(マイケル)
これは極東の国日本を訪れた我々家族の100日間の冒険の物語。
我々の目的は寺院巡りでも秋葉原でのショッピングでもない。
我々の最重要課題それは…
日本を食べ尽くす事だ。
アスガーエミルリスンそして僕マイケル我々英国一家は東京滞在中都内に借りたウイークリーマンションで寝泊まりしている。
今日は退屈している息子たちに面白いものを見せてやろう
(アスガー)すごい!何これ!
(エミル)動いてる。
どうだ?御飯の上でダンスを踊ってるみたいだろ?パパ…。
もしかしてフォース使った!?さようこれがフォースの力だ。
そら踊れ踊れ!駄目だって!フォースは自分の欲望のために使うと暗黒面に落ちるんだぞ!フン…種明かしするとこれはカツオ節というものだ。
透き通るくらい薄くて軽いから温かい御飯の湯気でくねくね踊るように動く。
これの正体が何だか分かるか?ゴミ。
鉛筆の削りカスじゃないの?鉛筆の削りカスだったらこんな事できないだろ?ゴミ食べた。
食べ物なの?食べられないものを御飯にかけたりしないよ。
味は薄くスライスしたイベリコ豚の生ハムの風味に似てる。
ふ〜ん。
このカツオ節を煮出しそれをこしてやるとだしが出来るんだ。
だしって何?だしってのは日本料理の土台だ。
フランス料理で言えばフォンドボーみたいなものさ。
こないだうまい天ぷらを食べに行っただろう?そこで出てきた天ぷらのつゆだってこいつから煮出しただしがベースになってるんだぞ!何から出来てるか知りたいだろ?全然知りたくない。
え?「知りたい」って言ったら長いうんちくが始まるんでしょ?じゃあ手短に済ませよう。
このカツオ節は日本料理のカギを握るものだ。
この木くずのようなかけらの中に歴史とノウハウが詰まっている。
知的好奇心が刺激されるだろう?カツオ節は昆布と並んでうまみたっぷりのだしを作るための…。
だから興味ないってば!どうせ長ったらしいうんちくのあとは取材のためにあちこち引っ張り回すつもりでしょ?よく分かったな。
いつもそうだもん。
僕は留守番する事にするよ。
たまには家でのんびり自分のやりたい事をやるんだ。
ん?あれ?ん?ん?え〜とカツオ節工場はどっちかな?ちょっと!ここどこ!?留守番してるって言ったのに。
クンクンクンクン。
これ何の匂い?
(リスン)魚の匂いかしら?魚をいぶす匂いだよ。
目的地に近づいてきた証拠だ。
東京から車で2時間。
水産加工業で発展した港町である。
カツオの町としても有名で最もカツオの水揚げ量の多い漁港の一つでもある。
ちなみにカツオ節の原料カツオとはこの魚である
カツオ節って魚だったの?あの削りカスみたいなのが?ん?どういう事?それをこれから見に行くんだ。
(綱取)ようこそいらっしゃいました。
焼津の誇る水産加工団地にようこそ。
マイケル・ブースです。
よろしく。
広報担当の綱取です。
どうぞお入り下さい。
つかぬ事をお聞きしますが…。
何でしょう?これまでにこの場所を訪れた英国人は?さあ何とも言えませんが私の記憶には…。
聞いたか?どうやら僕がこの場所にたどりついたこの地球でただ一人の英国人だ。
つまり!日本料理の核心部分にここまで肉薄した英国人はこれまでにいなかったって事だ!選ばれし者の恍惚と不安を感じずにはいられない…。
すごいわマイケル!単に物好きってだけでしょ?さあ記念すべき第一歩を踏み入れるぞ。
これは一人の人間にとっては小さな一歩だが人類にとっては偉大な一歩…。
ひぃ〜!んん…。
ここはカツオの加工施設が集まった一つの町です。
新鮮な刺身から缶詰に至るまであらゆるものがここで作られます。
内臓を塩漬けにして発酵させた珍味を作っている会社もあれば学校給食用に骨からカルシウム食材を作っている会社もあります。
まるでカツオのシリコンバレーだな。
カツオ節もここで?もちろんです。
ここでは捨てるものがありません。
骨や内臓も加工されて飼料や肥料になります。
カツオの水揚げ量が減っていますからね。
カツオの数が減っている?はい。
魚が減っているうえに燃料代も上がっているせいで漁の費用が高くついてしまうんです。
