ドイツ北部の小さな町。
スーパーのショーケースにはさまざまなソーセージが山盛り。
世界屈指のサッカーのクラブチームで活躍する彼女。
その名前は…。
なでしこジャパンのフォワード大儀見優季選手27歳。
(実況)大儀見大儀見!1対1。
決めるかどうか?決めた〜!日本代表として歴代2位の52ゴール。
115試合に出場する不動のエースです。
(実況)シュート!決まった!日本決めた!大儀見が決めました!日本先制!間もなく始まるサッカー女子ワールドカップで2大会連続の世界一に挑みます。
しかし今なでしこジャパンは窮地に立たされています。
ライバルの国々が力をつけ大きな国際大会で優勝できなくなってきたのです。
攻撃の要大儀見選手には厳しいマーク。
エースとして更に決定力をつける事が求められています。
優勝目指して戦うのは当たり前だと思ってますしそこに対する責任感っていうのは自分の中では強く持っているつもりですし。
今年1月大儀見選手は世界最高峰のリーグ…ワールドカップ連覇へ己を磨くための決断でした。
そこはトップレベルの選手たちがしのぎを削る場所。
あえて厳しい世界に自分を追い込みました。
どんなに厳しくてもゴールを奪ってみせる。
目指すのは世界一頼れるエースです。
今以上に…日本を再び世界一の栄光へ。
己を磨くエースの苦闘を見つめました。
大儀見選手の取材を始めたのはドイツリーグの後半戦がスタートした2月の事でした。
ドイツ北部の町ウォルフスブルク。
自動車産業が盛んな人口12万人の町です。
市民の最大の娯楽がサッカーです。
キックオフ1時間前。
まだ誰もいないピッチに大儀見選手の姿がありました。
この日は移籍して初めての試合。
20分かけてじっくり体をほぐします。
大儀見選手のチームウォルフスブルク。
女子のトップリーグブンデスリーガを2連覇した強豪です。
大儀見選手はチーム初のアジア人選手。
ワールドカップチャンピオンのエースとして大きな期待を寄せられています。
試合開始。
最初のチャンス。
左サイドからのセンタリング。
惜しくも枠を外れます。
決定的なチャンスは後半やって来ました。
右サイドを突破した味方から大儀見選手へ。
(歓声)移籍して初めての試合でゴールをあげました。
ファンの心をつかんだ大儀見選手。
上々の滑り出しです。
大儀見選手はなでしこジャパンの不動のフォワード。
持ち味は相手を置き去りにする飛び出しの速さ。
(実況)澤の速いリスタート。
オフサイドありません!大儀見大儀見!1対1。
決めるかどうか?決めた〜!日本先制!確実にゴールを決める冷静な判断力。
特に優れているのはチャンスを嗅ぎ分ける力です。
一見ボールの落下点から最も遠い所に走り込んでいますが吸い寄せられるようにボールがやって来ました。
しかし今大儀見選手は日本代表に強い危機感を抱いています。
ヨーロッパの国々が急速に力をつけてきたのです。
3月に開かれた国際大会。
日本は徹底的に研究されていました。
中盤から強いプレッシャーを受け得意のパスサッカーが機能しません。
特に得点源の大儀見選手には厳しいマーク。
囲まれてボールを奪われると…。
そのまま失点。
抜ければチャンスの場面でも…。
この大会…チームも過去最悪の9位に終わりました。
まあ女子の世界のサッカーも本当に進化してきたのは間違いないですね。
彼女は点取ってなんぼの選手という事は間違いないのでゴールっていうものにね意欲的にトライしてもらうという事ですね。
どんなに厳しくてもゴールを決める決定力がなければワールドカップでは勝てない。
(取材者)こんにちは。
大儀見選手はドイツのクラブチームへの移籍を決断しました。
そこはまさに絶好の武者修行の場でした。
ブンデスリーガの覇者ウォルフスブルク。
世界ランキング1位のドイツ代表選手が多数在籍しています。
チームを率いるのはラルフ・ケラーマン監督。
昨シーズンFIFA最優秀監督に選ばれた名将です。
ケラーマン監督は去年からなでしこジャパンが得意とするパスサッカーを取り入れました。
そのキーマンとして大儀見選手を獲得したのです。
ユウキ!大儀見選手は世界トップレベルのこのチームに飛び込みなでしこジャパンのエースとしての決定力を磨こうとしているのです。
どうやったらゴールを奪えるかってところが一番なので高いレベルの環境の中で自分の持っている力というのをもっと磨いていきたい。
しかし大儀見選手はほかのチームからの徹底的なマークに苦しめられます。
大儀見選手は身長168センチ。
周りは自分より大きな選手ばかりです。
パワーとスピードのあるタックル。
ぴったり張り付かれ思うようにシュートを打たせてもらえません。
開幕戦のあとは3試合ノーゴールに封じ込められました。
厳しいマーク。
どうすればゴールを決められるのか。
この日大儀見選手はひたすらシュート練習を繰り返していました。
特にこだわったのがキーパーの頭を越えるミドルシュート。
