛抑制系そういったお話をこの方にしました。
するとBさんは自分に思い当たるところがあると。
そういうふうにおっしゃいました。
この方は先ほど出てきたノルマを達成するという目標に縛られていてノルマが多くなった時にはそれに伴って痛みが増えると。
そういう事を気付かれていたんですね。
つまり仕事量が多くなってノルマの達成が難しくなるとストレスを感じて痛みが強くなる。
そういった事が考えられます。
この方にはそのノルマの達成というものがストレスになっていると。
そういうふうにお話ししました。
そうするとこのBさんはノルマを絶対に達成しなくてはいけないという考え方をやめる事ができたんですね。
そうしましたらこの方の慢性腰痛は劇的に改善しました。
劇的に。
でもなかなか考えを変えるという事は難しいような気もするんですけど。
そうですね。
実際はもともと持っている考え方を変えるというのは非常に難しいのでその時には実際その仕事量を現実的に減らすですとか場合によっては職場を変えるなんていう方法もとられる事があると思います。
ほかにどういう例があるんですか?よくある例としては腰痛を抱えていると腰痛があったら何もできないという極端な考え方をしてしまう場合が多いんですね。
分かるような気もしますけど痛いから。
そうですね。
ですが慢性腰痛の場合には腰は痛いけど動いてもいいというふうに考えられるので例えば日常生活で買い物ができたですとかあとは図書館などに行けた料理が作れたなど痛くてもいろいろな事ができたという事をプラスに考えていく事が大事です。
それによって徐々にできる事が増えていって生活が改善してその結果腰痛もよくなっていくと。
そういう事が期待できます。
痛くてもとにかくずっと寝てるんではなくて何かできる事から一つ一つ始めていく事がやっぱり大切になりますか?そのとおりです。
痛みがあっても何かできるとそういうふうな考え方が重要だと思います。
はい。
もう一つ腰が痛くても好きな事をやる。
これも大事です。
例えば親しい人との食事ですとか映画を見に行く好きな音楽を聴くあとはかわいいお孫さんに会うですとかそういった事をするといいといわれています。
とにかく好きな事楽しい事そういった事をやると腰痛が軽くなるという事が考えられます。
昨日今日とお話を伺ってまいりまして好きな事楽しい事それがキーワードのようですね。
そうですね。
楽しい事をすると脳の中の先ほど出てきたドパミンがたくさん放出されてそれによって下行性疼痛抑制系が活性化してそれで痛みが軽くなる。
そういうメカニズムが考えられておりますので楽しい事好きな事をやるというのは非常に重要だと思います。
運動も無理にというよりも好きな運動をという事でしたね。
運動療法も運動そのものがストレスになってしまってはこれは元も子もありませんので好きな事でストレスにならない事を継続的にやる。
そういう事が大事だと思います。
この3つを実行すれば軽減すると考えてよろしいですか?そうですね。
一度に慢性腰痛をなくすという事は非常に難しいんですけれどもこのような方法を組み合わせて根気よく治療する事が大事だと思います。
ありがとうございました。
「慢性腰痛を治す」という事で2日間にわたってお伝え致しました。
2015/05/19(火) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 慢性腰痛を治す「薬と認知行動療法」[解][字]

慢性腰痛にはまず痛み止めが使われるが、改善しないことが多い。その場合は抗不安薬や抗うつ薬が処方されることがある。認知行動療法は考え方と行動を変える治療法だ。

詳細情報
番組内容
慢性腰痛にはまず痛み止めが使われるが、改善しないことが多い。その場合は抗不安薬や抗うつ薬が処方されることがある。抗うつ薬には、脳が痛みを抑える仕組みを活性化する効果がある。筋しかん薬やオピオイドが処方されることもある。認知行動療法は考え方と行動を変える治療法だ。「腰痛があるから何もできない」と考えず、「痛みがあっても買い物なら行ける」と前向きに考える。好きなことをするのも腰痛の軽減に効果がある。
出演者
【講師】福島県立医科大学助教…渡邉和之,【キャスター】桜井洋子

ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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