そのため魚1匹から最大の利益を上げる必要があるんです。
(リスン)マイケル!ん?大変!どうした?アスガーとエミルが…もう限界。
つまんないよ。
せっかく説明してくれてるんだからそんな事言っちゃ駄目でしょ。
お子さんたちにカツオの話は退屈だったかもしれませんね〜。
そんな事はない!興味深い話だ!行儀が悪いぞ?一体どうした?こんな楽しいところないだろう。
パパは一日中だって居られる。
カツオのテーマパークだ!こんなとこよりねずみのテーマパークに行きたい。
ねずみのテーマパークは子供だましのゴンドラに乗るためだけに3時間も列に並ばされるじゃないか。
ここだったら並ぶ必要がない。
そう思ってるのはパパだけだよ!漁獲量の話に子供が食いつくと思う?なあ?エミ…。
う〜…。
うっ…う〜うっ…。
うっ…うっうっうっうっ…。
うわああぁぁ〜!どうやら落ち着いたみたいだな。
こんな事もあろうかと工場内にプレースポットを設置しておいたかいがありました。
まさか使われる機会が来るとは。
多分これで12分はもつはずよ。
あまり時間がないな。
あめを口に放り込んだら?それで15分。
十分です。
時間稼ぎをしている間に大急ぎであれをお持ちしましょう。
うわっ何それ!食べ物?2人ともお行儀悪いわよ。
食べ物というと語弊があるな。
日本料理に欠かせないあるものさ。
もしかしてカツオ節?そう!これがカツオ節の正体だ!うわ〜!あ…。
これがカツオ節?傷んだバナナみたいだ。
(リスン)ビーフジャーキーをもっと固くしたような感じね。
フッ見てくれは確かに悪い。
だけどこうして匂いを嗅げばその印象は変わる。
鼻腔をくすぐるのは時間をかけて熟成し濃縮された芳醇なカツオの香りだ。
おぉっ!硬い!ほとんど凶器じゃん。
カツオって硬いお魚?もちろん初めから硬いわけじゃありません。
世界一硬い魚の製造過程をお見せしましょう。
まずカツオを解凍して頭と内臓を取り除きそしてそれをゆでたあと一つ一つ骨を手作業で抜きます。
火を通した身を崩さずに背骨や小骨を抜くにはこの方法しかありません。
次はいぶしと熟成の工程。
この乾燥室でゆっくり煙でいぶす事を繰り返しカツオの身を乾燥させます。
古い記録ではカビ付けをしてから天日に干したと記されているようですが。
今でもその方法でカツオ節を作る加工所はあります。
乾のあと表面を削ったカツオ節を暑くて湿度の高いカビ室に入れ良質なカビを発生させます。
天日に当ててはカビを落としてカビ室に戻す工程。
これを8週間以上かけて繰り返す事で風味豊かなカツオ節が出来上がるのです。
大変な手間と時間がかかっているんですね。
ええ。
仕上節と呼ばれるこの形状のカツオ節が出来上がるまでには約6か月かかります。
これが最後の工程だ。
カツオ節はうまみを固形に封じ込めたカプセルのようなものだ。
こうしてだしをとる直前に少量削る事でいつでも新鮮な風味とアロマを小出しに取り出す事が可能になる。
ゴミだ。
そっか。
あの塊が薄く削れるんだ。
(綱取)私が子供の頃は夕飯の前に子供が親の手伝いでカツオ節を削ったものです。
それでみそ汁のだしをとるわけですがそれぞれのやり方がありそれぞれの家庭で味も違いました。
今ではほとんどの家庭が市販の顆粒タイプのだしを使います。
失敗もなく便利で使い勝手がいいですがカツオ節にかかわる者としてそれはさみしくもありますね。
ご協力に感謝します。
有意義な時間を過ごせました。
あ…。
収穫だった。
カツオ節のだし自体は数分で手軽にとれるものだけどカツオがカツオ節になるまでの段階で膨大な手間と時間がかけられているんだな〜。
日本料理はこの海の恵みと切っても切り離せないものなのね。
アスガーカツオ節ってすごいだろう?そんな事よりカツオ節を使った犯罪トリックを思いついたよ!は?硬いカツオ節を凶器に使った犯人がカツオ節を削って証拠隠滅を図るんだ。
あるはずの凶器がどこにもない。
どう?こんなミステリー。
アスガーやけにおとなしいと思ったらずっとそんな事考えてたのか?やめてそんな怖い事考えるの。
いやいや!我が子ながら大した想像力だ!でしょう?うん!