ある場面を想定していました。
味方の縦パスを相手がクリア。
そのボールが大儀見選手へ。
またとないノーマークのチャンスでした。
しかしゴールまで距離があったためこの時はパスを選択しました。
こうしたこぼれ球も確実にゴールに結び付けられないかと考えたのです。
たとえ遠い距離でも数少ないチャンスは確実に決める。
ミドルシュートで攻撃の幅を広げようと考えたのです。
イメージするのは体を後ろに反らせ過ぎず脚をムチのようにしならせる事。
ボールを浮かせ過ぎないように。
強いインパクトで飛距離が出るように。
試合入る前にどれだけそこの場面が来た時に…頭で描くイメージに体が迷いなく反応するまで毎日繰り返しました。
後半戦5試合目。
大儀見選手はここまでまだ1得点。
磨いてきたミドルシュートを打つ機会を狙っていました。
前半ゴール前で再三ボールに絡みます。
しかしなかなか決めきれません。
チャンスは後半11分に訪れました。
こぼれ球がノーマークの大儀見選手へ。
練習を繰り返してきたあの距離でした。
体は反らさず脚はムチのように。
躊躇なく放った完璧なミドルシュート。
唯一のチャンスを見事に生かしました。
春だから…。
ドイツで磨き続ける大儀見選手。
22歳で日本を飛び出してからイギリスやドイツのクラブチームを渡り歩いてきました。
(取材者)食べないですか?食べないですよ。
ドイツ語も独学で習得。
アパートとグラウンドを行き来するだけのサッカー漬けの毎日。
4年前に結婚しましたが日本で暮らす夫は大儀見選手を応援してくれています。
今はドイツでプレーを続ける事が大事だと考えています。
新しいチームに来て新しい環境になるとやっぱりプレースタイルが違う選手というのはいっぱいいるから常に刺激ってのはあふれてますけどだからといってそこと比較して自分が劣ってるなって感じる事は別にないし。
自分の中で持ってるもの強みっていうのはほかの選手が持ってない事だったりもするので。
環境を変える度に自分の違った面が見られるというか。
だから自分自身も成長していけるなっていうのはすごい感じます。
大儀見選手がサッカーを始めたのは小学1年生の時。
サッカーが大好きな父の勧めでした。
みるみるうちに上達し早くも中学3年生の時強豪日テレ・ベレーザで公式戦に出場しました。
日本代表にデビューしたのは高校2年生の時。
オリンピック予選に史上最年少で先発出場しました。
期待の新星スーパー女子高生フォワードと騒がれました。
しかしオリンピック予選ではノーゴール。
期待どおりの結果を出す事はできませんでした。
もっとうまくなりたい。
大儀見選手はチームの練習が終わったあともシュート練習をするようになりました。
多い時には100球以上2時間に及ぶ事もありました。
(取材者)週に何回か…。
いや毎日。
ずっとやってましたね。
何かとにかくうまくなりたいっていう思いと何かを継続して自信をつけたいっていう多分思いがあったと思うし。
シンプルに考えた時にフォワードにとってやっぱり必要な事っていうのはゴールを決める事。
だったらシュート練はするしかないと思って毎日それをやり続けました。
練習の相手を務めたのは当時の日本代表ゴールキーパー小野寺志保選手。
天才少女といわれながら黙々と努力し続ける大儀見選手を支えてきました。
もう脚の筋肉も当時からすごい太くて短パンになってむき出しになってるともうそれだけ見るだけで「怖っ」ていうような感じの子でしたね。
それがもう自分磨きに入っていくんでやっぱり手がつけられなくなるんじゃないかっていうのをずっと思って…。
あいつならやるんじゃないかってそういうふうに期待してます。
(取材者)Jリーガーって男子の?男子のです。
後半戦が始まってから2か月。
大儀見選手はまだツーゴールしかあげる事ができず自分を見失いかけていました。
味方からのパスがうまくつながらずシュートまで持ち込めないのです。
ゴール前へダッシュ。
しかしパスは僅かに後ろへ。
後ろに回り込もうとすると…。
今度は前へ。
なんとか周りに合わせようとします。
ケラーマン監督は大儀見選手は自分のプレーができていないと感じていました。
チームに合わせながら自分らしいゴールを決めるにはどうすればいいのか。
それは4年前のワールドカップ以来ずっと抱えてきた悩みでした。
なでしこジャパンは攻守ともに全員で走り回るサッカーで勝ち続けてきました。
しかし大儀見選手はゴールにこだわって前線にとどまり続けました。
そして味方と息が合わなくなっていきました。
準々決勝では途中交代。
(実況)丸山!シュートができるのか丸山!来たシュートだ!日本先制点!自分のゴールを第一に考えた大儀見選手。
フォワードとして何もできませんでした。
悔しいとかそういうのじゃなくて…何て言うのかな…。
それをチームにフィットさせられなかった…申し訳なさというか。