(笑い声)
アスガーエミルリスンそして僕マイケル。
取材を終えて4つの胃袋はスカスカだ。
さあて今夜は何を食べようか
(トシ)今日はカツオ節削ってます。
削ってます。
まだまだ削ります。
あっ失礼。
マイケルの友人トシです。
アスガーの「犯罪トリック」の話じゃないがカツオ節は本当に硬い。
うまみがたっぷりと詰まっている証拠だ。
今日はカツオ節の食べ方をいろいろ紹介しよう。
ここは沖縄料理の店。
なぜカツオ節で沖縄なのか。
実は日本で一番たくさんカツオ節を食べているのは沖縄県なんだ。
来た来た。
ゴーヤーのお浸し。
カツオ節がゴーヤーのうまさを引き出してくれる。
そしてカツオ節を使った最も簡単な料理が沖縄にある。
おわんにみそネギそしてカツオ節。
お湯を注いで出来上がり。
即席のみそ汁カチューユー。
カツオの湯だ。
古くから沖縄に伝わる家庭料理で風邪を引いた時や二日酔いの時に飲むんだ。
体も温まるし熱も下がるしとてもシンプルなんですけどまあ母の味ですね。
カツオ節はタンパク質が豊富で栄養価が高い。
沖縄の人たちはその事をよく知ってたんだな。
ところで試行錯誤した結果特殊なカツオ節の使い方にたどりついたラーメン屋がこの店だ。
いらっしゃいませ。
お待ちしておりました。
なんとサイホンと呼ばれるコーヒーを抽出するガラスの器具でカツオ節からだしをとるのだ。
まず鶏ガラや豚足魚介などからとったスープを下のフラスコに注ぎ込む。
そしてカツオ節を入れた容器を上にセット。
加熱するとフラスコ内の空気が膨張しスープが上の容器に上がっていくんだ。
カツオ節とスープが混ざり合うここでカツオのうまみと香りを最大限に引き出す。
そしてフラスコ内は真空だからカツオの風味は飛ばずに済む。
(店主)下にたまったスープ香りをずっとフラスコの中に閉じ込めておくんです。
そして丼に放った時にきれいに香りが気化していくというのがサイホンの効能でございます。
更にだしのムースをのせて完成。
(香りを嗅ぐ音)これだよこの香りだよ。
カツオ節はうまみだけじゃなくて風味も大事なんだな。
日本の基本的なだしのDNAというのはやっぱりカツオじゃないかなという事でラーメンのおいしさってやっぱり口から吸って鼻から抜けてくというところでおいしさが倍増するというところがポイントになってますんで。
アスガーこのうまさにトリックはないぜ。
2015/05/21(木) 00:40〜01:00
NHK総合1・神戸
アニメ 英国一家、日本を食べる「世界一硬い魚」[二][字]
イギリス人フード・ライターとその家族が、日本に滞在して各地の料理や食材を食べ尽くす!?「和食」をテーマに、一家の100日に渡る日本珍道中を描くコメディ・アニメ。
詳細情報
番組内容
炊き立ての白いご飯の上でくねくね踊るように動くかつお節を見て驚くアスガーとエミル。このかつお節こそ、日本料理の鍵となる“だし”をとるための重要な食材だと説くマイケルだったが、子どもたちはまるで興味なし。しかしマイケルは、そんなことはお構いなく家族を連れて静岡県・焼津へあっという間に瞬間移動!そこで初めてのかつお節の製造工程を見て驚くことに。
出演者
【声】竹本英史,満仲由紀子,広橋涼
原作・脚本
【原作】マイケル・ブース,【翻訳】寺西のぶ子
監督・演出
【監督】ラレコ
ジャンル :
アニメ/特撮 – 国内アニメ
情報/ワイドショー – グルメ・料理
趣味/教育 – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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英語
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