そっちの方が大きかったですかね。
それ以来大儀見選手は自分をチームに合わせようと努めてきました。
しかし自分を抑えていてはストライカーとしての力は発揮できない。
その葛藤が連係の乱れにつながっていました。
練習が終わると大儀見選手をケラーマン監督が呼び止めました。
話は10分近くに及びました。
(取材者)どんな事話されてたんですか?う〜ん…。
自分を主張してこそチームのよさを引き出す事ができる。
大きなひと言でした。
大儀見選手にはずっと欠かさずに続けている事があります。
練習や試合で気付いた事を書き留めるサッカーノートです。
今手元にあるのは4冊くらい。
抱えてきた課題や疑問を書く事で整理します。
自分と向き合うための最も大切にしている時間です。
意識するポイントっていうのが明確になりますし一回こう書く事によってやっぱり意識するので本当に次の日の練習であったり試合であったりで意識を強くやっぱり持てるようになるので。
今の発想をノートに書いてそれを過去の発想にして捨ててくっていうイメージでノートは書いてるから…。
(取材者)見返さないんですか?見返さないですね。
ここに書いたものって全てもう過去のものですから。
過去の事を見返したところでってなりますし常に未来を見据えて物事を考えていきたいっていうのがあるので。
この日書き留めた言葉。
迷わず自分を貫く事ができるか今試されていると感じていました。
翌日。
大儀見選手に変化が見られました。
味方に合わせるのではなく自分からパスを要求していました。
(パスを要求する声)敵のいないスペースに走り込み大声を出して両手を下へ。
足元へのパスの要求です。
思いどおりゴール。
自分を主張する事で連係はスムーズに。
大儀見選手は手応えを感じていました。
まずは自分がもっと味方に要求していく事とその上で自分のプレーってのを出していきながら体全て使って表現しながら要求していってゴールを狙っていきたいなとは思ってます。
ストライカーに必要なもの。
そのヒントをつかんで臨む初めての試合です。
味方からいいパスを引き出してゴールを決める事ができるのか。
芝生の状態を確認するチームメートをよそに大儀見選手は一人タッチライン際を歩き始めました。
ゆっくりと歩きながら辺りを見回していました。
そういうために見てるところはあります。
どんな体勢でもゴールの枠内を狙えるように目印となるものを目に焼き付けていました。
(掛け声)ストライカーとしての真価が問われる戦いが始まりました。
味方がいきなりゴール。
1点を先制します。
自分もゴールを決めてチームを勢いに乗せたい。
パスを要求。
(ホイッスル)ファウルで倒されます。
更に要求。
パスは僅かに前。
シュートに持ち込めませんでした。
そして試合終了間際でした。
味方が相手ディフェンスの裏に抜けた瞬間。
突然反転。
迷わずダッシュ。
ゴールを見る事なく最短距離で走ります。
高いボールを要求。
イメージはヘディング。
パスは…。
シュートのイメージと味方のパスがピタリと合いました。
(ホイッスル)自ら呼び込んだチャンス。
そこにはもう迷いはありませんでした。
この試合で大儀見選手は大きく進化。
残り3試合で3得点をあげました。
やってきた事は間違いではない。
ドイツで手に入れた自信はワールドカップへとつながっていきます。
チームに必要とされるチームに頼られる存在にはなりたいと思いますしその中で力を発揮できる選手にもなりたいっていうふうには思ってますし今以上に成長した自分でいられればいいかなっていうふうに思います。
大儀見優季選手27歳。
あえて過酷な環境に身を投じ己を磨き続けてきました。
目指すは間もなく始まるワールドカップ。
世界一頼れるエースです。
2015/05/21(木) 01:30〜02:15
NHK総合1・神戸
アスリートの魂「世界一頼れるエースへ サッカー 大儀見優季」[字]
なでしこジャパンのエースストライカー、大儀見優季選手に密着。6月開催される女子サッカーW杯でチームを連覇に導くため、ドイツリーグで自らを磨く日々を見つめた。
詳細情報
番組内容
大儀見優季選手は日本が初優勝した前回のW杯では、わずか1得点。全員攻撃、全員守備のパスサッカーというチーム方針に適応できず、準決勝以降はスタメンから外される屈辱を味わった。大儀見選手はこれを機に生まれ変わることを決意。プレーの幅を広げるため海外のチームに移籍した。目指すのはどんな厳しいプレッシャーを受けても、ゴールもアシストも決められる絶対的な強さだ。自らのレベルアップへのあくなき執念を追う。
出演者
【語り】仲村トオル
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – スポーツ
スポーツ – サッカー
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